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フレイヴたちは島自治区へは密航をした。だが、大陸に戻る方法なんて知らない。アルフレッドからどのようにして大陸に戻るのかと訊ねられて、我に返ったように「忘れてた」と引きつった顔を見せる。
「あたしは本の方に意識を戻して、脱走すればいいけど……」
問題は体も島にいるフレイヴだ。船がなければ動くことはままならない。それに島の出入口は厳しい警備が置かれていること必至。どうするか、と心配そうな顔を見せていると――。
「あっ」
何かを閃いた様子のカムラ。声を漏らす彼女に二人は注目すると「これだ」そう、指を鳴らした。
「ねえ、二人とも。四日だけ時間をちょうだい。それまでに、最初に島へ辿り着いたあの砂利浜に来て」
「今度は何を企んでいるんだ?」
「人聞きが悪いよ、おっさん。……何、ちょっとね」
カムラが何を考えているのかわからないが、フレイヴにとっては嫌な予感しかしなかった。その作戦は上手くいくものだろうか、と。
「大丈夫なの?」
「あんまり気にしないで。そんで、二人はあたしの話に合わせておいてね!」
不安要素でしかない。それ以外何も思いつかない。やはり、そういうのは止めるべきだ、とフレイヴが「カムラ」と呼びかけるも――いつの間にか、カムラの姿は消えていた。
「あれっ!? カムラ!?」
「お嬢なら『行ってくるから』って消えたぞ」
しかも、盾役よろしく、とか縁起でもない言葉をアルフレッドだけに残して。というか、自分の意思でここに逃げてきたんだけどもな。誰も大陸の方に戻るなんて言っていないんだけどな。説得する相手がいなければ、口を開いても仕方がないとしてフレイヴとアルフレッドは元来た道を戻るしかなかった。
カムラがいないからなのかもしれない。アルフレッドは先ほどまで機嫌を悪そうにしていたが、少しばかり上機嫌。それだからか、こちらに「大変だな」と同情を見せてきた。
「いつもあのお嬢と一緒にいるのは」
「まあ、カムラは誰にでもけんかを売っているようなものですしね」
情報の町然り、英傑の町然りである。必ず、こちらが絡まれる前に自分が絡むのである。何がしたいのかはわからないが。そうであっても、カムラといても退屈はしないのは事実だった。最初は変わった少女だと思った。自分は元男だ、と言っていた。だが、アルフレッドが知らないことをフレイヴは知っていても、彼女のことをすべて知っているわけではなかった。
世界を改変したクラッシャーという人物を殺すために生きる存在。改めて、知れば知るほどわからない存在。カムラが行き着く先はどこなのだろうか。




