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調査員がいた遺跡へと戻るには二日もかかる。それを三人は当然知っている。天使物語に関する遺跡への片道がそれほどかかっていたことを覚えているからだ。そうと考えると、カムラは眉根を寄せる。表情からして戻りたくなさそうだ。
「また行くのぉ?」
詳しく調べることに賛成はしても、そちらに関しては反対したい様子。だが、再び調査員のもとへと訪れなければ、話が進まないことも知っているはず。それでも行く気はないらしく、「ていうか」とむくれる。
「あのクラッシャー野郎……ナズーの資料を渡すとき、一緒に渡せばよかったのにっ!」
今更になって、もう一度オルチェを責め出すカムラ。
「そのクラッシャーってやつはお前さんたちの味方になるのか?」
「本人は敵だって言っていましたね」
敵なのに、情報を与えるのか。これにもアルフレッドは疑問を抱く。二人の話を聞く限りだと一歩手前までの情報しか与えていない、そのクラッシャーというか、オルチェという人物。
――考えるなら、そいつって……この二人を試しているように見えるな。
試すと言っても、何を試すのかはわからない。フレイヴたちは何と対峙しているのか。二人から話を訊いたとしても、謎だらけではある。正直言って、アルフレッドも調査員がいた遺跡に戻るのは面倒だと思っているらしい。そこで一つの提案を彼らに持ちかけてみた。
「そいつって二人に天使物語を調べてこいって言っただけだよな?」
「はい」
「だったら、もういいんじゃないのか? 一応、天使物語らしき話を手に入れたのも事実だ。そのことを、クラッシャーってやつに報告して何の関連性があるのか訊いてみれば?」
自分たちが見つけた情報をオルチェに報告して、どういう意味があるのかを訊いてみる。この提案にフレイヴは少しだけ納得したような顔を見せるが、肝心のカムラは嫌そうな顔を見せた。
「なんだよ、その顔」
「別にいいけどぉ。絶対、あの野郎は教えてくれないと思う」
「でも、訊いてみないとわからないじゃないか」
「おっさんは知らないかもしれないけど、あいつはあたしの最大の敵! っの部下! クラッシャーは息をするかのように、邪魔者だと思っているあたしを何度も殺してきたんだもん! あいつがクラッシャーに忠誠を誓っているなら、こっちの依頼なんて聞く気になれないはずじゃん!」
むしろ、命を狙ってくる、と豪語する。
「だったら、ぼくがオルチェさんに訊けばいいじゃないか。あの人は、ぼくにだけは敵でも味方でもないって言っていたし」
「それでも不安。ねえ、おっさん。一緒に行ってくれる? フレイヴに何かがあったら、おっさんが盾になるっていう条件で」
「その条件で『はい、します』って言うとでも思ったか?」
「言っているじゃん」
その屁理屈にアルフレッドは「冗談じゃねぇ」と鼻白む。
「盾になるのは嫌だぞ」
それよりも、と一番の問題に二人はまだ気付いていないようだった。
「お前さんたち、どうやって大陸に渡るの?」




