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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第七章 天使物語と謎◆
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80ページ

 やっと見つけた。二日も歩き続けた甲斐があった。その嬉しさのあまりか、カムラは遺跡に向かって走り出した。まさかのダッシュに苦笑を浮かべるフレイヴとアルフレッド。


「見つけた、見つけたぁ!」


 もう遺跡を求めて歩かなくて済む、そんな思いの詰まった歓喜だった。


「見た目、あっちの遺跡と似ていますね」


「内容は違っても、同じ神話じゃないのか?」


 そう、見た目は二日前に見た建物に似ている。植物は外壁に這っており、地面に埋まっているようにも見えた。


「プトレア教のですよね。それだったら、納得はいきますね」


 走るカムラを追いかけるように、二人も遺跡へと近付いた。入口を見てみれば、地下へと誘うかのような階段が露わとなる。向こうの建物でもそうだったかのように、中へと入ってみれば、ひんやりとしていた。少しだけ肌寒いとは思う。


「これも水があるからか?」


 アルフレッドが床の端に視線を向ける。溝となっているところには水路として存在しているようだった。それどころか、内部には当たり前のように水があるのだ。


「ここで調べるって言っても、この中での寝泊まりはちとキツイところがあるよな」


 言いたいのは表面に生えている苔のことだろうか。だが、それで文句を言っては――。


「じゃあ、おっさんは外で寝て、ナズーの注意を引き受けてよ」


「粗方、お嬢の口の悪さには慣れてきたけど、腹が立つな」


 そう言うアルフレッドの右手は握り拳を作っているようだ。相当堪えている、というのがわかる。


「カムラ」


 口論にならず済んでも、フレイヴはカムラに一言だけ「そういうのはダメだろ」と注意する。これでろくな目に合わないんだから。軽く息を吐くと、遺跡の中を改めてじっくりと眺めた。こう言った建物の中にナズーはいない。気配すらもない。なんだったら、あのときに追いかけられても、遺跡の中へは入ってきていなかったようだ。何かしら、特別な力が侵入を阻んでいるのだろうか。もし、そうであるならば、神様がこの世にいると信じるだろう。しかしながら、彼に信仰心はないに等しい。それでも、信じてもいいものだろうか。


 天使物語とは一切関係のない話をしている二人を瞥見した。彼らには心の支えとなる信仰はあるのだろうか、と。気になったのか彼らに声をかけようとするのだが、一足先を歩いていたアルフレッドが「おう」と声をかけてくる。


「そこの奥の部屋、何かしらの石板があるぞ」


 何だろうか、と訊ねようとしたことを後回しにして、三人は石板へと近付いた。そこには――。


『愚かなる天使は悪魔に変わり果てた』


 そう書かれていた。

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