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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第七章 天使物語と謎◆
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79ページ

 南東の方角に天使物語に関する何かがある。調査員の言葉通りに三人は歩き続けて二日が経とうとしていた。二日もである。ここが本当は島ではなく、大陸ではないのだろうかと思うほど。それはそこまでこの島の規模が大きいということを知らしめているようだったのだ。歩いても、歩いても初日以来海は見当たらない。どこまで行けば、島の端っこに辿り着けるだろうか。


 フレイヴたちは拠点を築くことはなかった。なぜならば、島の中でもナズーは存在するから。まず、ナズーを見掛けたら、音を立てずに遠くへ逃げる。それらを繰り返して――三人はあまり寝ていない。だが、寝不足だからと言って眠気はない。あったとしても、ナズーの存在に脅かされて、ぐっすり眠るということができないからだ。緊張感も不安も一切なしで寝られるというならば、それはそれで怖いものなしである。だとしても、フレイヴもアルフレッドもそこまで肝は据わっていない。残念ながら真夜中で小動物たちの物音でさえも肩を強張らせているのだ。更に、カムラの場合は意識だけをこちらの方に飛ばしているのだ。寝てしまえば、あちらの方に意識が行ってしまうだろう。そう思ってなのか、いつも夜の見張り番は彼女だった。


 そんな極限的な状況の中、カムラは歩いても緑と茶色の景色を目に映しながら嘆いた。


「あのおっさん、嘘つき」


 実体はなくとも、疲労はあるのかもしれない。いかにも、という不満を垂れるカムラを横目でフレイヴは見る。彼に至っても、同様の疲労はある。それでも、調査員を責めようとは思わなかった。


「まあ、まあ。あの人は南東に向かえばって言っていたから。すぐ近くにあるって言っていないでしょ?」


「だとしても、だよ! 二人とも二日でどんだけ歩いているか、知ってる?」


「知らん」


「あたしも知らねぇよ! ばーか!」


 アルフレッドがせっかく反応をしてくれたというのに、なんたる仕打ち。これにフレイヴは彼女を宥める。彼も、疲労があるせいか、けんかへと発展する発言はしないようだ。面倒、その一言で足りるのだろう。みんな疲れているのだ。イライラはマックス。何かのきっかけで、大きなけんかが起こりませんように。ここに来て、ため息ばかりしかしていないフレイヴが前の方を見たときだった。


「おっ」


 三人の目の前に植物が絡まり、地面に埋まった石煉瓦の建物らしきを見つけた。二日前に調査員と会った遺跡と似ているようである。ここに天使物語に関する何があるのだろうか。

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