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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第一章 本と目覚め◆
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7ページ

 正直な話、フレイヴの両親はカムラが『黒の王国』という聞き慣れない国から来たこと、本の姿になれること、以前は男の姿であったこと。どれらもすべてを作り話だと信じて疑わなかった。どんなに自分たちが「本当なのだ」と言っても、聞く耳を持とうとしなかった。それだから、やむを得ないのか――カムラは「もういいや」とあっさり引き下がってしまう。


「言っちゃ悪いけどさ、フレイヴの親って、いい人の割には雑だよな」


 まだ少女の姿になって時間が浅いせいか、素だと男口調になっていた。いや、カムラのその口調をフレイヴは責めるつもりはなかった。事実であるからだ。


「もし、お、あたしが前の姿だったら、話は変わっていたのかな」


「えっと、どうだろう? 一応話は聞くタイプだとは思うけど」


 だが、その話自体を信じることはないことに関しては否定できない。それでも、こうして自分を屋根のある建物に入れてくれるだけいい方か、と思い込む他はないのである。


 現在のこの家は橙色の電球で明かりが照らされていた。二人はフレイヴの部屋で互いのことを話しているのである。ここまでわかったことは、自身のことを話すカムラはこの世界においての話が噛み合っていないこと。しかし、世界の地図を見せてみれば、形は見たことがあるし、知っているらしい。もしかしたならばの話であるが、彼女はこの世界の過去か未来から来たかもしれない存在だということだった。そうと考えるならば、『未来』が正しいかもしれない。知っている限り、家の本に書かれている限り “過去に『黒の王国』という国は存在しない” のだから。それはどんな資料を見ても言えることである。それはカムラが知っている世界の過去と情勢のこととフレイヴが知る世界の過去と情勢のことすべてが一致しないからだ。それは時代が違うからとかではなく、彼女が記憶している過去の情勢はこの世界のどの時代にも存在しないのだ。そして、逆も然り。


 そう考えると、過去や未来ではなくこの世界とは少し違う世界から来たという可能性も捨てきれない。だとしても、こればかりは確かめようもない。結局は推測でしか考えられないからだ。証拠や立証ができないからどうすることもできない。それにあまり考えていると――どうもカムラは考えることが嫌いらしい。「どうでもいいや」の一言でこの話題を終わらせにかかってきた。


「俺が、いや、あたしがここにいるのは、何かしらあるってことだと思っておけば」


「それでいいの?」


「いいよ。元よりあたしがやらなきゃならないことは『クラッシャー』を倒すことだから」


 そう、カムラにはこの世界に存在する意義と共に汲み取れる使命があった。それがクラッシャーを倒すこと。だが、そのクラッシャーとやらは誰を差すのだろうか。

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