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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第一章 本と目覚め◆
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6ページ

 世界中にはびこる真っ黒なバケモノ『ナズー』。ナズーとは理性を持たず、目の前にいた人からその場にある建物すらも破壊する存在である。世界中の人々はそれに恐れて、各国の軍隊や民衆が結成した私軍団――『戦友軍』が日々ナズーの排除に努めているのだ。そんな真っ黒な姿のナズーとカムラを比べようとするなんて。村長の言いたいことはわかるのだが、フレイヴは納得がいかなかった。


「それは流石に言い過ぎでは?」


「言い過ぎ? 言い過ぎなものか。お前は村の掟を破りよってからに」


 そう指摘されてしまうと、閉口せざるを得なかった。これ以上の反論ができそうにない。顔を俯かせていると、これまできゅっと口を閉じていたカムラが何かを言おうとした。そのときだった。


「フレイヴ? どうしたんだ?」


 フレイヴはこの声が救いだと思った。なぜならば、その声の持ち主は自分の父親であるのだから。助かった。別に親にあれやこれと怒られるのは一向に構わない。それだからこそ、この場を早く退散したかった。その軽い声に村長も「お前か」と重々しい口調で二人を交互に見た。ややあって、「フレイヴが村の決まりを破った」と事実を告げた。


「あれだけ口を酸っぱくして言っておいたのに。そのせいで、人ならざる者をこの村に引き入れた。さて、罰を与えようか」


「罰だって? フレイヴは反省をしているんでしょ? それならば、うちでもきっちりと言っておきますよ」


 どうやら、フレイヴの父親は村長が執り行おうとしている処罰を止めさせようと、口を挟んできた。その罰とやらは三日三晩も彼の家にある離れの納屋に閉じ込めておくものだ。このことを不憫に思っているのだろう。そうはさせまい、と自分たちを引きずるようにしてその場を後にするのだった。後ろの方からは「待ちなさい」という声が聞こえてくるだけである。あの村長の言い分はわからなくもなかった。それはカムラを見つけたあの場所へと行くことを村の掟で固く禁じられていたから。ルールは守らなければならない。彼は自分たちのためであると言っているのかもしれないのだから。なんて、ぼんやりと反省の色を見せていると、自分の父親は「それで」と彼女の方を物珍しそうに見た。


「その子はフレイヴのガールフレンドか?」


 こちらを見てどこかにやにやする父親。母親が母親ならば、父親も父親である。この面倒な両親。どうして彼らはそのような目で見てくるのだろうか。説明をするのが面倒だと思うフレイヴは、ため息交じりをしながらカムラの事情を話すのであった。それで信じてもらえるかは別になるが。ちらり、と彼女を見れば、どこか安堵したような表情を見せているようである。きっと、彼女自身も言い争うのは嫌いなのだろう。「そう信じたかった」と、後になって愚痴をこぼすのはこれまた別の話であるが。

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