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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第五章 ナズーとその黒幕◆
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56ページ

 何が初めましてなのだろうか、とフレイヴは思っていた。戦友軍の本部の敷地内にある今にも崩れそうな小屋へとやって来てみれば、悲しみの村はずれの青色の小屋の中にいた謎の男がいたからだ。


忘れたとは言わせない。知らないとも言わせない。わからないわけではあるまい? あの日、自分たちにとって理解不能な発言をしたのだから。あの後、ナズーが現れて戦ったのだから。ぎゅっと拳を握りしめるフレイヴにグスカは気付いていないのか「それじゃあな」とここから出ようとする。自分の役目を果たしたからなのだろう。だとしても、今の彼にとってはどうでもよかった。グスカがここから立ち去ろうが、去るまいが――。


 ドアの閉まる音が聞こえる中、男は「えっと?」とデスクの上にある資料を見る。


「ナズーに関する情報だって? 情報と言っても、色々あるぞ。どういうのが欲しいんだ?」


 そもそものナズーのことについてがいいか? そう独り言を言いつつも未だに固まっている二人に一枚の情報資料を差し出してきた。


「ほら、これで満足したら帰れ」


 こちらとら、仕事は山ほどあるんだ。そう嘆くようにして、再びデスクの方に戻ろうとする男。これにフレイヴは「あの」とようやく口を開いた。


「初めましてではないですよね。絶対に」


 後ろ姿を見せながら、目だけをこちらに向ける男は立ち止まる。その目は何を語るのか。何を言うのかと期待してみれば「はあ?」と声を上げられた。


「何を言っているんだ?」


 それは本心で言っているのだろうか。生憎、フレイヴは嘘を見抜けるほど器用な人間ではない。だから、どうしようもなかった。代わりにカムラが何か言ってくれるだろうか。そう思って、まだ黙ったままの彼女の方を見た。


 そんなカムラは憎悪ある目付きで男を見ているではないか。恨めしいのだろうか。なんて、思っていると、この緊迫とした状況の部屋に武骨な戦友軍の一員が入室してきた。これに男は「仕事があるから」と煩わしそうに、二人を退却させようとする。別にここで暴れてもいいと思っているのか、カムラは行動を起こそうとしていた。だが、ここはナズーを倒す猛者たちがいる場所だ。いくら不思議な武器を手にする自分たちであろうとも、彼らには敵うまい。人と戦ったことなんてないのだから。そのため、フレイヴは「諦めよう」と耳打ちする。


「居場所はわかったんだ。また訊き出そう?」


「…………」


 どうやら、本当に賢明なのはフレイヴだったようだ。彼の方がきちんと自身の力量を見極めている。制されて、カムラは「わかった」と諦めざるを得なかった。いや、問題ない。フレイヴの言う通り、チャンスはある。そのときこそ――。


 二人がまだ諦めていないと言わんばかりの目付きで部屋を退室しようとするのだが――「おう」と男が呼び止めてきた。


「やっぱり、先に広場で待っとけ」


 この展開に、二人は顔を見合わせるしかなかった。

「ナズー」について


 人々の生活を脅かす害獣こと、ナズーは680年ほど前に世界覇権奪取戦争時において現れた謎の生物である。見た目は成人男性の二倍から三倍はある大きさで、色は真っ黒。理性を持っておらず、誰彼構わず襲いかかり、周りを破壊していく。戦時中に現れたこの生物、暴れ回って建物を破壊したりしているが、その実態は必ず我々人間見かければ人間を狙うことである。

 ナズーは襲う人間の体のどこかを食い千切るくせがある。完全に食べているのではないようだ。その後、体から黒い瘴気を出して傷ついた身体に当てられてしまえば、普通の人間だった者は必ずナズーへと姿を変えてしまう。これまでにどれほどの者たちが犠牲になったか。どれほどの者たちを犠牲として戦友軍は討伐してきたことか。

 これまでに確認されたナズーは全部で約 816629 体。内、約 539781体は戦友軍によって討伐された。残りの 276848 体の内、246591 体は戦友軍や両国の研究施設へと運び込まれた。討伐や捕獲されていないナズーに関しては、こちらが捕らえられなかった、もしくは倒せなかった個体である。

 小さな個体は日常的に気をつけ、早めに駆逐しておけば、何も問題はない。だが、大きい個体ほど強いため、大至急討伐準備をした上で動かなければならないだろう。


 ※研究対象の個体に関しては別紙参照。



本文章改訂作成日:N664.冷涼の月 第11週目と1日


変更日:N992.温暖の月 第6週目と3日

認証日:N992.温暖の月 第6週目と5日 

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