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「なんか、飯食ってたら仲間たちが俺を探しているって聞いてさ」
どうもカムラの発言「娘がクソガキ」辺りが聞こえたのだろうか。あまりいい顔をしない様子でこちらを見ていた。そして、当然のように彼女は気にすることなく「そう」と答える。
「あたしたち、探してた。なんでも、失礼極まりない娘さんからお手紙があるそうで」
失礼極まりないのはどっちの方なんだ、と言いたげにグスカは「ほう」とあごをなでた。
「そうか、そいつはありがとうよ。失礼極まりないお嬢さん」
「あ?」
仕返しされるのはごくごく当たり前だろうな、とフレイヴは「どうぞ」と反論もなしにクルレラからの手紙をグスカに手渡した。そんな彼の態度にカムラは「ちょっと」と小さな膨れっ面を見せる。
「なんで何も言わないの? あたしがこうして言われているんだけど? フレイヴも反論して!」
「何も思いつかないから言わないんだよ」
フレイヴ自身も何を言ってんだ、こいつ。と言うようにカムラを見る。手紙を見ていたグスカは「クルレラの言う通りだな」と鼻で笑ってきた。
「あんた、性格が悪いな」
「はあ? 仕事していないやつに言われたくないんだけど」
「ちょっ! グスカさんは働いているのに!? 今日、非番だって受付のお姉さんが言っていたじゃないか!」
というか、好戦的になるんじゃない。不満爆発状態のカムラを落ち着かせて、二人はグスカに頭を下げた。これは、彼に対する失礼な言葉に詫びを入れるものである。もちろん、彼女は不服がある。だとしても、あまり相手にしない方が賢明だと判断したのか、グスカは「手紙ありがとう」とお礼を言う。
「なんかあっちの方の町に棲みついたナズーを退治……は? た、退治した?」
よくよく手紙を見てみれば、クルレラが書いた手紙にはフレイヴたちがナズーを倒したということが記載されていた。この衝撃的事実に「本当かよ」と半信半疑ながらも二人を見た。武器の所持すらも見当たらない彼らが――だ。にわかに信じがたい。だが、娘の言うことが嘘とは思えない。これは信じるしかないのだろうか。そう思っていると、カムラが「半分はそう」と答える。
「軍の人たちに手伝ってもらった」
「あ、ああ。そういうことか」
グスカは手紙の便箋を折りたたんで「本当だったら」とあごでどこかを差した。
「来週あたりに俺らが行って、退治する予定だった。けど、感謝するぜ。よかったら、何か奢るよ」
その言葉に乗せられるようにして、カムラが「高級料理店」と言い出す。当然、それはフレイヴとグスカに却下されるのだった。




