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山ほどの大きさを誇るナズー討伐戦。作戦は一切なし、討伐部隊は二人のみ。内、一人はある種での戦線離脱になる。フレイヴはカムラの剣を強く握りしめて、ナズーを睨みつけていた。剣全体からは淡くて美しい光が帯びているではないか。この危機的状況においても、お構いなしに光り続ける。それはそこにいるナズーに見せびらかすように。
ほら、綺麗でしょ? 宝石みたいで。
超巨大なナズーの目には光を帯びた剣が映る。それに見惚れているのか――否、煩わしいのだ。我が目にそれが映るなんて。見たくもない。フレイヴが感じ取ったものは「死ね」である。そこにいる彼らを潰さんとして、大きな手の平が上空を覆う。この一撃を避けられるだろうか、とカムラは思った。見ればわかる手の平サイズ。それがどれほどなのか。人間サイズが真ん中にいたとしても、走って避けるなんて。たとえ、その一撃をかろうじてかわしたとしても、追撃を回避することは不可能。普通の人間の体力を考えれば、の話だが。元より、フレイヴは普通の人間だ。こちらが見る限りは。どこにでもいる、この世界では当然の悲しみを背負ったただの少年。ナズーと戦うときだって、苦戦を強いられている。そんな一般人が、独りで倒せると思ったら――。
フレイヴは動かない。それは恐怖で怯えているから、というわけでもない。いいや、怖けついているのは――超巨大なナズーの方。こんなちっぽけな人間を目の前にして、叩き潰そうと考えていた手の平の動きを止めているのだ。彼は見る。こちらに目を向けている、ぎょろりとした真っ赤な目玉を。その濃い青色の目を持って。
――お前の感情なんて知らない。
どうだっていいのだ。目の前の者が抱いている感情なんて。気にする必要はないのだ。そこにいる誰かの思いなんて。それでも、動こうとしたものは一時停止するのみ。すぐに動き出す。地面に向かって、巨大な手の平は落ちていく。未だフレイヴは動かず――そのまま。
町中では巨大な地震が起きたなんて言葉が行き交う。それもそうだ。突然揺れ出す大地に、半壊・全壊する町の建物。人々はパニックになり、犯罪も増える。天災が起こるのは基本的にろくでもないことばかりしかない。そうだ。ナズーという存在だって、災害とも呼べるものだろう。こいつらがいるから、こいつらがいなかったたら――。
通りすがりの町の町はずれにある神殿付近ではまさしく、天災直後と呼べる状況があった。超巨大なナズーは自身の手の平を地面に押しつけている。それはまるで、小さな虫を潰したような感じで――。
――それでも、ぼくはまだ諦めるものか。




