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「アルバイト? ぼくたちが?」
今、一人の女の子から聞き捨てならないことを聞いてしまった。フレイヴはカムラを半ば羽交い絞めしている状態で聞き直す。それに女の子は頷いた。
「そう、アルバイト。報酬は一宿一飯で」
「えっ、いいの?」
願ってもいないことだった。目の前にいる女の子が提供するアルバイトをするだけで、ご飯がついて、なおかつ、一泊できるのだ。これはできることならば、見逃したくはないが――。
「それって、何のアルバイト?」
問題はそれだ。唐突に見ず知らずの人間に対して声をかけてくるとは。これは何かしら裏があるのではないだろうか。不安そうに訊ねると、女の子は「捜しもの」と答えた。
「私のペットが戻ってこないの。名前はリーちゃん。お願い、お兄ちゃんたち。私のペットを捜してきて」
どうやらペット捜索の依頼らしい。その話を聞いたカムラは「えぇ」とどこか不満があるらしい。
「ペットでしょ? どうせそこら辺をウロついているだけだって。その内帰ってくるし」
「だって、もう一週間以上も帰ってきていないもん。ねえ、いいでしょう? どうせ、お金に困っているんでしょ?」
なぜにそれを知っているのだろうか。そう思っていた矢先、女の子は「だってお兄ちゃんたち珍しいもん」と二人を指差した。
「服、結構泥だらけでボロボロだもん。お金があんまりない旅人さん? 私のペットを捜してきてくれたなら、ご飯と寝床を提供してあげるよ」
意外にも洞察力が鋭い女の子の言葉に、二人はたじろぐしかなかった。なぜならば、事実であるから。彼らの格好はフレイヴの村から出たときと変わらない服装である。二人の返事がないのか、女の子は「それじゃあ」ともう一押し。
「服の洗濯もしてあげる」
「うーん、わかったよ。きみのペットをぼくたちが捜してきてあげるよ」
断るに断れなかった。そんなフレイヴは依頼を承諾することに。依頼を請け負ってもらった女の子は嬉しそうに「ありがとう、お兄ちゃんたち」とにこにこ笑顔。
「私の名前はクルレラね。あと、ペットがいなくなった場所は町はずれの神殿だよ」
「うん、ぼくはフレイヴ。こっちはカムラね。そこできみのペットがいなくなっちゃったんだな?」
依頼を受けたフレイヴの一方で、カムラは嫌そうな表情をしていた。女の子――クルレラの依頼を受けたくないのだろう。それもそうだ。初対面がああだったから。無視すればいいのに。なんて言いたげな顔がにじみ出てき始めたときだった。そんな彼女をよそにクルレラは「あとね」と付け足しをする。
「その神殿にはめちゃくちゃ大きなナズーがいるから、ついでに倒せたら倒しておいてね」
――ついでの依頼の方が大き過ぎない!?




