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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第三章 願いと意思◆
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41ページ

 ナズーを討伐した戦利品である目玉を情報屋のもとへと持ち帰ったフレイヴとカムラ。その証拠となる品を見て隻眼の情報屋は開いた口が塞がらない状態で目玉と二人を交互に見た。そして、ようやく口にした言葉は「やりやがったの、か?」だ。これまで、淡々とした表情しか知らなかったフレイヴは初めて驚きの顔を見た。ここでずっとフリーズされても困るとでも思ったのか、彼女が「言われた通りにしてきたけど?」と口を開く。


「おっさんは西にある遺跡でナズーを倒してこいって言ったね? それをあたしたちはきっちりとこなした。こうして証拠もお披露目。約束は守ってもらうよ」


「…………」


 どうも情報屋は言葉が見つからないらしい。フレイヴの方を見て、困惑を見せていた。その視線に彼も「約束でしたよね」と堂々とした態度を見せる。


「ぼくたちは退治しました。約束通り、ナズーに関する情報をください」


「あ、ああ」


 そう頷くと、情報屋はナズーの目玉が入った瓶をカウンターの下へと仕舞い込んだ。それを終えると、二人の方を見向いて「戦友軍は知っているだろ?」と訊いてきた。


「なんか、やたらとナズーの情報を掻き集めている戦友軍がいるんだと。そいつなら、もっと詳しいことを知っているかもしれない。悪いが、店で取り扱っているナズーに関する情報はこれぐらいだ。あとはやれ、どこの町が立ち入り禁止になっただ、どこかの山にナズーが現れただの、と出没場所ぐらいだよ」


「ナズーの情報ですか?」


 この情報屋で取り扱っているナズーに関する情報は出現場所だけだという。やはり、そうそう簡単にナズーという存在の秘密を知ることができないのか。いや、まだ可能性はなくなっていない。国の調査員に教えてもらった情報よりかは遥かに難易度が低いから。戦友軍ならば、新王国軍とは違うから避けなくても問題はないだろう。


「その人、どこにいるかわかりますか?」


「さあ、ねえ。戦友軍の人もずっと同じ町に留まるわけじゃないだろうし。俺自身も店の客が話しているのを聞いただけだ。名前すらも知らん」


「人が必死こいてナズー討伐してきたってのに、薄い情報だこと」


 情報屋の曖昧な報酬にカムラは唇を尖らせた。これに彼は「うるさいな」と眉根をひそめる。


「そんな態度でいいのか? 息子もお嬢さんもお尋ね者みたいなモンなんだろ? だから、わざと軍基地で教えてもらえとは言わなかったんだ。感謝しやがれ」


 どうやら新王国軍がナズーの秘密を知っているというのは本当のようだ。だが、その情報を得るのは誰もが思うに難しいだろう。それは情報屋でも思っていること。だから言わなかった。彼なりの優しさはあるようだ。


「ま、そいつを探すってなら、闇雲に探すよりか戦友軍の総本山『英傑の町』に行ってみれば?」


「英傑の町?」


 フレイヴが首を捻っていると、情報屋はカウンターの下から国内地図を取り出した。それを広げて情報の町を指差すと、そこから北の方にある程度ずらして一つの町を差した。ここが英傑の町らしい。長い道のりではあるにしろ、彼らの行き先は決まった。屈強な戦士たちの集まる町だ。

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