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断言できないが、様々な憶測が立てられるこの世界の仕組み。フレイヴは怪訝そうな面持ちで情報屋から聞いた遺跡に来ていた。その傍らにはどこか面倒そうな表情をしたカムラがいる。遺跡、であるから半壊状態の建物が二人を待ち構えていた。入口と思しきものはあっても、扉はない。ここにナズーはいるという情報を得ているため、彼女は剣の姿になった。悲しみの村で発動したあの淡い光は今回も帯びている。
「なんか、ナズーがいると知っていると、陰気な場所だね」
カムラは剣の姿で率直な感想を述べる。これにフレイヴはそうだね、と肯定した。彼もそう思っているからだ。
「先を進むのはいいけれども、足元に気をつけなよ」
「うん、わかっている。ありがとう」
その言う通りに、慎重になりながら先を進んだ。いるという情報のみでこの遺跡に来ているため、気配があるようでないようだった。こう言った先々の情報は持つべきか、と言われると、持つべきだろうし、持たない方がよいのかもしれない。だとしても、フレイヴの場合は事前情報があった方がよいと思っている。
半壊した建物の奥からごうごうと音が鳴っている。これはただ単に壊れた場所から入ってくる風の音なのか。それとも、奥で待ち構えているナズーのうなり声か。これは決まっている。後者の方だった。
足を進めて出てきた場所は広間のような場所。床や壁に敷き詰められた石のタイルはボロボロだ。劣化が激しいのか踏みつけただけでピキピキと音を立てて壊れようとしている。その踏みつけた音に反応するかのようにして、広間の中を徘徊していたナズーは勢いよくこちらへと振り向いた。目をギラギラとさせて。口からうなり声を漏らして。二人に向ける感情はまるで負の感情のよう。敵意があることはわかる。ナズーだから目の前の生き物はすべて殺すこともわかる。そこまでは完全に理解できていた。なのにだ。どうして、ナズーがこちらに向ける感情がわかるのか。そう思ってしまうのか。なんてフレイヴが戸惑いを見せていたときだった。
「避けろっ!」
カムラの誘導があったおかげで、フレイヴは初撃を避けることができた。間一髪。すれすれの回避である。危なかった。それと同時に思っていた。なぜにナズーが思っている感情を理解できているのか、と。この疑問が拭えなくて、戦いに集中できそうになかった。それでも、戦わなくてはどうしようもない。ここでくたばるわけにはいかない。自分の目的、彼女の目的があるのだ。それを達成できずして死にたくなかった。いや、ここで死ぬという考えは毛頭ない。謎はここに置いたままでも構わない。また拾えばよいから。あとで考えればいいから。ここでの優先順位は――。
しっかりと、壊れやすそうな床に足を踏みつけた。まずはナズーを倒せ。こちらがやられる前に!




