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様々な情報を取り扱うことの多い町、『情報の町』。ここは表社会と裏社会の情報すらも行き交っている。それだからこそ、犯罪が絶えないのだ。まだ窃盗や恐喝は可愛い方だ。ときには取引されたくない情報を売られてしまった者が、怨恨で情報を流した誰かを殺害したりしていたりする。そういうことがこの町で起きている。だからこそ、フレイヴはあまり来たいとは思わない町でもある。
見てみろ、こちらを何かに狙いをつけていそうな無精ひげの中年男性を。見てみろ、別に周りはなんともないのに必死になってナイフを手にしている焦った様子の人物を。平気で横行する暴力。助けてもらえないのに助けを呼ぶ声。嫌がる女性を裏路地へと引き込もうとする者たち。いかにも裏社会で活躍していますよと思しき男が――カムラとメンチを切っていた。
「か、カムラ!?」
下手なことは止めろ。いや、止めてください。ここでいざこざを起こしたくないのだから。依然として睨み合う両者の間にフレイヴは割り込んで「すみませんでしたっ!」と早々に退却をしようとする。ここで何事もなく、終わればいいのに。それはただの望み薄い願いである。この場から立ち去ろう――いや、立ち去ることをカムラは許さなかった。
「おうっ、待てフレイヴ。どうも、このおっさんがガンくれてよぉ」
やるか、こら。と今にも喧騒が起きそうな一触即発状況。これにフレイヴは「何を言っているんだよ」と必死に止めさせようとする。
「ぼくらはここで問題を起こしに来たんじゃないだろ? 頼むから、問題は起こさないで」
「問題は起こさないよ。だけれども、問題は起きたら……」
「起こさないで! 今は起きていないでしょ! ほら、このおじさんに謝って! おじさん、ごめんなさいっ!」
フレイヴは睨み合っていた、いかつい男に頭を下げた。それがカムラにとって面白いものではないらしい。「絶対頭下げないもんね」と意固地になる。ああ、もう面倒くせぇな。
「なんだと、このクソ女」
「ああ? 自分が偉いと思ってんじゃねーぞ、カスが」
「カムラぁ!」
「はあ? 先にじろじろと睨んできたのはそっちじゃないですかぁ? こっちはただのお返しをしただけなのに」
それはただの余計なことをしているに過ぎないのに。そして、これ以上この場に留まっていると、非常に厄介なことが起こるやもしれない。それを恐れたフレイヴは「ぼくの友達が失礼しました!」と綺麗な九十度の角度を作ってその場を退散するのだった。これだからこそ、この町は嫌い。彼はそう語るのである。というよりも、カムラが問題事を起こそうとしているから余計に嫌いになりそう。ああ、ストレスが溜まる。だとしても、その思いを彼女は素直に受け入れてくれるとは信じられないのだが。




