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フレイヴとカムラに妙な言葉を残した赤い髪をした謎の男の姿は、村周辺にはいなかった。いつの間にかどこかへと行ってしまったのだろう。男は言っていた。自分は味方でもなければ、敵でもない。どっちつかずの存在だと。だが、これに彼女は「いいや、絶対に違うぞ」と少し男口調になる。
「あいつは絶対俺らの、あたしらの敵だ。ていうか、それで確定でいいだろ」
「そういう風にして勝手に決めていいの?」
フレイヴは愁眉を見せながらも、もう一度あの男に会ってみたいと思っていた。彼の発言には理解不明なところが多々あるからだ。訊きたいのだ。どっちつかずの存在とやらを。こちらも相手も殺せないという意図を。あの言葉がただの頭がおかしい人であったという安心を。
「当ったり前! じゃなきゃ、ああしてそこから出てこないはず!」
「あの人って、敵って言うけれども」
「もちろん。あいつは探し回っていたクラッシャーに決まっている」
カムラはそう断言する。あの男はクラッシャーだ、という決めつけにフレイヴは感嘆を漏らした。あの、のらりくらりとした人物が世界の歴史や事実を捻じ曲げた張本人か。そうには――見えるのか? 意味深なことを言っているから? どうもフレイヴにとって、あの男は少しだけ気が狂った人にしか見えないらしい。いや、気がおかしいからこそ、彼女が追う者として存在するのかもしれない。結局は『かもしれない』。カムラとは対極的に確信が持てない。
「カムラがクラッシャーって言うなら、あとを追わないと。確か、あっちの方に逃げたんだっけ?」
「よし、行くか。あっちって何がある?」
ここで愚痴る必要性があるならば、男が逃げた方角へと行きたいらしい。そこまでしてクラッシャーを倒したいらしい。フレイヴは彼が向かった方を見た。あちらの方にあるのは――ああ、ある。ただの山道や森ばかりではない。あちらにあるのは――。
正直言って、あまり行こうとは思わない。だとしても、何かしらの『情報』を得るためならば、そこへ向かわねばならないだろう。一度だけ父親に連れられて行った町。そこはあまりにも人が悪い人物ばかりいたことを覚えている。父親と一緒にいたからよかったものの、独りだけだったならばどうなっていたことやら。しかし、今はカムラもいる。独りではない。だからこそ、安心があるのだが。それでも不安は拭えなかった。
「あっちには町があるよ」
フレイヴはカムラの質問に頷いて答えた。これに彼女は嬉しそうに「よっし!」と、もう自身が女性の姿であることをすっかり忘れていそうだ。まあ、元男だったのならば仕方ないのだが。
「じゃあ、早速行こう。というか、その町ってどんなところ?」
「うーん、一言で表すならおじいちゃんたちが住んでいた町とは正反対だなぁ」
「えっ、それってナズーがわんさかといるの?」
カムラの予想に否定した。そうではないらしい。それならば、どんな町だというのだろうか。どんな町だって? 知りたいなら教えてあげる。多彩な情報が行き交う中、犯罪が横行している危険極まりない町だ。そう、その町の名前は『情報の町』である。




