第8話 大和旅館
そして、ついに大和旅館に宿泊する日が来た。宿泊用の荷物を持って、なぜか僕が運転手になり、二宮さん、結香、江坂さんを迎えに行く。それにしてもなんでみんな住んでる地域がバラバラなんだよ。迎えに行くのに3時間かかったじゃないか。
そして、大和旅館も全くまた別の地域にあるため、さらに時間がかかり、旅館に着いたのが午後1時過ぎだ。腹減った。
僕たち4人?は車から降りて、大和旅館へ入っていく。赤いカーペットが敷いてあり、金の屏風や金色の柱がある、豪勢な雰囲気がするエントランスだ。
「すごい、です」
「ふんっ」
中の様子を見て、結香が拗ねる。受付の女性に声を話を伝えると、黄緑色の着物を着た大和さんが僕たちを迎えに来てくれた。
「いらっしゃいませ、皆様、今日はありがとうございます」
と言って、大和さんは僕たちを歓迎してくれる。
「こんにちは」
「初めまして」
「こんにち、は」
「ふん、来たわよ」
そうか、二宮さんと大和さんは初対面だったな。それにしても、何なんだ、結香の挨拶は・・・。
「みなさんの部屋を案内いたしますのでまずはそこで荷物を下ろしてきて下さい」
と、大和さんに言われたので、部屋に案内された後、僕たちは大和さんに連れられて、旅館の中を案内される。まず最初に行ったのは夕食を食べることになっている宴会場。僕たちは梅の間で食べることになっているが、松の間、竹の間もある。
次に向かったのは外庭と中庭。外庭は建物の外側に、中庭は囲うように建てられた旅館の真ん中に広がっている。その中庭をのぞいてみると、確かに変な生物がいる。何かがうねったと思えば、次には木のようなものが動いた。気味が悪い。襲ってこないのだろうか?
僕たちは歩みを止めて、大和さんに尋ねた。
「確かに。変なのがいるな。で、どんな感じですか?」
「はい、戦国武将から亜人まで出てくるんです」
「武将!?それは危ないんじゃないかですか?」
「誰だ!?って怒鳴られることはありますが、武器を突きつけられたことはありません」
「怖いなあ。でも大和さんのその着物姿も戦国時代の姫っぽいですね」
「さあさあ!中庭に入りましょう。吉田さん、お願いします!」
「僕ですか?」
「はい!」
大和さんは突然慌てて話を切って、僕の背中を押してきた。どうしたのだろう?それは彼女から語られることもなく、僕は中庭へと誘導された。
「吉田さん、頑張ってくくださいね」
「直くん、行ってきてよ」
「ファイト」
それにしても、なんで僕が中庭へ入らないといけないのか?二宮さん、結香、江坂さんも声援みたいなものを送っているし。そして江坂さん、ファイトって・・・。
僕は一人で庭に入る。他の4人は縁側で話をしているようだ。
僕は一人で庭に入る。すると、前方に大きな緑色の長髪の人がいる。これはやばいぞ。
僕が動きを止めると、その人、その女性は気づいてこちらを振り返った。緑色の髪をした彼女は、大体身長は2m、褐色の肌を持つ。大体特徴はそのくらいか。
普段の僕なら逃げるが、「(綺麗だな)」魅了されて動けなくなってしまった。
「うふっ。こんにちは」
「こんにちは・・・」
「私は有浦宇音といいます。よろしくお願いしますね」
と、彼女は笑顔でそう答える。よろしくって言われても、彼女は一体何者なんだろう?
「あなたは一体誰ですか?」
「私、植物と人間のハーフなんですよ」
「はい」
と言う。何のことか分からなかったので、スルーして話を続ける。
「ちょっと待ってて」
「はい」
僕はその場を去った。彼女のこと、大和さんに言わなくては。