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GARDEN CALL  作者: KAZU
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第5話 音声合成ロボット

 次の日、僕は久々に現場に復帰した。そして今は松田さんに呼ばれ、現場事務所へ向かっている。何やらお願いごとがあるらしい。


 そしてその日の帰り、僕は現場事務所へ立ち寄った。すると、そこには松田さんともう一人、現場監督の織田さんがいた。この人はイケメンだ。ふんわりした髪型に肌が白く優しそうな顔。おっとりした目。なぜ工場で働いているんだろうかっている見た目だ。絶対女子からモテるだろう。


「吉田君、今日は織田君が君に用事があるって言ってるから一緒に行ってくれないか?」

「織田さんですか?何の用事があるんでしょう?」

「あ、吉田さんに見てもらいたいものがあるので、行きましょうか」


 ちなみに、織田さんは普段から早口である。それを聞き取りつつ向かったのは、現場を

まっすぐ行って左に曲がり、そして狭い道をずんずん行ったら着く、工場でも西の方にある保管倉庫だ。


「保管倉庫がどうしたんですか?」

「いや、今日行くのはこの西の部屋です」


 見てみると保管倉庫の隣にもう一つ部屋があった。ここには来たことがないので、工場内にこんなところがあったとは知らなかった。織田さんはその部屋の扉を開ける。


 そこには、何もない狭い空間が広がっていた。なんでこんな何もないところに用事があるんだろう?


「あの、この奥なんですが、そこで見てもらいたいものがあります」


と織田さんに言われる。よく見ると、織田さんは笑顔だ。


 織田さんについて行って扉の奥に入った。すると、そこには古そうな機械がいろいろと置いてあった。薄暗い、気味は悪くないが何が何だかよく分からない部屋だ。そこを織田さんは古ぼけた機械をかき分けるようにして前へ進んでいく。すると、目の前にいたのは、女の子の形をしたロボットだった。そのロボットは、いや、彼女は髪の色が青く、瞳も青い。顔はシリコンか何かでできているのだろうか?

肌は白く、ちゃんと黒地に白いフリルのついた、メイド服っぽいものまで着せられていた。そして、まぎれもない美人だった。不覚にも、ロボット相手に、僕は胸が熱くなった。


「すごい!これは、織田さん・・・」

「これは現場で最近作られた音声合成ロボットです」


 と、説明する。


「こんにちは、誰なの?」


 と、目の前のロボットが話した。僕は驚いたが、反射的にあいさつした。


「こんにちは」

「こんにちは」


僕があいさつすると、織田さんは彼女について説明した。


「彼女は音声合成ロボットの江坂海音こうさかうみねです。かわいいでしょう?」

「私は、江坂海音と、いいます、よろしく、お願い、しま、す」

「ああ、僕は吉田直之という、この会社の社員です。よろしくお願いします」


 彼女は自己紹介をした。かわいい声だが、しゃべり方はロボット独特のしゃべり方だ。僕は思わず笑顔になってしまう。名前を紹介した後に、僕は江坂さんのことを聞いた。


「江坂さんはどういうロボットなんですか?」

「はい。音声、合成、ロボット、と、いう、もの、を、言う、または、説明に、使われる、ロボット、です」

「歌は歌えますか?」

「はい。ちょっと、歌ってみま、す」


 江坂さんが歌を歌う。その歌は、僕の耳をつんざくような美声で、僕のすべてが硬直してしまった。


「まさか、歌まで歌えるとは・・・」


 と、織田さんも驚きを隠していない。


「で、どうなんですか?吉田君」

「また行くよ、江坂さんに会いに」

「吉田さん、また、来てください」


 江坂さんは「うれしい」と言いながら、なんか笑顔をしてくれた。


 こんなにかわいく、使い道もあるのにここにいちゃかわいそうだ。そう思った僕は、また明日も江坂さんに会う決意をした。


 その日から、僕は江坂さんに会いに保管倉庫の西の部屋に通い詰めるようになった。彼女の笑顔が見たくて。


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