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GARDEN CALL  作者: KAZU
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第2話 召喚

 次の朝、会社へ出社したら現場へと向かった。


「おはようございます」

「おはよう」


 僕と松田さんは挨拶をする。出社が早すぎるのか、現場事務所には僕と松田さんしかいない。資料室に行くのは、仕事が始まる8時を過ぎてからだ。


 その時刻が来たら、僕は松田さんの後ろをついて、2階の資料室へと向かった。資料室の扉は壁と同じ色だ。これから1人で行くとき、分かるかな?


「じゃあ、俺は戻らなけりゃいけないから、何か質問はあるか?」

「あの、これからどうすればいいですか?」

「うん、それは吉田君の好きなようにすればいい」


 と、松田さんは助言してくれるが、そう言われても困る。


「俺もアイドルの仕事はよく分からないが、吉田君の作りたいアイドルを目指せばいいんじゃないか?」


 と、松田さんは後ろを向いたままそう言い残して現場へ戻ってしまった。答えになってない。作りたいなんて一言も言っていないし、それにいきなりアイドルを作れと言われて作りたいようにと言われてもまず何を目指していいのかも分からない。


 困ったのでとりあえず、資料室で今後どうすればいいか考えることにした。資料室でただ悶々と考えた。松田さんに聞いても何も答えないので、僕はただ考えた。そして結局答えは出なかった。そのあとも今後のことだけが頭をよぎる。一体僕は何をやっているのだろうか?


 昼食はいつも母の手作りの弁当である。昼食は3階の食堂でとる。


 弁当を食べた後、僕は再び資料室へ戻った。資料室か・・・。この、製品のなくなった、机だけがぽつんと置かれた資料室はなんだか寂しい。


「さて、昼の作業を始めるか」


 誰にも聞かれない独り言を呟いて、どうせ何も得られない思考を始める。


 でも、僕の中のアイドルイメージとしては、歌って踊れる女性ユニットだ。そうなると歌わないといけないし、踊れないといけないのか。う~ん?そうだな?だったらやっぱり、体力のある女性がいてほしいかな?


 と、僕の中でのアイドルがやっと具現化してきたその時、部屋の奥が突然明るく輝いた。一体何なんだ!?さらに少し待っていると、光が徐々に弱まり、そこには一人の女性が立っていた。女性は驚いた顔でこちらを見つめていて、口を手で覆っていた。僕も、驚きで体が動かない。


・・・。

・・・!?。


 しばらく、何十秒か、いやもっと経っているかもしれない、驚きで硬直した時間は、目の前の彼女が打ち破ってくれた。


「あ、こんにちは、私、二宮杏子(にのみやきょうこ)といいます!19歳で社会人2年目です」


 その杏子という女性は、髪は肩から離れるぐらいの短髪美人さんだ。服装はバリバリのレディースーツである。背は高めで、身長170cmある僕とあまり変わらない。でも、こんな美人さんが召喚されてくるなんて・・・。


「あ、僕は吉田直之といいます。24歳の会社員です」


・・・。


「で、何を話せばいいでしょうか?」

「えっ!?」


 女性はそう切り出したが、僕も何から話していいのかわからないので、驚いて聞き返してしまった。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「・・・」

「・・・」


 ああ、何を話していいかわからないや。


「あの、どうかしましたか?」

「え!?何も!」

「まあ、おかしいですよね?状況の整理ができないですよ」

「二宮さん、今までどこにいました?」

「今まで、ですか?会社で普通に仕事してました」

「どうしたんですか?難しそうな顔してますよ。考え事?」

「いや、ひょっとして、転移したのかなと思って」

「え?」


 と、二宮さんが驚きと疑問の声を上げ、口元に手をあてたところで、彼女の体が光に包まれていった。


「あっ!」


 と、僕も声を上げたが、光はだんだんと収束していき、僕の目の前には壁があるだけだった。間違いない。これは松田さんの言っていた異空間から生物が召喚されてくる現象だと思った。それにしても、昨日からアイドルの監督に急に抜擢されたり、その仕事部屋の壁が異空間につながっていたり、本当に驚かされてばかりだ。一体、異空間とはどこのことだろう?ただ、さっきの彼女は人間にしか見えなかったな?もし人間だとしたら、彼女は一体どこの誰なんだ?そしてこの二宮杏子という女性が現れて消えるまでの現象は時間にしておよそ10分ほどだった。


********


 今日1日の仕事が終わってから、僕は今日の出来事を報告するために、現場事務所に来ていた。当分の間はこのようにどんなことがあったか松田さんに報告をしなければならない。別に嫌なわけではないけど・・・。と、いうわけで、松田さんに、女性が突然現れたことを告げた。


「吉田君、今日は何かあったか?」

「今日は午後、資料室に女性が現れたんですよ」

「うん、それでは転移が起きたのか?」

「はい?」


 松田さんの言葉に、僕は質問した。


「そうか、わっかりました」


 ・・・いやいや、質問したんだけど。転移の意味が分からなくて聞いたんだけど。それに確か昨日は『召喚』と言っていたはずだ。『転移』と『召喚』はどう違うんだよ?


「あと、召喚の時間は世界の秩序とかの都合もあってそのくらいの時間なんだろう」


 と、それだけ説明して松田さんは足早に去っていった。今回は『召喚』と言っていた。で、召喚と転移はどう違うんだよ?説明求ム!


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