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GARDEN CALL  作者: KAZU
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第1話 いきなりの任命

 ここはある大都市の郊外にある自動車部品製造工場「ヒロイック」。この工場で吉田直之(よしだなおゆき)という青年がごく普通に働いていた。


********


 僕は吉田直之、自動車部品製造工場で働いている。働いているのだが、今僕の上司、松田さんから言われたこの任命は明らかにおかしい気がする。


「吉田君、明日から女性アイドルのプロデュースをしてくれないか?」

「えっ?」


と、僕は思わず聞き返した。それはそうだろう。松田さんの表情もいたって普通だし。


「突然で悪い。わが社にも花がほしいという会社の方針だ。実は俺もそんな理由なのかは怪しいと思っている」


松田さんは困った顔に変わる。


「じゃあ、早速、新しいデスクに案内しようか?」

「えっ?ちょっと!」


松田さんが先に行くので、僕は頭の整理がつかないまま現場事務所を後にした。


僕が連れられてきたのは、現場事務所を西へ3部屋ほど行き、階段で2階に上がった西隣の部屋だ。


「吉田君、ここが新しいデスクだ」


と、松田さんがそう言って部屋の扉を開けた。そこは、倉庫を改造したような細長い部屋で、真ん中にこたつ用の机がある部屋だった。


「ここは、倉庫じゃないですか」

「いや、半年前から資料室として扱っている」


と、松田さんは言うのだが、僕はこの部屋自体を知らなかった。そこで、僕は聞いた。


「何の資料室なんですか」

「部品の検査結果のだ」


と、松田さんは言う。確かに、見渡してみると、部品もあるが、その上に、ファイルに何やら紙が閉じられている。僕の次の疑問は、


「この資料室は僕が使っていいんですか?」


これである。資料室なんだから、当然、その資料や部品が必要だろう。でも、松田さんは「いいぞ」と言って首を縦に振る。その理由は、


「この部品たちはいらないから」


さらに、


「今日中に捨てておくから、明日からここを使ってくれ」


と松田さんは言う。でも、いきなりそう言われても困る。


「あの、僕は明日からどうすればいいんですか?」

「明日から女性アイドルのプロデュースをするように言ったはずだけどな」


松田さんは困った顔をしてそう答えるが、困っているのは僕のほうである。いきなり女性アイドルのプロデュースをしろと言われても何をしていいのか分からない。


「あの、何をすればいいんですか?」

「ああ、それは俺も分からんな」


松田さんも分からないのか。もうこれじゃどうすることも出来ないな。


「ただ、アイドルについてはちゃんと準備している」


おお、松田さん!それは本当なのか!?


「実はこの部屋だが、この奥だ」


と、松田さんはこの部屋の一番奥を向いて指さした。


「はい?」

「この奥だが、昔、火事が起きてな、壁が焼けてしまったが、その時から変な生物などが出るようになって」

「え?」


僕は驚いた。そしてなんで僕はそんな場所を与えられたのか?物騒な気分だ。


「昔、うちの社員が四角い人間を見たって言っていた」


四角い人間?


「ここは異次元とつながってて、そこから召喚されるらしい」


異次元?召喚?何が?


「何がどうなるのですか?」

「何がどうとは?」


僕が質問しても、松田さんにはうまく伝わらない。でも異次元とか召喚とか言われても僕にはよく分からないし。もちろん聞いたことがある言葉だが、ゲームで。


「何でもありません」

「そうか。それでこの場所は公にしてないから知る人が少ない。まだここから出た生物はいなかったから、大騒ぎにはなっていない」


と、松田さんは説明する。そりゃ四角い人間がこの部屋から外に出たら大騒ぎになるけど、一体あの壁からどんな生物が出てくるのか?僕はこれ以上質問できなかった。


「質問はないようだな」


と、松田さんが言うが、別に質問がないんじゃなくて質問が思いつかないだけだ。しかし、ここで一つの疑問が沸いてきた。


「で、人はどうやって集めるのですか?」


僕は恥ずかしながらそんなに親しい女性がいない。女性に接するのが苦手なのにどうやってアイドルユニットを作れというのか?


「それは準備してあるといったはずだが。その壁から必要な人員が召喚されてくるだろう」


松田さんはそううれしそうな顔で言うけど、僕の頭は多くの?に埋め尽くされている。


「吉田君がそうであることは分かっていたからな」

「は、はあ」


「そう」がどうなのかということが分からなかったので、僕はあいまいな返事をしてしまった。まあ、人には困らなくていいということだ。


「じゃあ、仕事へ戻るぞ」

「もう戻るんですか!?」


松田さんは話を切り上げ、僕は質問をすると松田さんは歩き始めて返答した。


「正式に仕事をするのは明日からだからな、明日の朝までは現場に来てよ」


そういえばさっき松田さんはそう言っていた。明日からだった。


家に帰ってから、僕は親に仕事が変わるということだけ話した。それ以上この話には踏み込めなかった。


********


 次の朝、会社へ出社したら出社認証を済ましてその先の現場へと向かった。


「おはようございます」

「おはよう」


僕の挨拶に、松田さんが返す。今、現場事務所には僕と松田さんしかいない。現場に行くのは、仕事が始まる8時を過ぎて、8時5分だ。


その時刻が来て、早速、僕は松田さんの後ろをついて、2階の資料室へと向かった。


「じゃあ、俺は戻らなけりゃいけないから、何か質問はあるか?」


松田さんはこれから現場へ戻るらしい。


「あの、これからどうすればいいですか?」

「うん、それは吉田君の好きなようにすればいい」


と、松田さんは答えて現場へ戻ろうとするが、好きなようにって言われても何をどうすればいいのか分からない。


「俺も、アイドルの仕事はよく分からないが、吉田君の作りたいアイドルを目指せばいいんじゃないか?」


と、松田さんは後ろを向いたままそう言い残して現場へ戻っていった。作りたいようにって言われても困るし、答えになってない。そもそも作りたいなんて一言も言っていないし。とりあえず、この部屋で、今後どうすればいいか考えることにした。


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