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Bear  作者: 三毛猫
3/7

レジで再会

 下校中に連絡機能をロクに果たしてない携帯電話に通知が届いた。

 いつもこの携帯電話に通知が届くタイミングは、朝起きるのに目覚ましの6時30分、ソシャゲーが10時ちょうどと17時ちょうどの2回、あんまり見ないけど一応取ったニュースアプリが21時で、1日に携帯電話が鳴るのは最低4回だけ。

 その他は、わざわざ意味のない連絡を取り合うほどの仲の良い奴はそんなにいないから、1日に4件の通知で収まる。稀に家族から連絡が届くくらいで、家族の余程のことがない限り連絡はしてこない。

 だから、17時の市内のチャイムが鳴る前に通知が届いたのは物珍しかった為、その場で携帯画面を見ると、かーちゃんからのお使い事だった。

 「卵が無くなったから帰りに買ってきて。」

 とても一大事だった!直ぐに買って帰ろう。

 目的地が自宅から、この近くで多分卵が売っているであろうドンキーにルート変更した。

 ドンキーに着き卵を探しに店内に入ると、お馴染みのBGMが流れていて、お店の奥まで進む頃には自分の鼻歌とデュエットしていた。

 陽気に食品コーナーをぶらついていたら卵を見つけたが、卵の個数が6個入り、10個入り、12個入りの三択で一瞬戸惑ったが、いっぱい玉子焼きを作って欲しいと思い、値段も気にせず12個入りを手に取った。

 右手で卵を持ちレジに並んでいたら、見覚えのあるストラップが色とりどりに並んでいた。このストラップを左手で取って見ていたら、朝の蕾蜜の泣き顔を思い出した。

 「・・・の方、・・・次の方、お待ちの次の方レジへどうぞ。」店員の声に慌ててとっさに両手にある商品をだした。

 「250円1点~、600円1点~、お会計850円になりま~す。」

 あれ?600円ってなに?卵だけ買ったつもりなんだけど・・・

 不思議と思ってレジ台を確認したら、卵の隣にはしっかりと朝踏んだ物と同じクマのストラップが置かれていた。

 だけどいまさら「このストラップは違います。」とは言えず、しぶしぶ財布を取り出したが、中には528円しか入ってなかった。レジ横の1円玉を借りても支払いには足りず、恥を忍んでストラップの購入を断ろうとした時に携帯電話が鳴った。

 それは17時ちょうどに届くソシャゲーの通知だったが、そのおかげで携帯ケースのカード入れに非常事態用の1000円札を隠していたのを思いだした。少し安心したが、レジ待ちの行列に圧倒されて、何故か早く次の人にレジを譲ろうと思い気持ちが焦ってきた。

 店員に焦っていることがバレない様に携帯ケースから折り畳まれていた1000円札を取り出した。緊張の余り手が震えていて、何度が爪先で折りたたまれた1000円札の隙間に入れようとしたが、うまく入らず諦めてそのまま店員に渡した。

 店員は面倒くさそうにため息をしてから折りたたまれた1000円札を広げて、それをレジに吸い込ませて出てきたお釣りとレシートを100%の営業スマイルで渡してきた。

 汗ばんだ手でお釣りとレシートを受け取り、自転車の所まで小走りで走った。何か怖いものから逃げきった後の様な深いため息をついて、家に向けて自転車を漕ぎ始めた。

 家に着き玄関を開けようと手をドアノブにかけた時に動きが止まった。

 この買い物袋のまま、かーちゃんに渡したら中に入っているストラップの存在に気が付いてしまう。そーなったら、彼女が出来た容疑にかけられ、緊急記者会見が起こるのは間違いない。そんなことは、何としてでも避けたい。

 そう思い、ストラップをカバンの奥底に入れ再び玄関を開けようと、手をドアノブにかけたときに動きに動きが止まった。

 レシートはどうしよう・・・

 これは完全に逃げ道が塞がれた。

 少し考えたが特にいい案も出ず、念の為何が記載されているか確認すると、生卵、クマのストラップ(ドンキー限)の2点が載っていた。

 クソ、何故このストラップはドンキー限定を主張したいんだ!

 玄関に着いてから、かれこれ10分は経過したが、家までの道のりは遠かった。見つからない解決策にムシャクシャし、レシートをクシャクシャに丸めてポケットに入れた時に活路が開かれた。

 そうだ、見せなければいいんだ。

 何か聞かれても、いつもの癖でついうっかり店に捨ててきたと言えば簡単に誤魔化せるだろう。

 突っかかりが取れた様な晴れやかな気分で、さっきまでは重かった玄関を開けて帰宅出来たのだが、かーちゃんとの会話に1度もレシートの話は無かった。


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