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Bear  作者: 三毛猫
2/7

おかえしに

 登校中にアクシデントがあったが、それ以外は席に着くまで平和な日常だった。

 喧騒の教室の中、最近休み時間でコツコツやっているソシャゲーのログインボーナスを貰っている最中に、教室の前の扉がガラリと開いた。

 「そろそろ席に着け~、朝礼を始めるぞ~。」

 大きな声を出して黒板の前にツカツカ歩く担任に気付き、生徒達は各々自分の席に戻っていく。全員席に着くと号令係が、「起立、気を付け、礼、着席。」とテンポ良く言い、クラス全員がそのテンポに合わせて体を動かす。

 そして、担任が出席確認してまだまだ先の中間試験の話をしている中、チラッと隣を見ると、蕾蜜が朝踏みつけてしまったストラップを見つめていたが、まだ俺には気がついてなかった。

 そのストラップは、5センチくらいの白クマのぬいぐるみで、携帯に付けるには少し大きいくらいだったが、今彼女の携帯に付いているストラップは、顔が潰れて自転車のタイヤ痕が付いている。

 彼女に対し、少し罪悪感があるも顔を覚えてくれてなかった事に腹が立っていた。その怒りを忘れるようにソシャゲーをやり、チャイムが鳴れば授業を受ける事を6回繰り返したら放課後になっていた。

 放課後になれば、各々部活なり、バイト行くなり、友達と談笑なりと好きな事をやり始めていた。

 俺は、帰宅をするために荷物をまとめていたら、隣にいる談話グループから「絶対に許さない。」と聞こえたから、恐る恐る聞き耳たてると、「朝のチャリの奴、絶対にワザと!お詫びに同じキーホルダーと購買のお菓子を全品買って貰うまで許さない。」蕾蜜は激昂の様子で話しをしていた。

 おー怖い怖い。そこまで大切な物だったのか?

 すると、グループ内の1人が、「そいつの名前は?学年とクラスは?」と犯人捜しを始めた。

 もう終わった。明日からきっと、女子達にいじられる日々がくる。さよなら平和な日常、早く戻ってきてね。

 「ふ、ふ、ふ、いや、違うな~。す~す~・・・・・・ゴメン、忘れた。てへっ。」

 蕾蜜のにこやかな笑顔で言いうと、その場が笑いに包まれた。

 ゴメンね~、俺の名は鈴音冬夜だよ。

 だが俺は彼女に名前を忘れられた事に嬉しく思い、小さいガッツポーズし微笑みを浮かべながら教室を後にした。

 お前、朝の時点で俺の名前と顔を忘れていただろ。だけど、これはこれで好都合!明日から、平和な日常に安心して送れる。

 そう思いながら、自動販売機で祝杯のコーラを購入し、飲み歩きながら駐輪場で自分の自転車を探していた。

 「あーー!」

 ちょうど自分の自転車を引っ張り出した時に、さっきまで聞こえていた声が聞こえた。その声の主は、もの凄いスピードで間合いを詰め切り、俺を鷲の如く腕を掴み、捕食態勢にはいっていた。こうなったら、ウサギみたいな俺ではどうすることも出来ない。

 「このチャリッ‼朝の奴⁉ようやく見つけた。今までどこに隠れてたのよ?」

 蕾蜜は必死に俺のことを探していたみたいだが、俺は堂々と君の隣にいた。逆になんで自転車に乗らない蕾蜜が駐輪場に来ているのよ。

 疑問はあるが、ここは素直に彼女の質問に答えた。

 「教室で携帯をいじってた。」

 ありのまま今日の行動を蕾蜜に言ったが、「絶対に嘘!昼休みに全クラスに行ったけど、どこにも居なかった。どこに逃げていた。」と、あっけなくまた否定してきた。

 だからもう一度昼休みのことを思い返したが、弁当の中に俺の大好きなかーちゃん特製激甘の玉子焼きを食べたくらいのと、ソシャゲでレアキャラが当たったくらいしか出てこなかった。

 「昼休みはずっと教室にいたけど。むしろ俺の顔と名前、覚えてる?忘れたとか言わないよね?」

 もちろん、蕾蜜が俺の名前を忘れていた事を知っているけど、今日は2度も否定してきたからあえて蕾蜜に聞いてみた。

 すると彼女は魚のように口をパクパクと動かして、髪をいじりながら小声で「しょうがないじゃん。」と言い、しばらく会話がなかった。

 この場にいるのも段々としんどくなってきたから、「俺はもう帰るよ!」と彼女に振り向きながら言ったら、蕾蜜の瞳には涙がいっぱい溜まっていた。

 言い返せなかったのが悔しかったのか。だが、俺の名前と顔を忘れた罪の罰こんなもんだろうと思い、勝ち誇った気分で自転車を漕ぎ始めた。

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