プロローグ
ペダルを左右の足で交互に漕いで、通い慣れて少し桜の散ったいつもの通学路を通った時に、俺は呪われた。
そう、いつもなら誰とも会話もせずに登校し、自分の席までに座れる自信はあったけど、何故か今日に限ってはそれを許してはくれなかった。
そこには、瞳にいっぱいの涙を溜めて、上目遣いで睨んでくる女の子が1人いたからだ。
なぜ、道端に彼女の携帯が落ちているのか。なぜ自転車通行帯を自転車で走っていた俺に対し、「お前がそこを走るのが悪い。」と世界は私中心で回ってます~みたいな感じで、俺と法律を否定してきたのか分からなかった。
あの時は、彼女が何かを落としたから、それを避けながらブレーキを掛けたら、見事に携帯のストラップの上にタイヤが停止するとか思わないじゃん。
それに、こっちだって必死だったよ!むしろ全力で頑張った。努力賞は欲しいもんだね。
それなのに彼女は、「絶対にわざと!これ、どうするの?限定品の物だよ。ドンキーにしか売ってないんだからね。」とプレミアム感をアピールしてきた。
・・・・・・ドンキーって駅前にあるじゃん。学校から徒歩15分くらいのところにあるじゃん。限定と言うものの大量生産品じゃん。
そんな事を心の中でツッコミをしていたら、彼女が学年と名前を聞いてきたから、その質問に違和感したが質問に素直に答えた。
「2年の鈴音冬夜。」
それ聞いた彼女は、「同じ2年なのね。ふーん!覚えておく。」と言い放って鼻をすすりながら走って行くのを見届けた。
んーちょっと待って。確か彼女の名前は蕾蜜春陽。2年2組で席は俺の隣なんだが・・・・クラス替えしてから2週間も経っているのに覚えてないの?英語の授業は2人1組で一緒にやったのに覚えてないの?マジで‼
ヤンキーかギャルの血が入っているのは確かだと思うのだけどにしても酷い。
そう憂鬱になりながら、再び自転車を漕ぎ始めた。