9 小休止はいらんことを考えるタイム
洞窟は一定の広さを保ち、グネグネと曲がりくねってはいるものの、基本的に一本道で奥に続いていた。
時々モンスターとエンカウントする。
ジュドーとタロスとアラクラの活躍で、モンスターはバタバタ倒されていった。
僕? 毎回、腰抜けてますが何か。
みんな少しずつ状況に慣れてきて、やり取りが増えてきた。
概ね僕を除く3人で。
いいんです。
正直、話しかけられても緊張するだけなので、僕はうつむきがちにして、前髪で顔を隠して歩いた。
話しかけんなオーラを出してやった。
僕は一歩引いて、3人の会話や様子を見ていた。
タロスはアラクラが好きだ。
露骨に迫るから分かりやすい。
「アラクラ、荷物を持とうか。俺はアラクラごと抱いて行っても構わないが」
「私は大丈夫」
バカじゃねーのタロス。
頭がどうかしているとしか思えないくらい、さっきから同じやりとりを繰り返している。
自分に自信がありすぎて、拒否られてることが理解できないのか。
そういう自信過剰な堂々たる態度、僕は大嫌い。ああ、本当に嫌い。鳥肌が立つ。
タロスをさらりとかわすアラクラは、たぶんジュドーが好きだ。
態度には一切出てないが、僕には分かる。
僕が分かってしまったら、それは真実だ。
僕が女なら、スケベな戦闘バカより多少没個性でも心ある勇者を選ぶ。
僕は確信している。
だから、もはやそれが真実。そう。「たぶん」ではない。
アラクラはジュドーが好きだ。
ジュドーは、ほのかな好意くらいはアラクラになくもないかもしれない。
でも、それは恋未満だ。
ジュドーはちょっといい奴過ぎる。
やるべきことに気を回し過ぎて、自分のあれこれは置いてけぼりだ。
なにしろアラクラを見るより、輪から外れがちな僕を見る回数が多いくらいだ。
なんたる配慮。
苦労性。
やめてほしい。
目が合うと、胸がぎゅうっと苦しくなる。
うー…。
優しくされるのは悪くないが、ジュドーはあまりに出来が良すぎてやっぱ嫌い。
ジュドーにつられてだと思うけど、アラクラも僕に優しい。
タロスだけ僕を苦々しく見てくる。
僕のことも、ジュドーの影響力も気にくわないのだから、当然だ。
怖っ。
メビウス姉さん。
感情のごちゃごちゃみたいなこと、僕、すげえ苦手なんですけど。
やだなー。
僕に牙を向けるヒマないくらい、試練らしくなってくれないかな。
ここまでは割と楽勝だったなー。
でも、試練だよ?
試練、試練、そう簡単じゃないはずだ、試練。
うん。忙しくなるぞー。
あ。
なんか、余計なこと考えちゃった…。
試練って、無茶なことさせたりしそう。
だって、「恐れを乗り越える」的なイベントでしょ、これ。
例年、儀式に参加すると大ケガして戻ってくる感じだったっけ?
あまりに興味ないから、知らんし。
でも、きっとそんな感じなんでしょ?
…やばい。
どんどん考えてしまう。
きっとここから厳しい状況になる。
ヤベー奴がくる。
普通のモンスターだけで終わるわけがない。
絶対、そうなる。
メビウス姉さん。
頭に浮かぶ邪魔な考えが打ち消せないんですけど!