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8 かっこいい

 僕たちは村の皆に見送られ、アグラの洞窟に入った。

 タロスが僕に荷物を差し出した。

 タロスは片手で軽々と布の袋を扱う。

 受け取った僕は、それを必死に背負った。

 正気か。クソ重い!


 足がふらついて、僕は皆のスピードについていけなくなった。

 タロスは真顔でため息ひとつ。サクッと僕の背から荷物を回収し、自分の腰ベルトにくくりつけた。

 僕は、荷物持ちさえもさせてもらえなくなった。


 荷物もない上、よれた普段着の僕は、ピクニック未満の存在だ。

 僕の予定では、「そういう妙に普通っぽくて余裕っぽいところもちょっとカッコいい」という風味でこの洞窟を歩いているはずだったのだが。

 普段着で最強の俺様…そんなヤツはどこにもいない。



 滑稽だよ、メビウス姉さん。泣いていいですか。

 何でこんなことに…。





 洞窟には、ヒカリゴケが付着していた。

 そのおかげで光源には不足せず、明るい。

 明るくったって足場は悪い。

 岩がゴツゴツしててめっちゃ歩きにくい。

 先頭ジュドーが僕を見ながら速度を調節する。


 二番手タロスも時々後ろを振り向いて、アラクラと話すついでに僕を見る。

 軽くにらんでる気がする。


 三番手アラクラは、たまに手を差し伸べて僕を引っぱってくれる。


 最後尾、どうしていいか分からず混乱気味の僕は、必死に遅れないようについて行っている。

 アラクラの手の感触がウフフフ…みたいな悠長なことは、思うヒマもない。




 突然、魔物が現れ、戦闘になった。

 



 現れたのは鋭い爪と牙を持つ巨大ネズミ、ブラッキーだ。

 大型犬のような大きさのブラッキーは、真っ黒な体で目が赤い。

 メビウス姉さんの紅蓮の瞳は美しかったけれど、こいつら3匹の目は怖いしうす気味悪い。


 とりあえず僕は腰を抜かして動けなくなった。


 パーティの前列が動く。




 タロスは強い。

 僕がしゃがみこんだ瞬間だった。タロスは大斧を振るい、ブラッキーを一体叩き割った。



 アラクラは強い。

 すばやく攻撃補助魔法を唱えて、タロスの攻撃を援護した。



 ジュドーなど、言うまでもない。

 かっこいい。

 惚れる。

 正直、憎しみさえ解けそうだ。


 最初に飛び出したタロスの動きとブラッキーたちの挙動をよく見て、ジュドーは的確に踏み込む。

 無駄な所作などない。

 手前のブラッキーに阻まれて進めず興奮している残りのブラッキー2体を、ジュドーは鮮やかに斬り捨てた。


 さらにジュドーときたら、戦いの最中にクズの僕に目配せをしてくるのだ。

 その目が、安心しろ、と告げる。


 僕の胸が鳴る。

 そのまなざしにすがりたくなる。





 戦いの後。

 僕の中に、冷徹な自意識による自虐がやってくる。

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