先頭の男
「タッタカター」
その男は必ず先頭を歩いていた。
ここは小さな王国である。その国の中でこいつはバカ者扱いされ、皆から嘲られていた。
その男は、祭りの時も、パレードの時も無許可で先頭を歩いた。最初は国も罰金や厳重注意を課したが、何度注意をしても聞かなかったので、もうあきれて諦めたのだった。
彼はいつも馬鹿にされていた。道を通るたびに「馬鹿だ、馬鹿だ」と人々に言われた。
彼は意外に金持ちだった。
馬鹿の家に大金、いかにも泥棒が入りそうだが、彼の家で盗まれたという事件はなかった。警備がしっかりしているのだろう。
今日は王国生誕1000周年記念のパレードだった。警備はもちろん厳重だった(いろいろな意味で)。
紙吹雪が舞いパレードが始まった。国民が一斉に今か今かと国王の輿を待つ。
すると、
「タッタカター」
先頭はアイツだった。国民はみな彼にブーイングをし、紙コップなどを投げつける。
コップをぶつけられながらもそいつは進んでいく。皆の前から消えた時、パレードの通る道はゴミであふれていた。
「これは一体どうしたことじゃ!」
国王が怒嘆の声を上げた。
すると一人の兵が
「どうやらあの男に怒ってみなが・・・」
と報告するやいなや
「またあの男か、呼び出せ! 処罰してやる」
パレードが終わると、男は王直々(じきじき)に死刑を宣告された。
「タッタカター、私は必ず先頭を歩く。タッタカター」
「その狂った男を早く切れ! 声も聞きたくない」
「はっ!」
男は処された。
男の財産は今までの国に対する慰謝料として、国庫、王室財産などに分割された。
しかしそこからの展開が早かった。王政に不満を持った者たちが革命を起こしたのだ。
王家一族は捕捉されて、死んだという。
しかし、今度はその革命政府に不満を持った者がそれを潰した。その後、その国は何度も他国と戦争をする凶悪国家となった。
そして、全世界を敵に回した後、国内で反乱がおき、それに見合わせて他国から攻撃され、国連管轄の貧しい国となった。
国民はその頃気付いた。
「あの男は全て自分にぶつけられるように仕向けていたんだ。そして、人々の不満を解消させていたんだ」
そして、その国はなけなしの金でそいつの胸像を作ったという。
「タッタカター、タッタカター、死んだ後でもタッタカター、この私めを先頭に、王族、諸侯、革命家、いろんな人がタッタカター、遂には戦争こりゃ大変、どんどん、どんどん、タッタカター、この私めを先頭に、死後の世界へタッタカター」
終わり
少し変な方向に走ってみました。面白いと感じていただければ光栄です。