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ぼんやり光るポケットは怪しいだろ?




「お部屋、こちらで~す」


ワンコ娘に連れられて2階までやってくると、2階の一番奥の部屋に案内された。

部屋の中は6畳程の広さで、通りに面した壁にはガラス窓、壁際にはベッドと小さなテーブルに椅子と、素泊まり上等!といった感じの男らしい部屋だった。


うん、質素で素朴で良いと思うよ?


「お泊まりのお客さんは朝と夜の食事を銅貨5枚で食べていただけます。お昼は外で食べていただくか、ランチメニューを頼んでいただく形になってます」


ふむふむ。


「トイレは1階の階段横の扉を開けて出た外、裏庭になります」


そうだよね。見た感じの技術力的に水洗とか部屋ごととかないよね。


「裏庭の井戸はご自由に使って下さい。水浴びとか、洗濯とかですね。お湯が必要な場合は銅貨1枚です」


そうか。洗濯機も風呂もないのか。やべぇ。日本ジャンボリーの記憶が甦るぜ。


でこぼこな斜面でのテント張り、連日の大雨、びしょ濡れの装備を担いでのハイキング、降りやまない雨で湿気る薪、風呂にも入れず体を拭くだけの日々、洗濯しても乾かない服、テントに流れ込む雨水、冷え込む高原の夜、臭いのきつい同じテントのスカウト。


あぁ、あれを考えればしっかり雨風が防げるだけで天国だな。


「お湯は、私に言ってもらえれば、外でもお部屋でもお持ちしますよ!こう見えて私、力持ちですから!」


得意気な顔で、ふんす、と力こぶを作るように両腕を上げるワンコ娘。可愛らしい。頭ぐりぐり撫でまわしたい。


こんな可愛らしい妹いたらめっちゃ可愛がるわ。クロフさん羨ましいわマジで。


「お部屋の鍵はお客さんに渡しておきますね。無くしたら銀貨1枚払ってもらわなきゃなので、無くさないように気をつけて下さいね!お出かけの時にカウンターで預けてもらっても大丈夫ですから……、あっ!」


鍵を手渡されたと同時に小さく飛び上がるワンコ娘。


どうした、尻尾に落ち着きがなくなったぞ。


「や、宿帳にお名前書いてもらうの忘れました!後で書いてもらって良いですか!?」


あぁ、なるほど。過程を1個すっ飛ばしたのか。大丈夫大丈夫。可愛らしい妹の為だそのくらい何ともないぜ。

俺の妹じゃないけど。


「わかりました。後でカウンターによりますね」


「お願いします!ではお部屋の説明は以上です。わからないことがあったら何でも聞いてくださいね!」


「はい。ありがとうございます」


「では、ごゆっくり!」


再び深々とお辞儀をしたワンコ娘は、パタパタと尻尾を振りながら、パタパタと階段を降りていった。

可愛らしいね。うん。


さて、とりあえず休憩だ。疲れた。うん、疲れた。


備え付けのテーブルの上に胸当てやら剣やらを放り出して、ベッドに倒れ込んだ。

むう、思ったより柔らかい。なんだろこのマットレスは。

凄くもふもふです。綿?違うな。何だろう?とりあえず柔らかい。

文化レベル的に藁とか木の板にそのままとか想像してたけど、これならゆっくり寝られるわ。


窓から見えるお天道様は大体真上に鎮座しておられる。

ペンギンナイトも昼時って言ってたっけ?


まだ昼時ってことは、俺は朝も早よからあの真っ暗闇のダンジョンの中をうろちょろしてたことになる。

見知らぬ土地でワケわからん状況に放り込まれたら、そりゃ体力も気力も使うわ。


とにもかくにも一息だ。


うーんと、これからやることは、宿帳の記入と、あ、ワンコ娘の名前聞くの忘れたな。宿帳書くときに聞いておこう。

念のため、念のためだ。

そしてその内仲良くなってあの耳や尻尾をもふもふさせてもらおう。

うん、そうしよう。させてくれるかはわからんが。


後は冒険者ギルドとやらに行って、ポッケの小石をどうにかしよう。

あぁ、そのまま寝転がったからベッドの上に散らばっちゃった。

飯の種やで。大事にせにゃあ。ごめんなさいごめんなさい。

まとめて硬貨袋に入れておこう。


換金出来るなら幸い、出来なかったら何かしら仕事を見付けなくては。

飯のことも考えると、今の所持金では後10日くらいしかもたない。

のんびりゆっくりしたい所だが、今のんびりゆっくりしたら、その先のんびりゆっくりできなくなる。

それは困るな。うん、困る。


こう言ったファンタジー世界的な流れから行くと、モンスター退治とか薬草集めとかで生計を立ててく感じだよな。

魔物を狩って、その毛皮とか肉とかを売るんだ。


オプションさんがいれば多少のモンスターならどうとでもなりそうだしな!

いや俺も何かしら戦闘技術を磨きにゃならんが。

いつまでもオプションさんに頼ってばかりでは情けないからな!


そしたらこの街の周りにはどんな魔物とか薬草があって、どれが高く売れるのかを調べないとだな。


あ、でも無理に命をかけて魔物狩らなくても良いんだよな。

狩人じゃなくて、別の安定した安全な仕事についても良いんだよな。

オプションさんありきで考えていたが、肉体労働者な俺なら何とかなりそうではある。


しかし、せっかく剣と魔法の世界に来たのに、それじゃちょっと悲しいよな。

やっぱり剣と魔法で魔物を蹴散らす様な感じで行こう。

ある程度資金を貯めたら、どこか田舎でのんびりゆっくり暮らそう。そうしよう。


あ、オプションさんも自由にさせてあげなくては。

いつまでもあれの中じゃかわいそうだ。


もふもふのベッドから起き上がり、テーブルの上に放り出したランタンのカバーを開いて、ランタンの中に収まってもらっていたオプションさんを外に出した。


ランタンの灯りに見せかけて腰にぶら下がっていてもらえば、いざって時にすぐ飛び出せるぜ。


良い考えだろ?普通にポーチとかポケットでも良いんじゃ?とか言うなよ。

どれだけ明るさ控えめにしてもらってもぼんやり光ってるのを止められないんだから。

ポケットがぼんやり光ってたら怪しいだろ。


明るさ控えめで小さくなっていたオプションさんはふわりと上昇すると、空中で元の大きさを取り戻す。

質量保存の法則とかどうなってるのかさっぱりだけど、ファンタジー世界にそういうの求めちゃダメなんだろうね。


うん、気にしない気にしない。


そうだ、あれも試しておかないと。


オプションさんが出てきた時に、体の奥からヌルリと抜け出した何かについてだ。

迂闊に出し入れして大丈夫なものなのか、ちゃんと確認しておかねば。


よし、じゃあとりあえずオプションさん帰還。……、あれ消えない。単語が違うのか。オプションさん消えて。おぉ、消えた。

そしたら次は、オプションさん召喚だ。ぬお、ヌルリときたぞ。オプションさんも出てきた。


うん、出し入れは問題なさそうだ。どこら辺から出たり入ったりしてるのかは不明だが。

よし、何回か出し入れして、限界があるのかも試してみよう。いざって時に出せなかったら死活問題だからな。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





何だろう。若干頭がぼんやり?何か辺りが暗い?あるぇ?いつの間に眠って…いや、眠ったんじゃないな。眠るんだったらもふもふベッドで寝るもんな。

こんな固い床でこんなおかしな格好で寝ないもんな。


いてて、体がいてぇ。首が!首がっ!

えーと?何で床で?うーん?…あれだ、オプションさんを出し入れを試していて、10回行くか行かないかの時だ。

頭がくらっとしたと思ったら、そこからさっぱり記憶がない。

気絶するとかしたんだな。


何故?決まってる。体の奥から何かがヌルリと抜けるあの感覚のせいだ。

オプションさんは、いないな。呼び出すだけの何かが足りなかったのか?なら、今は?


オプションさん召喚。

ぽよん。


おぅ、出た。

いつも通りのオプションさんだな。


うーん、出し入れには回数制限か、何かの条件があると見て間違いないな。


魔力ってやつか?でもその魔力が俺にどれだけあって、オプションさん召喚でどれだけ使うのかわからんな。


とりあえず出し入れは連続で10回前後だ。

覚えておかなくては。ゴブリン(仮)とかと戦っているときに気絶とかしたら確実に天に召される。怖いな。


それに、今回は気絶だけで済んだけど、万が一意識が戻らないといった危険もあるはずだ。

次からは体調を確認しながらゆっくり試そう。


窓を見たら外はもう暗くなっていた。何時間寝てたんだろう。


冒険者ギルドは何時まで開いてるんだろうか?もう遅いかな?明日にするか?

うーん、ワンコ娘に聞いてみよう。間に合いそうなら行ってみればいい。

ダメなら明日出直しだ。

腹も減ったな。もう夕飯食べられるのかな?

1階に降りてみるか。


胸当てやら剣やらは、置いていこう。

オプションさんは、出したばっかりで消すのもかわいそうだな。


そうだ、ベルトにランタンだけしよう。

剣を外して、ポーチの中身も小銭と小石の入った小袋だけにして、ランタンの中でオプションさんにスタンバっててもらおう。

度々のランタン内部で窮屈であると思うが、我慢していただいて。

いざって時にはよろしくお願いしますオプション先生。


さてさて、いざ1階の食堂へ。

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