ゴーホーム!
ペンギンナイトの呪縛から解き放たれて森の中の道を行く。
凄く森です。とても森です。異世界は長閑です。
あー、ほら鳥が鳴いているよ。さえずってるよ。
ふふふ~、俺も歌いたくなってきちゃうなってか。
そ~らは晴れ渡~って、鳥はさえずり鳴く、僕らも口笛吹いて、ヘイヘイいつもげーんーき♪
俺の隣に浮遊するオプションさんには口笛吹く口どころか目も耳も、と言うか出っ張りすらありませんがね。
完全なる流線形だよ。取っ掛かりすらないよ。
でも俺とはツーカーな仲だし?俺とオプションさんはマブダチっつうか?俺の考えてることはオプションさんが全部感じ取ってくれてるっつうか?
あ、オプションさんの考えてることはさっぱりわからないんすけどね?
緩やかにカーブしている森に囲まれた道をしばらく歩いていくと、徐々に木々がまばらになって、ごつごつした岩が目につくようになってきた。
なんだか岩が多くなってきたなぁ、と思いながら歩いていくと、不意に視界が開けて、目の前に荒涼とした岩の大地が広がっているのが見えた。
そこにあるのは大小様々な岩と、両側から迫り来る切り立った岩壁。
岩壁の隙間を通り抜けながら砂ぼこりを巻き上げる風、そして所々に点在する風に吹かれながらも、風なんかに負けないぜ!俺たちゃ乾燥に強いぜ!と言わんばかりの植物たち。
そこは俺が出てきた森とは正反対の荒れた土地だった。
え~?どういうこと~?岩山~?何かすげぇ所だな~。めっちゃ荒れてるわ~。世紀末?世紀末なの?マッドなマックス?
異世界荒れまくりです。
モヒカンにトゲ付き肩パットでヒャッハーな方々を想像しながら荒涼とした岩の大地に足を踏み入れた。
道は岩壁の隙間を縫うように続いている。ダンジョン前から続いている道はここまでずっと一本道だった。
少なくともこれを辿っていけばどこか人が住むところに辿り着く、はずだ。多分。きっと。恐らく。
……恐らく。
時折強く吹く風に砂ぼこりやら小石やらを吹き付けられながら、道らしき場所をひたすらに歩いていく。
人影はさっぱり見えない。不安感半端ない。
いやしかし俺にはオプションさんがついている。
1人じゃない。1人と1球だ。
意思の疎通は出来ないけど。一方通行だけど。
途中、残していたジャーキーを噛み締めながら歩いていると、岩山の上の方をやたらでかい鳥がピーヒョロロロー、みたいな鳴き声をあげながら飛んでいるのが見えた。
トンビ?にしては…縮尺おかしくね?鷹?それにしたって結構高いとこにいるのにかなりでかいぞ?下手したら3mくらいあるんじゃないか?怖いわ~。
ペンギンナイトもそうだけど、異世界の鳥はみんなでかいのか?怖いわ~。
襲われませんようにと願いながら残ったジャーキーをポーチにしまい、上空を警戒しつつてくてく進んでいく。
すると今度は岩壁の中腹に何か動くものを発見。よくよく見ると、それは切り立った岩壁にはえている草を食む羊の様な動物だった。
ヤギにしては体毛がモコモコしてるし、角も見受けられない。
足もそんなに長くないから…多分羊だ。ラマにしちゃ首が短いしな。
5~6頭集まって足場の少ない岩壁の中腹に器用に留まり、優雅にランチをしている。
こんな荒れた土地でも生き物は生きていけるんだなぁ、と感心する。
あぁ、いかん、生命の営みに感心してる場合じゃない。
こんな物見遊山的に歩いてたら日が暮れる前に人がいる場所に辿り着けるかもわからん。先を急がねば。
こんな岩山の真ん中で野宿とか俺の生命の営みがどうなるかわからんからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
羊の様な動物の群れを見かけてから歩くことしばらく、道の先に岩壁の隙間を塞ぐように、石造りの壁が姿を現した。
壁の真ん中には大きな門が開かれていて、門の脇には大きな門が閉まった時用っぽい小さな門がある。
一目見た感じ、岩山と一体化した城壁だ。
怪物狩人のメインテーマが流れるかと思ったぜ。パパラパー♪パラララララパー♪パラパーパー♪龍を撃退するような槍はついてないけどよ。
何にせよ日が暮れる前に人の気配がある場所に辿り着けたぜ。
これで岩山の真ん中で野宿とかはまぬがれそうだ。
門に近付いていくと、門の脇に槍を手に鎧を着た人が立っているのが見えた。
うん、今回は人だ。遠目に見てだいぶ色黒だけど、紛う事なき人間だ。嘴とかついてない。ちゃんと手と足がはえてる。
あれだな。門の脇に立ってるんだから門番だな。街に入る前に「何者か?」みたいな問答する感じだな。
よし来い。がっつり自己紹介してやんぜ。天幹 真雄、30歳です!ってな。
あれ、でも若返ってるのか。どうしようかな。20歳って言っとくか。
門番の顔がはっきりと確認出来るところまで近付くと、俺の認識が間違っていたことに気付かされた。
門番の顔が狼だったからだ。
あるぇ~?紛うことなくなかった?まごってた?この人、人じゃないよ~?狼さんだよ~?色黒かと思ったら顔中毛むくじゃらだよ~?黒い毛だらけだよ~?あれ、でも体は人間さんだよ~?狼男なの?男狼なの?
おばあさんの目はどうしてそんなに大きいの?お前の姿がよく見えるようにさ。おばあさんの耳はどうしてそんなに大きいの?お前の声が良く聞こえるようにさ。おばあさんの口はどうしてそんなに大きいの?フハハハハー!お前を一飲みにするためさ!蝋人形にしてやろうか!
有名な童話と閣下が頭にフラッシュバックするほど1人混乱の極みに陥りかけていると、狼男さんがこちらに向けて手招きしているのに気づいた。
後ろを振り返って見ても誰もいない。狼男さんに視線を戻すと引き続き手招き中。
自分を指差してみると、頷く狼男さん。どうやら呼ばれているのは俺のようだ。
この状況でいきなり背を向けて逃げ出したら、確実に怪しまれる。それこそ投獄フラグだ。
ごくりと息を飲みつつ、頭からがぶりと行かれないことを願いながら近付くことにした。
「坊主。その格好は冒険者か?ダンジョンに潜っていたなら随分早いお帰りだな?」
俺の頭の先から足の先までジロジロと眺めつつ、牙が並ぶ大きな口から発せられたのは流暢な日本語。
いや多分日本語じゃない別の言葉。ペンギンナイトが話してたのと同じっぽい。
しかし日本語のように理解できる不思議な感覚。ここでも僕っ娘系神様の翻訳魔法がしっかり働いているようだ。マジファンタジー。
狼男さん自体がファンタジー。狼男とかマジ異世界。
というか俺は坊主じゃないぞ。ふさふさだぞ。
いやでも20歳くらいに若返ってるのか?そしたら見た目的には坊主に見えるのか?やったー?
「いやぁ、はい。ランタンの燃料を忘れまして。途中で火が消えたら困りますから早目に上がって来たんです」
お日様が眩しいダンジョンの外では灯りをつけておく必要もないし、燃料ももったいなかったので火を消して、腰のベルトにぶら下げていたランタンを指先で叩いて見せる。
咄嗟に出たにしては上手い嘘だと自画自賛。あの真っ暗闇の中でランタンの火が消えたらにっちもさっちもどうにもブルドッグだからな。これなら多分疑われないだろう。
ベルトのポーチ調べられたら、燃料の小瓶が見つかって一発でバレるけどな。
「ははは。とんだ間抜けがいたもんだ。それじゃあ今日の稼ぎも微々たる物だろう。門の通行料と宿代を払ったら赤字じゃないのか?」
狼男さんが大きな口を開けながら笑う。やめろよ。牙が怖いから。
「まぁ、何とか大丈夫です」
「んん?そうか。その歳でファミリアを操れる魔道士なら稼ぎ方はいくらでもあるだろうからな」
チラリと俺の背後に浮かぶオプションさんに視線を向けながらニヤリと笑う狼男さん。やめろよ。牙がマジで怖いから。
「えぇ、まぁ」
その歳で?20歳で冒険者は若いのか?魔道士?魔法使いみたいなもんか。ファンタジー用語だな。良いや、適当に話を合わせておこう。こんなところでボロを出して投獄フラグとか洒落にもならん。
「じゃあ通行料は冒険者1人で銅貨5枚だ。もちろん払えるんだろうな?」
「あぁ、はいはい」
ダンジョンの中で見知らぬ誰かの荷物から拝借した小袋を取り出す。
小袋の中から銅貨とおぼしき硬貨、大きい方の茶色いのを5枚取り出して狼男さんが差し出した手に乗せた。
銅貨5枚がどれ程の価値なのかはわからないが、とりあえず払えるものは払っておこう。
ちなみに狼男さんの手は顔と同じ色の体毛に覆われていました。ふっさふさやでふっさふさ。
あ、肉球は見えなかったな。鋭い爪は見えたけど。
「あん?ギルドカードじゃなくて現金かよ。珍しいやつだな。ひーふーみーよー…確かに。よし、通って良いぞ。ようこそマインエラの街、南区へってな」
狼男さんは手渡された銅貨を数えて腰に提げた布の袋にしまうと、半歩横にずれて道を開けてくれた。
ギルドカードって何よ。ポーチの中には入って無かったぞ。怖いわ。通って良いなら大丈夫なんだろうけど。
どうやらこの石の壁の街はマインエラと言うらしい。マインとか地雷とか埋まってそうな名前だな。南区ってことは他の区もあるのかな?北区とか東区とか。東京都かっ!
大きな門を潜ると、すぐに石造りの街が現れた。
門の前から街の中へ続く道は石畳で舗装されていて、真っ直ぐに街の奥へ続いている。
道の先にはかなり先まで建物が続いていて、道の先にも大きな壁が建っている。道の先の壁が端っこではない様子なので、思ったよりも壁の中の街は広いみたいだ。
門や壁を見たらわかるが、建築技術はなかなか発達しているようだ。
綺麗に切り出された石材がしっかりと積み重ねかれた建物が整然と建ち並んでいる。
石材の建物と道ってだけで中世ヨーロッパを彷彿とさせるよな。
しかし、どこに行ったら良いやらさっぱりである。
初めてくる街、というかこの世界自体が初めてだらけなのだ。
まず何をするべきか?
とりあえずはあれか?衣食住を整えるところからか?
そうだな。とりあえず宿だ。宿屋を探そう。
キョロキョロと辺りを見回してみるが、案内板的なものは見受けられない。観光客に不親切な街だ。俺は観光客じゃないけど。
仕方ない。門の外で退屈そうに欠伸をしている狼男さんに聞いてみよう。暇そうだし。でも欠伸はやめろよ。牙が怖いから。
「すいません。宿屋とか、民宿とか、泊まれそうなお店ってどの辺にありますか?」
「あん?宿屋?何だまだ宿を決めてなかったのか?また珍しいやつだな。予算はどのくらいだ?」
予算?ヤバい。貨幣価値何かわからないぞ。どのくらいが相場なんだ?えぇと、小袋の中は…限りがあるから…。
頑張れ脳ミソ。何か上手いこと誤魔化しつつ情報を引き出す答えを導き出すんだ。
「えぇと、か、駆け出しの冒険者が泊まれるくらいの安い宿で良いんですけど…」
うん、間違っちゃいない。俺は30のおじさん、若返って20歳の働き盛りだが、駆け出し中の駆け出しだ。マジで素人だ。
オプションさんがいなければダンジョンの中で光になってたくらいの素人だ。嘘はついてない。
「はっはっは!駆け出しの、か。若いのに身の程を知ってて感心だな坊主。駆け出しならギルドカードの取り引きを知らないのも納得だな」
狼男さんが殊更大きく口を開けて笑う。やめろよ。牙が怖いからほんとに。
というかさっきから何だい。随分と坊主坊主と気安く呼んでくれんじゃないのさ。
何か?狼男さん年上か?いや、年上なら良いけどさ。
狼男の見た目年齢とかさっぱりだからよ。何とも言えないけどさ。
「だったら門から入って左の壁沿いに進んで、3本目の通りを右に曲がれ。その通りを真っ直ぐ進んで、突き当たりの手前にある“岩壁の止まり木亭”って宿屋がおすすめだな。部屋はそんなに広くないが1泊小銀貨1枚だし、1階が飯屋にもなってるから宿に泊まれば安く飯も食えるぞ。ウォルグのクロフの紹介だって言えばちょっとくらいサービスしてくれるはずだ」
「左の壁沿いに進んで、3本目を曲がって、突き当たりの手前ですね。ありがとうございます。行ってみます。して、ウォルグのクロフとは?」
「あん?俺だよ俺。マインエラ守備兵隊所属のクロフだ。ウォルグ族ってのは顔見たらわかんだろ」
クロフって狼男さんの名前かよ。しかもウォルグ族ってダンジョン前発出所のペンギンナイトが言ってたやつだな。
なるほど、ウォルグ族は狼男、と。確かに鼻先や口が出てるわ。
「あぁ、なるほど、クロフさんですね。自分は天幹真雄といいます。またお世話になると思いますがよろしくお願いします」
とりあえず当たり障りなく自己紹介だ。丁寧に接しておけば間違いはないはずだ。
「アマミキマオ?変な名前だな」
おいぃ?人の名前を聞いていきなり変な名前だなとか礼儀がないにもほどがあんでしょうが。何なのなの、何なのなの?
「いやアマミキが名字、姓で、マオが名前でして…」
「姓持ち!?あんた貴族様かよ!?すみま…っじゃなかった!申し訳ありません!!」
名字と聞いて驚く狼男、もといクロフさん。慌てて膝を付こうとするクロフさん。
うぇっ!?何かいらん誤解が発生してないか!?ヤベェ!誤魔化せ誤魔化せ!
「い、いや!貴族とかじゃなくて、えぇと、あれです!名字っていうか、姓っていうか、屋号!うちの田舎の屋号です!どこの家の誰~みたいなのがすぐわかるようなやつです!あははー!田舎から出てきたばっかりだから間違っちゃったなー!」
見た目は子供、頭脳は大人な名探偵ばりの演技力でこの場を誤魔化すための言い訳をドーン。
その演技力に目を見開いたクロフさん。マジ刮目。
数秒の沈黙の後、赤い頭巾を被った小娘1人くらい丸飲みに出来そうな口から、ぶはぁ、と大きなため息がもれた。
「驚かすんじゃねぇよ…。寿命が5年は縮まったぜ…」
「すみませんすみません」
謝れ。ひたすら謝れ。変な誤解を生む前にうやむやにしてしまえ。
槍を杖代わりに、ヨロヨロと立ち上がるクロフさん。どうもお勤めご苦労様です。無駄な体力使わせてごめんなさい。
「あーと、じゃあアマミキが屋号な。なら名前はマオだな。だったら初めっからマオって名乗っとけよ。どこの田舎から出てきたのかしらねぇが、お前の田舎の屋号なんて言われてもわかんねぇぞ?」
「はいっ!気を付けます!マオです!よろしくお願いします!」
「あぁ、あぁ、もういい。さっさと宿でも取りに行けよ」
しっしっ、と先程の門の外で見せたのとは違う追い払うタイプの仕草をするクロフさん。お疲れですね。
ドンマイドンマイ!俺は気にしないよ!
「じゃあ失礼して…」
ドロンさせていただきます。と立ち去ろうとしたとき、布の服のポケットでじゃらりと小石が自己主張。
あ、これの使い道的なの聞きたいな。モンスターのドロップ品だから多分お金になるような気がするんだけどな。
「すみません」
「何だ!まだ何か用か!」
再びクロフさんに声をかけたら何やらご立腹のご様子。やめろよ。マジでほんとに牙が怖いから。
「す、すみません。こ、この小石はどこに持って行ったら良いでしょうか?」
布の服のポケットから小石を1つ取り出して毛むくじゃらの手に乗せてみた。
クロフさんが小石を指先につまんでまじまじと見つめると、クロフさんの目がまた驚いたように開かれる。マジ刮目。
「あん?…へぇ!小振りだが、こりゃ魔石じゃねぇか!1人でダンジョンに行った割に魔石が出るほど奥に行ったのか?命知らずだな?」
「え?いやぁ、まぁ、あははー」
あるぇ~?何かクロフさんの反応が思ってたのと違うぞー?これってありふれた物じゃないのん?何かこう、モンスター倒したらドロップして、お金に換金できるようなアイテムちゃうのん?めっちゃポッケにじゃらじゃらしてるんだけど。
どうしよう。どう誤魔化そう。
「まぁ、あれだ。よくよく考えればファミリアを出しっぱなしでウロウロ出来る駆け出しってのもおかしな話だよな。………。気にならないわけじゃねぇが、冒険者には秘密は付き物だしな。下手な詮索はやめておくぜ」
ほれ、っと魔石と呼ばれた小石を投げ返すクロフさん。何やら1人で何かに納得された様子。
よくわからんが詮索は無しって言うならありがたいので、それでお願いしますですはい。
「小さくても魔石は魔石だ。冒険者ギルドか、魔石商に持ち込めば買い取ってもらえるはずだぜ。冒険者ギルドは大通りを真っ直ぐ行って中央区に入って、中央区の大交差点を東に曲がったらすぐに見える。でかい建物だし看板が出てるからわかるだろうよ。魔石商はこの街にもいくつかあるからなぁ…俺には紹介出来るような魔石商の知り合いはいねぇし…。そうだな、高く買い取ってくれる店を自分で探してみたら良い。1人で魔石を狩れるような冒険者なんだ。それくらいは出来るだろ?」
え、出来ません。いきなり慣れない異世界コミュニケーションで商談とか難しいっしょ?クロフさんは話が通じるけど、他の人と話が通じるかわからんし。さっきのペンギンナイトみたいなのがいないとも限らんし。
あれだ、中央区とか大交差点とかよくわからないけど、冒険者ギルドってとこで普通に換金してもらおう。うん、それが良い。無難に行こう無難に。
「ありがとうございます。とりあえず冒険者ギルドに行ってみます」
「おぉ、そうしろ。一番無難だしな。ランクも上がるだろうしよ」
「はい、いろいろありがとうございました」
ランクってとこ聞き捨てならないけど、これ以上クロフさんにあーだこーだ聞くのはちょっと忍びないな。
それにこれ以上話してると取り返しがつかないボロが出そうだ。もう出てる気がしないでもないけど…。この辺で会話を切り上げて宿屋に向かおう。
「あぁ、おい、マオ」
「はぁい!」
クロフの不意討ち!マオに精神的びっくりダメージ5!
マオの残り精神力は52万9998だ。5くらいじゃびくともしないぜ!
いや、びっくりはしたけども。
「な、何でしょう?」
「ファミリアを出しっぱなしに出来るのはすげぇことだが、あんまり見せびらかす物じゃないと思うぞ?自分の手の内を晒して歩いてるような物だし、常に周りを威嚇してるように見られてもおかしくない。街中じゃいざって時以外は消しとくべきだ。下手に出しっぱなしでいると絡んでくる奴もいるだろうからよ」
え、マジで?オプションさんそんな感じの扱いなの?オプションさんマジ危険物?
「あ、はい。気を付けます。ご忠告ありがとうございます」
「まぁ、大きなお世話かもしれないけどな。じゃあな」
俺に背を向けながらヒラヒラと手を振りながら門の外に歩いていくクロフさん。何か格好いいじゃないか。ちくしょう俺もいつかあんな仕草が似合う男になったるで。
………。うん、でもオプションさんの消し方ってどうやんねん。知らんでしかし。
目の前に浮遊するオプションさんをつついてみる。が、もちろん感触はない。触れないもんな。
あれか?オプションさんゴーホームとか、オプションさん消えといて~とか思えば消えばうわああぁぁぁぁ!オプションさんが消えたあぁぁぁぁ!!
「ぎゃあぁぁぁぁ!!消えたあぁぁぁぁ!!」