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プロローグ






『やぁやぁ、天幹(あまみき) 真雄(まお)君。こんにちわ。ハロー。グーテンモルゲン。ボンジュール。ジャンボ。ナマステ。気分はどうだい?どこか具合の悪いところはある?首が痛いとか腰が痛いとかない?視界は良好?耳は聞こえる?いやー、良かった。僕は運が良いなぁ。君に出会えたことに感謝感激雨あられだよ。僕の箱庭に相応しい魂を探し続けること苦節15年6ヶ月27日11時間38分52秒81もの月日がかかったよ。他に比べたら早い方だけど長かったなぁ。長かったよ。しかしようやく見つけた。君を。そう君をだ。君みたいな有象無象の中の有象無象を探していたんだ。毒にも薬にもならないような平凡オブ平凡の君。何でもある程度出来ちゃうけど全ての事においてトップに立てるような才能もない。微妙に残念な才能の君を。しかも丁度良いタイミングで肉の器から飛び出してくれるんだもの。もはや運命としか思えないね。君もそう思うだろう?いや、混乱してそれどころじゃないよね。わかる。わかるよ、その気持ち。僕も初めて世界を任されたときはそんな気持ちだった。聞きたい?あぁ、聞きたいなら仕方ない。長くなるけどまぁ聞いてくれ。あれは今から2万飛んで374年9ヶ月12日4時間8分45秒20ほど前の話だ。僕は大いなる力に導かれて……』


よくわからない場所でよくわからない僕っ娘系な美少女にすげぇまくし立てられましたよ。

何を言ってるかわからねぇと思うが俺もよくわからないからおあいこだ。


マシンガントークが止まらない美少女から視線をはずして辺りを見回してみると、現在俺は上下左右全てが真っ白な空間にいるようだ、っておい。

おかしいな。俺は自分の部屋で寝てたはずなんだが、いつの間にこんな不思議空間にいるんだ?

拉致か監禁か。こんな精神と時の部屋みたいなところに永らくいたら気が狂いそうだな。

何か変化が欲しいな。景色とか。テレビとか。ネットとか。


『そして僕が力を振るえるようになるまでまた218年3ヶ月……んん?気が狂いそう?本当かい?精神と肉体の繋がりが不安定なのかな?徐々に慣れていくとは思うけど。万が一ってこともあるのかな?うん、でも安心して。少なくとも僕の前にいる限りは気が狂ってもすぐに治してあげるからね!え~と、どこまで話したかな?……そう、僕が力を振るえるようになるまでまた218年3ヶ月21日』


「あのぅ、ここはどこ?あなたは誰?トトロではないよね」


また長ったらしい話を始めかけた僕っ娘系な美少女に待ったをかける。

さっきから何をおっしゃっているのかさっぱりでございますよ?


『うん?トトロ?あぁ、そうだよね。いきなりだったから混乱するのも無理はないよね。でも大丈夫。僕は優しいからしっかりと説明してあげるよ。ここは『※£&#%』さ。ふふふ、聞き取れないだろう?僕と君たちとでは言語の次元が違うんだ。だから僕の言葉で言っても君には理解してもらえないと思う。仕方ないよね。僕と君たちとでは重ねてきた時間、経験、その他諸々全てが桁違いだから。うん、しかし僕は優しいから君たちの言葉を使って教えてあげよう。僕の優しさに感謝しながらよぉく聞いてね。ここは君たちの言葉を使えば『次元の狭間』って所かな。僕の箱庭にも君たちの世界にも属さない僕のプライベートスペースさ』


なんだろうこの僕っ娘系美少女。とんでもな事をおっしゃり始めやがったぜ。

何?ファンタジーなの?いや、頭の中お花畑なの?


『お花畑?花が好きなのかい?ふむ、人は見た目によらないね。意外性があるっていうのは良いことだと思うよ僕は。じゃあ君好みにちょっと塗り替えてみようか』


僕っ娘系美少女がパチンと指を鳴らすと、辺りが一瞬にして色とりどりの花が咲き乱れる花畑になった。


「わぁ、ファンタジー」


『あれ?あまり感動してくれないんだね?感情プロセスの構成は完璧なはずなんだけどな?んー、本人の性格の関係かな?でもそれを弄っちゃうと観察する楽しみも無くなっちゃうしなぁ』


「いや、何て言うかあんまり実感ないからね。で、何?箱庭?次元の狭間?マンガとか小説によく有りがちな『これから違う世界に行ってもらいます!』みたいな流れ?」


『あれっ?未来予知なんて特殊能力持ってたの?不味いな。有象無象の中の有象無象と思ってたら厄介な特殊能力持ちかぁ。そこだけは弄る?うぅん、しかし生まれもった能力を弄っちゃうとどこで不具合が起きるかわからないしな。と言うかよく僕にわからないように特殊能力を隠しておけたね。凄いな。有象無象の中の有象無象と呼べなくなっちゃうじゃないか。どうしようかな。選び直すとなるとまた時間がかかるし。うぅん』


何かさっきから有象無象とか弄るとか、聞き捨てならないセリフばっかり聞こえていらっしゃいます。

ブツブツと呟きまくる僕っ娘系美少女に再度コンタクトだ。


「いや、そんな特殊能力なんかないわけで。何て言うかゲーム脳の賜物と言うか、マンガとか小説の読みすぎと言うか。それよりあなたは誰なの?何となく想像はつくけど、『神様』とか言い出しちゃったりします?」


『おぉ!?そこまで解っちゃうの?え、ホントに特殊能力じゃないの?えー。僕は神様だよ!って言って驚かそうと思ってたのになぁ。やっぱりあの星が特異点すぎるからかなぁ。あれだけの別次元の情報が混ざりあってるのに、世界の均衡が崩れないって言うのは奇跡としか言えないよね。普通なら別次元からあっという間に侵食されて混ざりあっちゃうのに。そんな中でも更に特異点の集中した国で育ってきたんだもんな。特殊能力じゃなくても第六感的な力が育っても仕方ないか。うーん、そのくらいなら大丈夫かな。多少はイレギュラーがあったほうが面白いだろうしね。オッケーオッケー。許容範囲だね。よし、じゃあ早速行ってもらおうか』


1人何かに納得した様子の僕っ娘系美少女はやおら空中に浮かび上がった半透明なキーボードのような物をポチポチしだした。

待て待て、何も解決してない。神様チックなセリフはあったけど、何1つ説明してもらってない。

こんな状況で違う世界に行ってらっしゃい、とか言われても詰むわ。待て待て。


「ちょっと待った。あんたはホントに神様なの?」


『そだよー。君たちの言葉を使えばね。まぁ、神様の中でも中堅ってとこかな。君たちの世界を管理してるのは別の神様だけどね。あんなめんどくさい星のある世界をよく管理できるなと、感心するよ。ちょっと遅いけど感謝しておいたほうが良いと思うよ~。その内ストレスでハゲちゃうはずだから。いや元から薄かったけど君らの星のせいで前線の後退が明らかに早まったよね。あれには笑ったな~。神様でも自分のことはどうにも出来ないっていうね。まぁ、仕方ないよね。あれは仕方ない』


やはり神様か。で、この後俺はどうなるんだ?と言うか俺は今どういう状況なんだ?こういう場合は基本……。おい待てまさか。


「つかぬことを聞きますけど」


『んー?何だい?』


「俺は今生きてるのでしょうか?」


『あれ?言わなかった?死んでるよ。30年9ヶ月6日21時間57分32秒88で天寿を全うして、君という人生に幕を下ろしたよ。事故とか事件じゃなく、真っ当な寿命だね。眠りながら安らかに永久の眠りについたんだ。良かったね苦しまなくて。良かったねぴんぴんコロリってやつに近いよね』


あっさりとおっしゃられる僕っ娘系神様。

死んでた~。やっぱり死んでた~。30で孤独死か~。あ~でも結婚もしてないしな。良かったっちゃ良かったか~。悲しんでくれる家族も親族もいないし、将来どうこうってのも無いしな。うんまぁ、良いか。仕方ない。切り替えてこう。


『うーん、やっぱりちょっとずれてるのかな?普通の有象無象だったら死んでた事にショックを受けたりするんだけどな?やっぱり特異点の中で生まれ育つと独特な感性に育つのかな?うーん、要観察事項だな。君らの星の神にも伝えとこう。面白い魂が育ってるはずだよ、っと』


「いや、死んだことは確かにショックだけど、異世界で冒険とか男の子なら1度は憧れるイベントだからね。妄想はよくしてたし。元々長生きするつもりもなかったし、丁度良いって気分かな。これは生まれもったもんじゃないかな」


『あ、そう。生まれもった気質ならそれで良いよ。じゃあちゃちゃっと説明しちゃおうかな。君には今から僕の創った箱庭、えーと君たちの言葉を使えば異世界ってとこかな?に行ってもらいます。この世界は機械文明じゃなくて、魔法文明が発達した世界で、魔力と呼ばれる力が有りとあらゆる物質に影響を与えている世界なんだ。剣と魔法の世界ってやつだね。だから魔力を持ってない元の肉の器は持って行けないので、向こうに既に用意してあるよ。すぐに死んでもらっても困るから、君の人生で一番生きの良い時期の体を作っておいた。20歳くらいかな?あ、この体の寿命は30年で終わらないから安心してね。とは言うものの結局現地の普通の人間の体だから斬られりゃ死ぬし、焼かれりゃ死ぬし、水に沈めば溺れて死ぬ。魔物って呼ばれる危険な生き物もいるから、無茶するのはお勧めしないね。それから…』


待て待て待て待て。聞き捨てならない。一般ピーポーのまま放り出されても生きていけるわけないだろ。

それこそ特殊能力。何かしらの能力を貰わねば。


「はい、神様質問」


『おや、何だい?まだ説明の途中だけど』


「こういう場合は何か便利な力みたいなのが貰えるんじゃないんですか?」


『えーと?特殊能力的な?』


「そうそう」


『あぁ、うん。一応自分の身を守れる程度の能力を授けて行ってもらう予定だよ?その説明をしようとしてたことなんだけど。やはり予知能力?』


「予知能力なんかないってば。それなら安心だ。自分の身を守れるだけで充分だよ」


『ふむ。やっぱり今までの有象無象とちょっと違うんだね。これまで僕が箱庭に送ろうとした人間はみんな「俺が最強になれる力をよこせ」とか「出会う異性を全て惚れさせる力をください」とか「異世界系イケメンハーレムひゃっほーい」とか私利私欲が強かったけど。君はそう言うのはないんだね』


「俺は、俺がただただのんびりゆっくり生きられればそれで良いよ。身に余る力は災いしか呼び寄せないってばあちゃんが言ってた」


『良いお婆様だね』


「漫画の中のだけどね」


『異次元の影響じゃないか。こんなとこにも影響が。まぁ、良いか。じゃあ君にはこの能力を授けよう』


僕っ娘系神様がこちらに何かを送り出すような仕草をすると、何もないはずの空間からほわりと光の球が現れた。

それは俺の周りを1周すると、ゆっくりと消えていった。


何これ凄い。めっちゃファンタジーやんけ。いや、今俺がここにいる状況全てがファンタジーか。うん、ファンタジー。


『どんな能力かは自分で確かめてみてよ。一応、護身のための能力だけど、いろいろ工夫したり、何かしらのきっかけで進化するかもしれないから頑張って育ててあげてね。それから君の前に、君の星からも他の世界からも箱庭に行っている人達がいるから、もし出会ったら仲良くするなり殺しあうなりしてみると良いと思うな』


「殺しあいになるならなるべく出会いたくないっすわ」


『まぁ、君がどこに飛ばされるか僕にもわからないから会えるかはわからないし、箱庭に行って数時間で死んだ人もいるから、死ぬ前に出会えたら良いね。さて、能力の譲渡が終わった後はと。箱庭の中の言葉とか文字については自動的に翻訳されるように脳に魔法がかけてあるから安心してね。これは「言葉が通じない怪しいやつ。他国のスパイか!斬ってしまえ!『ズバー』」で死んじゃった人もいるから最低限のサービスだね』


何というか荒々しい世界だな。

というかその箱庭とやらに行って俺は何をしたら良いんだろう?


『別に何もしなくても良いよ。そして何をしても良い。魔物を駆逐する勇者になっても良いし。田舎で気立ての良い娘さんをもらってのんびり暮らすのも良い。食うに困って盗賊になっても良い。街で商売を始めても良い。山奥でひっそりと暮らしたって良い。君という主人公がどう生きるも自由だよ。僕はただそれを観察したいだけだから』


「そうか。じゃああんまり楽しませられはしないかもな。俺、向上心無いから」


『それもそれで良いさ。どんな物語でも僕は楽しめるから』


「さいですか」


『あと、この次元の狭間は一時的に作り出した空間だから、君が箱庭に降り立った後は、君からのコンタクトは不可能になる。僕からのコンタクトは取れるけどするつもりはほぼないから、神様からって言うのは神様詐欺だから気を付けて。僕は一応神様として教会とかに奉られてたりするけど、箱庭に行ってからの僕の手助けとかは期待しないでね。さて。説明はこんなものかな。じゃあそろそろ旅立ちの時だ。短い間だったけど君みたいな魂と会話できて楽しかったよ。今回は元気に長生きすることを祈ってるよ』


「あ、はい。頑張ります」


『うん。じゃあ頑張って僕の知的好奇心を満たす働きを存分に行ってくれたまえよ。では、さようなら、天幹 真雄』



僕っ娘系神様の別れの言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。



こうして俺の第2の人生が、僕っ娘系神様の箱庭という異世界で始まることになった。

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