アイ
夕葉がかきました。
…消えちゃえばいいのに。
ふーっとため息をつくと、その空気がキラキラと輝きはじめた。
目を疑う間も無く、そのキラキラが人の形になった。
なにこれ?怪奇現象?
「おはよっ!」
明るく声を発した存在は、私と同じ顔をしていた。
「え?……なんなんですか?」
聞いてみた声は驚いていないみたいに聞こえる。サイボーグ岟里。影で私がそう言われているのを知っている。滅多に笑わないとか多分そんな要因が重なって。笑えない、気の利いた事も言えない。ただ、与えられたことをこなすだけ。そんな自分が嫌いだった。
「そうなんだ!?でも私は私が大好きだよ。」
平然と私の頭の中の言葉に返してくる、元・キラキラ。
「だから、誰なんですか?あなた」
「私は私だよ!岟里 未彩。私は君で、君は私!君が君を嫌いなら、私が¨表¨に出るよ?」
目の前の私と同じ顔した元キラキラは私?ワケがわからない。
「まぁ、分かんないと思うよ!そんなわけで今日は私が代わりに高校行ってあげるよ。君は¨裏¨で見ててね!なにか気づくかもしれないよ?」
そんな意味深な言葉を聞いたのを 最後にスゥッと意識がブラックアウトした。
気がつくと、¨私¨は学校の下駄箱にきていた。夢の中にいるみたいに、私の意思で動くことが出来なかった。
「おはよ!千波!」
「あ、おはよー。岟里さん!どうしたの今日。なんか感じ違うね」
「うん!ちょっとイメチェンしてみた」
これ、話しているのは私じゃない。口調からして元・キラキラ。
(うん!大正解☆)
脳に直接、響くような声。
この調子で元・キラキラが一日私になって喋っていた。たまに、話しかけられる。その話によると元・キラキラはずっと私の中で見ていたらしい。真っ暗な部屋の中から明るい外の世界で私が生きているのを。だから、元・キラキラも私……いや、元・キラキラが私?
ずっと、このままだったら。きっとこれが理想の¨私¨。
そのはずなのに何でちょっと切ないんだろう?
少しずつ霞はじめた視界でぼんやりと教室を眺める。
そろそろ、4時間目が終わって昼休みみたいだ。
「ナツ!お昼食べよう〜。お腹空いちゃった。」
¨私¨がいつも一緒に昼食を食べているナツに声をかける。
ナツは読書が好きで物静か。いつも穏やかに笑ってる。私はナツの隣でのんびりと時間を過ごすのが好きだった。
¨ 私¨に話を合わせながら、ナツは裏庭の木陰へと移動した。いつもならここでレジャーシートをひいて、お弁当を食べる。でも今日は何故かナツが座る様子がない。
「……未彩?どうしたの、今日。」
「なんかイメチェンしたいなーって思って!どう??」
「どうって、貴女は……誰?」
「私は私だよ!岟里 未彩」
「違う……未彩は一見、無表情だけどちゃんと考えてる。感情だってあった。けど、今日はなんか違う。別人だよ。」
驚いた。ぼやけてた視界が急にクリアになった。
(なーんだ、ちゃんと君を見てくれる人、いたじゃん。私はまた¨裏¨に戻るよ!私も私のことちゃんと見てるから。忘れないでね!)
「ナツ。有難う。」
頬を流れる涙は気のせいじゃなくて。もう会えないかもしれない、もう一人の私の私にも(有難う)。伝わってるよね?
ネタバレになるのでキーワードにはかかなかったのですがキーワードのひとつは多重人格です。




