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勇者一行決裂の危機
勇者一行、ガイル街道を抜け、西の都スーファンに到着。
途中、白魔術師フィーリアと黒魔術師テラの口論が始まる。勇者がそれを治めるも、一行には緊張したムードが漂っていた。
先日から、黒魔術師テラの奇行が目立つ。何も起こらなければいいが。
勇者一行に、神のご加護を
ユーセリア報道部
「もう、テラちゃん、我がまま言わないの!!」
「…………」
「無視しないの!!」
「…だって」
「なに?」
「ガイルっていったらワンワン牧場のミルクプリンなのに、素通りしようとするんだもん」
「ミルクプリンが有名なのは知っているけど、今行く必要はないじゃない」
「でも、ワンワン牧場でしか買えないんだよ」
「それも知っているわ。天候だって崩れかけていたし、勇者様も騎士様も甘いものはあまり召し上がらないわ。私たちにつき合わせるのはよくないわよ」
「……うん」
「…そんな顔しないでよ。この宿の果実100%ジュースはおいしかったでしょ」
「……。うん!!すごいおいしかった!!なんで知っていたの」
「フフ、じゃりゃんの今月号スーファン地域買ったの」
「え、みせて!!」
「ミルクプリンも絶品だけど、この地域のフルーツは良質で有名なんだって」
「ほうほう」
「そういえば、テラちゃん。こっそり隠れて果実酒かっていたでしょ」
「お、気づかれていましたか」
「一人で楽しもうなんて許しませんよ」
「仕方ないなぁ、あけちゃおう」
コンコン
「…………」
「…誰?」
「僕です。アリウスです。夜分遅くに悪いんだけど、あけてもらえるかな」
「…はい。(テラちゃん、ローブを)」
「(うん)」
「…どうなさいました?勇者様」
「これ、地元の人から貰ったんだけど、フィーリアとテラ殿で食べてもらえるかな?」
「え?これは、ミルクプリン!!」
「うん。有名なものみたいなんだけど、僕とウィードは甘いのは苦手だから」
「いいんですの?」
「ああ。二人で食べてくれ。じゃあ、夜遅くにごめんね、お休み」
「はい、お休みなさいませ」
「……」
「て、テラちゃん、よかったじゃない!!」
「う、うん!!」
「泣くことないじゃない。ほらあけるわよ」
「うわあ、プルプルだよ」
「本当、いい香りがする」
「それじゃいただきます」
「はい、召し上がれ」
「うわぁ、口がとろける」
「あら、おいしいわ…そういえば、勇者様なんで服がぬれていらしたんでしょう」