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勇者一行は、港町ユーセリアに到着。
勇者アリウスと騎士ウィードは装備を整え、白魔術師フィーリアは道具の買いだしをし、黒魔術師テラは裏山に入っていった。その後、食堂で食事をし、宿屋リーフにて一泊。
勇者一行、問題なく旅を続けている。
しかし、黒魔導師テラが裏山で何をしていたのかは謎である。黒いローブに身を包み、顔すら見せない男に不安がよぎるのはわれらだけであろうか。
勇者様の旅に神の加護を
ユーセリア報道部
「もう、テラちゃんどこ行ってたのよ」
「ごめん。フィーリアちゃん。でも、みちゃったんだもん」
「なにを?」
「ツチノコ!!」
「そんなの見間違いか、目の錯覚に決まっているわよ」
「そう言うと思って、念写したのがあるの、ほら」
「……!!」
「ローブが足に引っかかっちゃって、取り逃がしちゃったんだよ」
「そんな格好しなきゃいいのに」
「仕方ないよ、黒魔術としての制約だもん。顔も魔術を極めたもの以外には、心に決めた人しか見せちゃだめなんだよ」
「え。私はいいの?」
「だって、白魔術師でフィーリアちゃん以上の人は見たことないし。それに友達だしね」
「クスッ、あらうれしい」
「でも、顔隠すのはわかるけど、声まで変えるのはどうかと思うわ」
「黒魔術師って言ったら大体老人か男って想像するからね、そう思わせておいた方が安全なんだ」
「勇者様と騎士様にまで隠す必要はないんじゃないかしら」
「うーん、一応慣習だし。…それに、私が性別隠しているぐらいで何かが変わるわけじゃないよ」
「…そう?」
「うん。今だって二人とも私たちをかばいながら戦ってくれているし、歩くペースだって基本的には私たちに合わせているもの。何も問題ないよ」
「そうかしら?問題あると思うわ」
「何が?」
「テラちゃんの気持ちとか」
「!!!」
「急にテラちゃんがいなくなって勇者様も心配してらしたわよ」
「え」
「テラちゃんったら真っ赤になってかわいい!!」
「ち、違うよ」
「とにかく、勇者様もおっしゃっていたけど、急にいなくなるのはダメ。誰かに言ってから行動すること」
「はい」