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Chain80 妖しいオンナの登場


 べライラル・デ・コワのオープニングパーティーが終わって、帰国した俺を待っていたのは再び俺の傍から離れる君という現実だった





 「今日、俺の幼馴染みと会ってくれ!」


 アメリカから無事に帰国してきて数日経った今、突然俺たちの教室に来たかと思うと渉からの用件に俺と君は更に唖然とする。

 「はあっ?」

 先に口を開いた君は訳が分からないといった顔を見せている。それは俺も同じ……何をどうしたら俺たちが全く知らない渉の幼馴染みに会わなければならないのか。会って何がしたいのかも分からないし……

 面倒くさそうにしている俺たちを前に、渉は両手を合わせて前に出すと

 「いいから、会ってやって! そしてアイツと友達になって欲しいんだ」

 「友達って、その人友達いないの?」

 男か女かも分からない相手に対して失礼だが、それでも俺は渉に尋ねると渉は手を振って否定を表す。

 「そうじゃないんだけど……いや、そうなのかも。ちょっと、色々あってな」

 そう言って渉は俺の方をチラッと見る。そんな渉の何かしらのサインに気付いた俺は、君の肩を叩く。

 「まぁ、いいんじゃない? 渉の幼馴染みだ、悪い奴じゃないよ」

 君にそう言って説得すると、少し考えてから君も頷く。



 「……で、どうして俺の方を見たんだ?」

 話しにくい事なのかもしれないと思って、俺は君を置いて渉を屋上に連れて事情を尋ねる。さっきの視線からして何も無いはずが無いと思った俺に対して渉は今まであまり見せなかった真剣な表情になる。

 「うん、そいつは蓮子って言うんだけどちょっと過去に辛い事があって感情が欠けてしまっているんだよ」

 蓮子……オンナ! そこでまず自分の中で合格サインを出すと、そのまま渉の話を聞く。

 「信じていた相手に手酷く裏切られて、俺や俺の家族に対しては普通なんだけどその他の人間に対してはまだ警戒しているのか心を許していないんだよ」

 淡々と話す渉の言葉に俺は悟った。


 『コイツ、その蓮子チャンが好きなんだ』


 いくら幼馴染みでも、そこまでは心配しないぞ? 俺や君に必死になって友達になってくれと頼むくらいだ、相当大事な存在なんだな。

 「だから、お前や夏海にあいつと友達になってほしいんだ」

 滅多にしない渉の頼みごとを、俺は断る理由も無かった。


 ――――


 そして、待ち合わせの場所でもある兄貴の店“NRN”に遅れて合流した俺の前に居たのは、渉の知り合いとは思えない程の綺麗な女性だった。

 「萩原蓮子です。よろしくお願いします」

 「蓮子チャンね、よろしく」

 丁寧に挨拶してくれる蓮子チャンだったが、確かに渉の言うとおりどこか人を寄せ付けない雰囲気を感じる。君は何も気付かず、そんな蓮子チャンに声を掛けていたが。

 渉も相当この子を大切に思っているのか、視線を彼女から逸らす事が無い。


 し・か・し……


 「……」

 気のせいだろうか、いや気のせいではないと思います。ここまでされたら……ねえ?

 そんな大切にされている蓮子チャンの視線がさっきからずっとこっちに向けられているのですが……

 そんな彼女に気付かないフリをしながらも、俺は四人で様々な会話を楽しんだ。しかし、そんな中でも、君にはあの男から連絡が絶えることが無かった。

 携帯を持って去っていく君を見た後、再び渉たちの方を振り返ったときに彼女と目が合ってしまう。何かを言いたげなその視線……もしかして何か気付かれた?


 そして、君が帰って来てからしばらくして今夜はお開きにする事にした。乗ってきた単車に君を乗せて家まで送ると、そのまま自宅へ戻るがそれと同時に携帯の着信音が鳴る。

 「……誰だっけ?」

 ディスプレイに照らされた見覚えの無い携帯番号を見ながら考えるが、きっと飲んでいた時に適当に教えた時のものだろうと思い通話ボタンを押す。

 「はい……」


 ―――――


 「嬉しい〜! 琉依とこうして一緒に過ごせるなんてぇ」

 必要以上にべったりとくっつく彼女に、俺は少々引き気味になりながらも彼女を連れて歩き始める。本当は君の家に行って過ごそうかと思っていたのだが、そんな俺よりも先にあの男が君の家を訪れていた。

 何か穴が開いたように虚しくなった俺は、それを埋める訳でもないけれど仕方ないという意味でこうして彼女と過ごす事にした。

 「それでねぇ〜」

 さっきから止む事無く話し続ける彼女にうんざりしながらも、俺は笑顔を見せていたその時、公園の方を歩いている見覚えのある女性……

 「ちょっと、琉依?」

 突然別の方へ歩き出した俺を呼び止める彼女の声を無視して、その女性の方へ向かうと涙を見せている蓮子チャンだった。

 「どうして、泣いているの?」

 俺の呼びかけにやや驚いてこちらを振り返る蓮子チャン。店の前で渉と一緒に別れたから、アイツと一緒に居ると思っていたから俺も意外な場所で再会した事に驚く。しかし、それでも俺はすぐに笑みを浮かべると


 「また会ったね、蓮子チャン」


 その時、俺はこの渉の幼馴染みに対して何か訳ありな女性だと感じ始めた。



 こんにちは、山口です。

 やっと蓮子を登場させることが出来ました。高校編もそろそろ終わりを迎える予定です。これからもどうぞよろしくお願い致します。

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