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Chain66 新たなる事件の前触れ


 こうして、俺の初めての恋は終わった……




 「おーい、夏海!」

 「夏海ちゃん!」


 「……」


 二学期も始まって昼休みを屋上で過ごしていた俺や渉、君に梓だったが……

 さっきから君がどこかの世界に行っているのか、ボーっとしている回数が増えていた。そして今もまた、さっきから渉と梓がこうして呼んでいるのにも拘らず君は遠い所を見てはボーっとしている。

 「ダメだこりゃ、またコイツ魂が抜けているよ」

 「最近なんか多いよね。何か悩みでもあるんじゃないかな〜」

 渉と梓の会話を、俺は寝転んで雑誌を見ながら聞いている。視線を君のほうへ移すと、そんな会話も聞こえていないのかポケ〜ッとしている君がいた。

 「ったく、仕方がねぇな〜」

 そう言いながら俺は寝転んでいた状態から立ち上がると、持っていた雑誌を軽く丸めて君の方へ近付く。


 スパ――ンッ


 「琉依!」

 「お、お前なんて事を!」

 雑誌で殴られた痛みで地面にのたうち回っている君を背にして二人を見ると、突然の俺の行為に驚いては顔面蒼白になって俺に絶叫している。

 そしてそんな君の傍に梓が近付いて殴られた箇所をさすっていた。

 「おーい、夏海。スッキリしたか〜?」

 「……おかげさまで」

 頭を押さえている君は俺の方を睨みながら答える。しかし、君がこうしてボーっとしているのは最初は少なかったのが、日が経つごとに増えていっている。

 一体、何を考えているのか……。

 「ねぇ、夏海ちゃん。最近、何か様子がおかしいけれど何かあったの?」

 「えっ!? い、いや何でも無いよ!」

 何でも無い事あるか……恐らく俺だけではなく、渉と梓も同じ事を思っているに違いない。その慌てたような答えは、軽く俺たちの疑惑を増幅させるだけだぞ。

 けれど、君は少し何か考えると梓の腕を掴んで俺たちから離れた所まで行くと、梓に何かを耳打ちしている。


 「何だ〜? 夏海の奴、俺たちには言えないことなのか?」

 「あぁ、きっとあの日じゃない?」

 「なるほど……」

 二人の会話を勝手に解釈して納得すると、俺たちは昼飯を食う事を再開した。そんな中、再びチラッと君のほうを見ると、君が言った言葉に対して梓の驚きながらも笑みを浮かべる表情が映った。

 あれ? あの日じゃないのか? まあ、女だけで話したい内容かも知れないな。そう思いながら弁当を食っていた俺や渉の元に、何か嬉しそうな表情をしながら二人は戻ってきた。

 「おお? 何だ、嬉しそうな顔して。何かいい事でもあったのか?」

 二人の様子に気が付いた渉がそう尋ねるが、二人は顔を見合わせると再び笑顔になって

 「秘密〜!」

 口に指を当てて一緒に答えていた。秘密〜って、まったくガキじゃないんだから。でも、何かあったのにそれを俺には内緒で梓に言うなんて……何だか幼馴染みとして寂しい気もする。

 俺は何でも君に打ち明けていたのになぁ……と言っても、ほとんどは内緒にしていたのがバレただけなのだが。

 それでも君が俺に打ち明けないなんて……

 「やっぱり、あの日……?」


 バキッ!


 「何言ってんの、このバカ!」

 以前よりもなかなかいいパンチを喰らわせた後、君は顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。そんな君の隣で爆笑している渉と、君以上に顔を真っ赤にさせて困惑した表情を見せる梓だった。


 ――――


 「でも、ホント。最近、何だかボーっとしている回数が多いですよ?」

 「えっ、そう? そんな事ないよ」

 いや、あるから言っているのだけれどね。自宅に帰った俺の言葉に君は否定するが、君が思っている以上に周りは俺と同じ事を思っていますよ。

 「そして、今もほら……」

 そう言って君の隣を指差す先には、いつかの時と同じく大惨事になっている本日の夕飯が無残な姿になっていた。

 「えっ? って、きゃああっ!」

 そんな……これは何だろ? とりあえず炭化した何かを見た君は、悲鳴を上げて慌てて火を消して換気扇を回していた。

 全く……夕飯を炭化させるほどボーっとしているなんて、一体何を考え込んでいるのか。て言うか、考え事するのはいいけれどもせめて嗅覚まで麻痺させるなよな。これで店屋物になるのは何回目か……。慌てて鍋を洗っている君の隣で、俺は店屋物のパンフレットを見ていた。

 「あ〜あ、君は何か? 俺の家を煙だらけにするのが日課なのですか?」

 煙にむせて咳をしてから尋ねると、焦げ付いた鍋を洗いながら君は何度も謝っていた。

 「でも、何か悩みがあるのならちゃんと言えよ? 俺に言えないなら兄貴でもいいから」

 窓を開けて戻ってきてから言うと、君は笑顔で頷いていたがそれでもその“悩み”を俺に打ち明ける事はなかった。

 まぁ、俺には言いにくい事なのかなとその時は思っていたのだが、それからしばらくもしない内に……


 嫌でも俺はそれを思い知る事となった……




 こんにちは、山口です。今回の夏海の変化ですが、原因は何かは皆様も大体予想ついていますよね? これから琉依がそれを知る事となり、やがて……


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