Chain00 ロンドンにて……3
今回も、25歳現在のロンドンでの琉依の話です。
『ルーイー! 今からメシ食いに行くけど、お前も行かない?』
過去の事を思い返している俺は、リカルドの声によってそれは一瞬で閉じてしまった。
『う〜ん、じゃあ行こうかな』
ベッドから降りると、俺はジャケットを持って部屋を出る。
俺たちの家から少し歩いた所には飲食店がたくさん並んでいたが、俺とリカルドは決まって同じところでしか食事をしなかった。
もちろん、今日もその店に入っていく。
『いらっしゃい、好きな所に座って!』
その理由が、ここの店主でもあるこのおばさんだった。
これまで様々な店に入った事はあるが、その度に客よりも従業員が悲鳴に近い声を上げながらリカルドや俺の席に来ては離れようとしない。仕事そっちのけでいる彼女たちには、仕事を常に意識している俺たちにとっては何の魅力も感じない。
その繰り返しの果てにやって来たこの店は、他の店に比べると華やかさこそは少ないが落ち着いた雰囲気だし従業員もしっかりと仕事をしていて俺たちの事を知っていても何も声を掛けてきたりはしない。
『モデル』としてではなく、一人の客として扱ってくれるから俺たちも此処へ通うようになっていた。
その中でも、このおばさんはそんな常連でもある俺たちの母親的存在でもあり、たまにサービスしてくれたり話も聞いてくれる。
『メラニーさん、今日も綺麗だね〜』
『リック! それ以上の褒め言葉はもう出ないのかい?』
そんな会話を聞きながら、俺とリカルドは隅の方に座った。
『リカルド、俺ってさ酷い男だと思う?』
しばらくして出された料理を口にしながら、俺は向かいに座るリカルドに尋ねる。リカルドはそんな俺の顔を見ると、首を縦に振りながら
『思う、思う! お前のせいで何人のモデルが泣いてきたか』
それは俺のせいではないし……。泣かせたって、ただ想いを伝えられたから丁重に断っただけじゃないか。
『リカルドってさ、もしセフレが居てもその彼女自身を愛する事って出来る?』
『はぁっ?』
さっきから訳のわからない質問ばかりをする俺に対して、リカルドはついに持っていたフォークを置いた。
『そんなの出来ないに決まっているだろ? それに俺は愛していない女を抱く事なんて出来ませんが』
だからリカルドは彼女一筋って訳だ。不器用なのか一途なのか、昔君にキスをした事くらいしか俺は知らない。
『そっか〜。じゃあ俺は、やっぱり最低な奴なんだな〜』
君の体に快楽を求め続けて愛しく思えても、君自身はどうでも良かった俺は今では考えられないくらい最低な男だったんだな。
まぁ、それは今でもそうなのかも知れないけれど……。
『あの時、俺ってホントはどう思っていたんだろうなぁ』
中途半端な感情が俺たちの間に隙間を作り、そこへ様々な出来事が入り込んでいってはその距離も徐々に離れていったんだっけ。
けれど、最初にその隙間を広めたのは……俺
こんにちは、山口です。
前回の予告で高校編に戻ると書いていたのに、再び25歳現代編に戻ってしまいました。次回からこそは高校編に戻りますので、どうぞよろしくお願い致します!