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Chain27 撮影の後のお楽しみはベッドの中



 シオンは誰かを連想させるから、本当に苦手だった








 「それじゃあ、各自部屋に行ってから十三時にロビーに集合!」


 そう言うと、スタッフの人は部屋のキーを渡していき解散となった。俺は君の荷物を手にすると、そのままエレベーターに向かう。

 「自分で持つのに〜」

 「そう言うけれど、本当はそんな気なんか全く無いくせに」

 全く心にも無い事を言う君に、俺はそう言うと君は舌を少し出しながら笑って見せた。まぁ、これが俺ではなくて他の男共だったら今の仕草はかなりクルんだろうけど……。

 エレベーターに乗って八階のボタンを押すと、扉は閉まって完全な密室状態。そうなると、不思議と俺たちは会話も無くただシンと静まり返ってしまうのだ。


 「わぁっ、綺麗〜! 見て〜琉依、海がかなり綺麗だよ!」

 部屋に入って真っ先に見えた景色に、君は感動しているのか大きな声をあげて気持ちを吐き出していた。俺は飛行機の中であまり眠れなかったせいもあってか、そのまま君に何も言う事無くベッドへと倒れこんで目を瞑る。

 「えっ? ち、ちょっと琉依!」

 それが不満らしく、君は慌ててこちらへ来ては俺を起こそうと必死になっている。でも、今は本当に眠たいからそっとしておいて欲しいのが本音なのですが……

 「あのね、そんなにしたいなら今夜いっぱいしてあげるから……今は寝させ……」


 ボスッ!


 「一生寝てろ! まったく、何かあればすぐソッチの話に変えるんだから!」

 俺が言い終わる前に君は思い切り枕を俺の顔面にぶつけると、そのままテラスへと出て行ってしまった。そんな君に、俺は追いかけて謝る事無くそのまま眠りについてしまった。


 ――――


 「よっしゃ! それじゃあ、乗りますよ!」

 しばらくの休息後、俺たちはロビーに集合してプライベートビーチへ移動して撮影を始める事にした。プライベートビーチと言っても、ホテルの所有するものだから俺たちのほかにも観光客が多く集まっていた。

 そして、天候に恵まれた今日はマリンスポーツから撮影すると言う事で、こうして俺たち三人はバナナボートにまたがっていた。

 『俺は夏海と一緒が良かったのになぁ……』

 『それは後で一緒に楽しみなよ!』

 一番後ろで呟くシオンに、アレクはそう言った。俺はそんな二人の会話など無視して一番前で、スタートするのを今か今かと待っていた。

 『だってさ……って、おわぁぁぁぁ!』

 シオンはまだ何か言いたげだったが、急発進したボートに思わず驚いて絶叫している。アレクと俺は海中に落ちないようにと、必死につかまりながらもそのスリルを楽しんでいた。

 そんな三人を暁生さんがレンズに収めていく。君はというと、その現場にはいなくて買い物をしに出かけていた。

 「次は俺、ダイビングがしたい!」

 バナナボートを楽しんだ俺は早速次の事を考えていたが、隣ではシオンがまだ足元をふらつかせていた。

 「次はなぁ、ダイビングじゃなくてパラセーリングなんだけどね」

 暁生さんはそう言うと、中型の船の方を指している。

 「マジで? いい! 俺、そっちで十分いい!」

 前から雑誌等で知っていたパラセーリングが出来る事に、俺はかなりテンションを上げ始めていた。そしてアレクとさっさと船に乗り込んで、シオンもまたため息をつきながら遅れて乗り込んできた。

 『あ〜、これが仕事じゃなかったら完全に吐いていたわ』

 少々顔を蒼くさせながらシオンは呟いていた。もともとお坊ちゃん育ちの彼には、あまりアウトドアには向いていないらしくさっきからずっとため息を見せていた。

 それに比べて俺とアレクは、雑誌の企画と言う事を忘れてかなりはしゃいでいた。


 ――――


 「ふ〜ん、そんな事があったんだ〜。シオンも大変だったね」

 撮影も無事に終わって夕食を済ませてから再び君と部屋に戻って会話をする。君はそんな俺の話を、テレビを見ながら聞いていた。

 「まったく、どうしてスタッフもこの企画にシオンを入れたかわかんないよ」

 彼がこういう事は苦手だって事くらいは事前に分かっていた筈だし、他にもそういった事が好きなモデルくらいいただろ?

 やはりそれは、彼がこの雑誌で上位の人気を誇るモデルだからだろうかな……。それはそれでライバル意識を持ってしまうけれど、今回の件で彼にこんな弱点があったと言う事を知る事ができ思わず得した気分にもなったけどね。

 「じゃあ、明日はいっぱい美味しいものを食べるんでしょ? もう寝ましょうか」

 「そうだね、明日も早いし寝ましょう〜!」


 ……


 「……で、アンタはどこに入ってきているの?」

 「寝るにはベッドが必要でしょう?」

 「アンタのベッドはあっち……」

 そう言って君は隣のベッドを指しては追い出そうとしている。それでも必死になって落ちないように、俺は君にしがみついていた。

 「ちょっと! いい加減にしなさいよ!」

 「だって、今夜しようって言ったじゃん!」

 これが安アパートなら確実に隣りの部屋にも聞こえるであろう大きな声で争う俺たち。しかもまたその原因も低レベルな内容と来たからホント恥ずかしいけれど、今はそう言っている場合じゃなかった。

 「私は承諾していない! アンタもモデルなら少しは体調の事くらい気をつけなさい!」

 「俺はヤらないと、体調不良になるの!」


 それからしばらくそんな争いが続いたけれど、最終的に俺が勝ったのは……言うまでも無いか。


 翌朝――


 「えっ? ちょっと、琉依。この腫れはどうしたの!?」

 「……名誉の負傷です」


 メイクさんはこの日、俺の顔面にくっきりと残った腫れを隠すのに苦労したとか……



 こんばんは、山口です。

 琉依の顔面の腫れは、もちろん夏海によって殴られた跡です……。本当にどうしようもないバカです。

 さて、そろそろそんな琉依にもやって来ます。ポカポカが……

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