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Chain25 変わらない夢を持った変わった親友?



 俺の前に、天使が現れた時……






 「……で、どうしてこうなるの?」


 翌日、改めて俺の教室で打ち合わせしようと決めた俺の前にいるのは、可愛い倉田嬢ではなく可愛らしさのかけらも無い渉だった。

 「俺だって嫌だよ! けど、これも彼女の為だから仕方が無いだろ!」

 昨日、あれから俺の行動に呆れた渉は三年の代表に掛け合って自分と彼女をトレードするという暴挙に出たのだ。せっかく可愛らしい彼女とこれから一緒に過ごせると思っていたのに、何が悲しくてこんな男と……。


 そして、倉田嬢はというと渉のペアでもあった君のクラスの学級委員と打ち合わせを淡々としている。あ〜あ、本当ならあの男じゃなくて俺が相手だったのになぁ。

 「やっほい! はかどってる〜?」

 そんな時に現れた君は、自分のクラスの学級委員の方へ行って話しかけている。そして、自然と傍にいる倉田嬢にも挨拶から始まって何やら話をしていた。

 「そ・し・て! この年がら年中発情男はどう? 渉」

 「もう、最悪! こいつ倉田嬢じゃなくなったら、全くやる気なくしてやんの!」

 彼女たちの所からこちらにやって来た君は、渉の隣りに座っては俺の悪口を二人で言い始める。渉も渉で、君の完全な味方なのかそれに乗っかって愚痴を零している。

 「せっかく彼女と一緒にチームを組めると思っていたのに、何でまた邪魔してくれるかなぁ」

 「お前が全て悪いんだろうが!」

 小さく呟いたのに、それでも君と渉は一緒になって叫んでは俺の頭を殴る。これでも一応はモデルなんだから、商品を傷つけるのは辞めて欲しいのよね……。

 そんな俺たちのやり取りを、倉田嬢はクスクスと笑って見ていたから……まぁ、いっか。


 ――――


 「へぇ、そんなにも可愛い子がいたんだ?」

 「そうなんだよ。それなのに夏海が邪魔してさ!」

 打ち合わせを終えて、俺は伊織の家に遊びに行ってはさっきの愚痴を零していた。久しぶりに来た伊織の部屋は、デザイナーを目指しているというだけあって数多のファッション雑誌やカタログが所狭しと並べてある。

 そして、その横にはミシンやら布など無造作に置かれていて、まるでアトリエのようだった。

 「あっ、これ俺が表紙のだ〜!」

 そう言って“Men’s Att”を取り出す。表紙は“K2”の新作ジャケットを格好良く着こなしてポーズをとる俺で堂々と飾られていた。

 「ふん、大した事無いわね!」

 「んな事無いよ〜……って、今何と?」

 可笑しいなぁ。確かに此処には俺と伊織の二人しかいない筈なのに、けど確かに聞こえたぞ?

 「だから! 大した事無いわねって言ったのよ!」

 「――!」

 空耳だと思った声は、伊織の口から発していた。何だって? 大した事ない“わね”!?

 「伊織? お前どうしちゃったの? 少し言葉遣いが性転換されていますわよ?」

 思わず移ってしまったそのカマ口調に、俺はただ驚きの表情を見せるしか出来なかった。しばらく会わない間に何が起こってしまったんだ?

 「お前、もしかしてオンナだったのか?」

 「そんな訳、無いじゃない!」

 いや、説得力無いって! 顔立ちも体格もそしてその言葉遣いも、どこをとっても十分オンナで通用しますわよ?

 「あぁ、これ? どうも舞台で女形をしているとね、なんて言うか心もオンナに近付いていくっていうか?」

 いや、舞台ってアンタ。それは幼い頃からしていたから、今さらそれでカマ口調にはならないでしょ。

 「やっべ、夏海にも病院に来いって連絡しないと……」

 「だ〜か〜ら〜、大丈夫って言ってるでしょ?」

 ツンっと指で俺の額を突くという、またオンナらしい仕草をしては笑っている伊織。小学校の時は一緒にバカやって先生に怒られたりしていたこの伊織が、何をどうしたらおねぇ系キャラになってしまうんだか。

 「それよりも、これ見て頂戴!」

 俺が持っていた雑誌とはまた違う雑誌を引っ張っては目の前に差し出す。大きく開かれたそのページに掲載されていたのは、“K2”のロンドンでの活躍のもので写真とインタビューで構成されていた。

 写真はロンドンの自宅の中で撮影されていて、数点の新作も写っていた。そしてインタビューに軽く目を通すと、そこにはロンドンでの新展開やパリの新店について。そして、俺の事も少しだが書かれていた。


 「やっぱり、素敵よね〜。響一さんって!」

 今のアンタが言うと、別の意味に聞こえるからやめて欲しいのですが……。それでもデザイナーを目指す伊織にとっては、国内だけではなく海外でも活躍するK2は憧れの人物なのだろうな。

 「親父さん、まだ怒ってるんだろ?」

 伊織は“鷹司”の跡取りであるから、そんな彼の夢を家族の誰もが反対している。この部屋も親父さんが“ただの道楽”とバカにしていて決して近寄ろうとはしない。

 「そうなのよね、ホント頑固じじぃなんだから!」

 フンっと鼻を鳴らす伊織だけど、彼が時間があれば必死になってご両親を説得しているのは知っていた。反対されるままじゃなく、ちゃんと認められてから夢を掴みたいという伊織の意志は本当に凄いと思う。


 「でも、カマ口調はいけないよなぁ……」

 「大きなお世話よ!」


 それでも伊織、その時のアンタは本当に輝いていたんだよ?




 こんばんは、ヤマグチです。

 梓と伊織が同時に登場した場面です。けれど、伊織もまさか話していた梓が後に自分の彼女になるなんて思いもしなかったでしょうね。そして、伊織のカマ口調もデビューです(汗)

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