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Chain24 そんな俺の目の前に現れた可愛い天使と



 君が与えてくれたぬくもりは、その時の俺には当たり前の物だと感じていたんだ……





 「宇佐美く〜ん! 今日の放課後、委員会あるけど大丈夫ぅ?」

 「大丈夫ですよ? 今日は仕事オフだから〜」


 昼休み、屋上で渉が甘ったるい声を出して話しかけてくる。俺と渉は偶然にも同じ学級委員になってしまったので、こうして委員会の誘いがある訳だが俺は今回初めて出席できる事になった。

 「まったく、モデルの仕事で委員会欠席していたなんて普通はありえないぞ?」

 そうなんですよね。けれど、クラスのみんなが俺を推薦してしまったから仕方の無い事なんですよ。だから、今までは女子の学級委員の子に迷惑を掛けっぱなしだったので今日はいい加減に出ないとね。

 「そうでなくても、お前会いたさにキャーキャー言う女がうるさいんだから」

 そっちもあるんだっけ……。面倒だな〜、何か行く気が失せてきたカモ。

 パンを大きな口で頬張っていた渉は、ふとその動きを止めると中に入っていたのを飲み込んで

 「そういえば、特進科の学級委員でかなりの美人がいるぞ!」

 「……マジで?」

 真剣になったと思えば渉のその発言に、俺もまた真剣になってその詳細を聞く。

 「一組の子なんだけど、もうこれがまた美人! しかも学年トップの成績を持つ才女と来た!」

 才色兼備とはあの子の事を言うんだ! そう力説する渉の話を聞いていると、それはもう見に行かないといけないでしょ? そんな美人がいるならこの目で確かめに行かないと……


 しかし、放課後になるとそれは簡単にはいかない事に気付く。

 「キャーッ! 宇佐美クンよ〜!」

 「委員会に来るの初めてよ!」

 人の顔を見るなりこうして四方八方から喧しい歓声が聞こえる聞こえる。それでも俺は手を振って愛想を振りまくが、今の俺の目的は彼女達に笑顔を振りまく事でも委員会に参加する事でもなく、その噂の才女を見に行くこと!

 とりあえず教室へ入って全学年の学級委員を見渡す。それにしても、全学年だしクラス数も半端じゃないから女子の数だけでもかなり居るのですが……。

 「琉依! こっち、こっち!」

 俺を呼ぶ渉の方へ行き隣の席に座ると、渉は前方を指し示す。

 「あの右から三番目の子だよ」

 渉に言われて、その“右から三番目の子”を見るとそこに居たのは眼鏡をかけた“才女”という名にピッタリの美人さんが姿勢正しく座っていた。

 「あれが、一組の倉田梓嬢だよ」

 倉田梓……いやいや、思わず見とれてしまうくらいの美人さんだわ。仕事柄、美人さんは結構見てきたけれどあんな綺麗な女性はそうそう見れるものじゃないぞ?


 「どうだ? かなり可愛くね?」

 「あ、ああ。ホント可愛いな……」

 小声で会話をしながらも、俺はずっと才女の方を見ていた。“才女”だからといって、そんなにキツイ感じはなく、小柄だしあと照れ屋なのかたまに俯いたりもしている。

 「あっ……」

 ふと、そんな彼女と目が合ってしまい、思わず声にしてしまった。すると、彼女は頬を赤らめたかと思うとそのまま俯いてしまった。

 「うわ、目が合っただけで俯くなんて……純粋な子なんだね〜」

 隣りで見ていた渉はそう言うと、俯く彼女の方をずっと眺めていた。


 「それでは、今年の学園祭の合同企画の組み合わせはこのようになりましたので、各自ペアのクラスを把握してぞれぞれで相談を始めてください」


 三年の代表が黒板に書かれた組み合わせを示しながらそう言うと、その場にいた各クラスの学級委員がその文字を見始めた。

 「あら〜。俺、夏海のクラスとだわ! 琉依は?」

 「俺? 俺はっと、あ……」

 七組の隣りに書かれていた文字は、“一組”の文字。という事は……


 「あ、あの……宇佐美君?」

 黒板の方に気を取られていた俺を呼ぶのは、その“一組”の才女。ちゃんとペアを確認して来てくれたって訳だ。

 「はい、そうですよ? え〜っと、一組の倉田サンだよね?」

 「は、はい。あの、よろしくお願いします!」

 ノートを持ちながらご丁寧に頭を下げて挨拶する彼女。渉は羨ましそうに見ながらも、八組の学級委員のもとに行ってしまった。

 「じゃあ、ここ座って?」

 渉が去って空いた席を彼女に勧めると、赤面のまま彼女は隣りに座ってきた。さっきからずっと赤面のままだけど、この子はいつもこうなのかなぁ……。


 「あ、あの……?」

 打ち合わせもしないで、ただじっと彼女の方を見る俺の視線が痛いのか彼女が遠慮がちに話しかけてくる。

 「はーい?」

 「えっと……打ち合わせは……?」

 たまに視線を逸らしながら言う彼女のその仕草がまた可愛くて、ずっと見ていても飽きないくらいだった。彼女の問いに俺は笑顔を返すだけで、再び彼女の方を見る。そんな事をしていると、困ってしまったのか俯いては更に頬を赤く染めてしまっている。

 それが可愛くてつい手を出したくなるって事に気付いていないのかなぁ……?


 「可愛いなぁ〜」


 「へ? えぇっ!?」


 俺が発した言葉と同時に伸びた腕は、彼女の背中を回ってそのまま自分の方へと抱き寄せる。突然の事に、彼女は驚いたのかそんな間の抜けた声しか出せていない。

 そして、他の学級委員がこちらを見ているのにも構わずに俺は更に腕に力を込めると


 「すっげ〜可愛くて、もう食べてしまいたい!」


 「き、きゃああああっ!」


 「このバカ! 手を出す相手はちゃんと考えろ!」


 がっしりと抱き締めて離さない俺に、彼女はじたばたしながら悲鳴をあげるから渉が飛んできて俺と彼女を引き剥がしてから俺を殴る。

 「だって、可愛いから〜」

 懲りない俺に、渉はため息をつくと三年の学級委員の所へ行ってしまった。そしてその隙に、再び彼女の方を見ると彼女はビクッと怯えてこちらを見ている。

 でも、その仕草がまた手を出したくなるくらい可愛くて仕方が無いんですよね。でも、今は渉の視線が気になるから……


 「また、今度ね〜!」


 それが、俺と梓との最っ高の出会いだった!




 メンバー5人目の梓の初登場です。しかも初対面から琉依はこんな事をしていました。本当にド変態です……(汗)


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