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Chain21 君を守ると心に誓う



 お祖父様、貴方は俺が狂ってしまう事を分かっていたのですか……?






 春、桜舞う頃……



 「よーっし! 三人とも並んで!」

 暁生さんの声に、高校の校門の前でぎこちなく並ぶ俺たち。

 「ほら〜! また早くしないと今度こそ入学式から遅刻するわよ!」

 真琴さんは笑いながら暁生さんの横で眺めている。


 場所は一宮高校の校門前。今日はこの一宮高校の入学式で、俺たちは中学の時と同様こうして写真を撮って貰っているのだけれど……。

 「ほら、三人とも笑顔笑顔!」

 暁生さんに言われるまま俺たちは笑顔を見せては、それぞれバラバラのポーズを作るから暁生さんに再び注意される。

 「個性があるのはいいけれど、ポーズは全員同じので!」

 俺は右手にピースサインを作って前に出して、君は可愛らしくポーズを作る。そして……

 「一番の問題はお前だ! 渉〜!」

 「え〜? いいじゃん! 早く撮ってよ!」

 君を挟んで一緒に並ぶのは、コ○ネチの格好をして笑顔を見せる渉。俺と君、そして渉はこの一宮高校に三人揃って無事入学を果たした。とは言っても、俺と君は国際学科で渉は普通科の体育コースだけど。

 中学の時に偶然三人とも同じ高校を受けると聞いて、君は笑顔を見せて喜んでいたっけ。渉もそんな偶然に喜んでいたけれど、俺は二人とは違う思いを抱いていて素直には喜べなかった。


 “夏海を……守るから”


 亡くなったお祖父様と約束した後、俺たちは本当にお祖父様と永遠の別れをする事になってしまった。そして、その時から一ヶ月も経たないうちに俺たちには無情にも“受験”が待っていた。

 当然、そんな事に集中できる訳も無くただ気を沈めてばかりいた俺に対して、君はそんな俺を逆に励ます形で必死に笑顔を見せては俺を引っ張っていったよね。

 本当は俺なんかよりも君のほうが大切な人を失ったという気持ちは大きい筈なのに、それでも俺は君の事を励ませるほど立ち直りは早くなかった。

 俺を励ます……そうしていた君は、いつ誰の前で寂しさを見せていたのだろうか。

 そんな君を見ていたから、俺はそれまで決めていなかった進学先を君と同じこの高校に決めた。お祖父様との約束を今度こそ守るために……。


 「渉は〜っと、三組だね。それで琉依が七組で私が八組。みんなバラバラだね」

 「いや〜、俺は当たり前だけど……お前らがクラス別々になるのって初めてだよな〜」

 クラス編成表の前で、君と渉は口々に話していた。確かに中学の時は俺たちは三年間ずっとクラスが一緒だったからこうして見事にバラバラになるのは初めての事だった。

 「まぁ、でも休み時間のときはいつでも遊べるし?」

 俺はそう言うと、靴を履き替えて校舎内に入った。


 一宮高校は、普通科と国際学科そして特進科の三つに分かれていて校舎もそれぞれ三つに分けられていた。もともと英語が得意だった俺と君は国際学科に、渉は運動神経が抜群だったから普通科に分かれてしまったが学校は同じだからいつでも会える。

 中学が別々になった伊織は、私立の高校に通わされているらしい。デザイナーになる夢は諦めていないけれど、ご両親が決めた高校に無理矢理入学させられたとぼやいてたっけ。


 「やった! あの宇佐美クンと同じ高校じゃん!」

 「宇佐美クンって、あの宇佐美クン?」


 渉と別れた俺たちが国際学科の校舎に入った時、廊下にいた数人の女の子が俺の姿を見るなり聞こえる位の大声で話し始める。そんな彼女達に、君もまた気付くと俺の方を見上げて

 「行ってあげる?」

 「いいよ、別に。何か面倒だし……」

 彼女達に聞こえないくらいの小さな声で言う君に、俺は彼女達に笑顔で手を振りながら小声で答えた。

 「それじゃあね。また後で」

 「うん、じゃあね」

 お互いの教室で別れると、俺は自分の教室に入って行き席に座ってボーっとする。


 「初めて、別々のクラスだな……」


 外を見ながらそう呟いた言葉……。寂しい訳じゃ無いけれど、お祖父様と約束したばかりなのに早速離れてしまった事で何だか急に力が抜けてしまった。


 君を守ると約束したからこそ選んだ同じ高校。


 だけど、この場所で起こった出来事がきっかけで俺は……狂い始める……




 こんにちは、山口です。

 この作品を読んで下さり、本当にありがとうございます! やっと高校生編に突入しました。この高校生編は、今までと違って様々な出来事がありすぎてなかなか時が流れるのが遅いです。だから少し長めになると思いますが、琉依の狂気が見えてきますのでどうぞよろしくお願い致します。

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