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Chain15 友情の甘いキスへと繋がり



 ヤキモチ……? 俺が?






 暁生さんは二階、真琴さんは夕食作りでキッチン。そして、いつの間にか居なくなっていた君だから、ここにいるのは俺とリカルドの二人だけ。

 そんな時に、急に言われたリカルドからの思いがけない一言。


 『ヤキモチ? 君が……』


 俺がヤキモチを焼いている? まさか、そんな事ある訳がない。

 『リカルド、ヤキモチって嫉妬の事だよ? ちゃんと分かってる?』

 『分かってるよ。だから聞いてるの!』

 笑いながら言う俺に対して、リカルドは相変わらずの真剣な顔で答えた。俺はそんなリカルドに心の中でため息をつくと

 『まさか。そんな感情持つような相手だったら、俺も観光に行ってるよ』

 そう答えると、ポラをかき集めて袋の中にしまって近くにある棚の中にしまった。そしてまだ座っているリカルドの方へ行くと

 『俺と夏海は幼馴染みで友達。それ以上の感情は少しも持ってはいないよ』

 肩を叩くと、俺はそのままリビングを後にしてキッチンにいる真琴さんに挨拶すると玄関の方へ行って君の家を後にした。


 “幼馴染みで友達……”


 嘘は言っていない。君に対して恋心を抱いたのは幼少の頃のみだったから。それでもあのリカルドの挑発的な視線は、俺の心を見透かしたような感じがして気分が悪かった。



 『いや〜、日本はホントいい所だったよ! また来たいものだね』

 翌朝、俺は暁生さんからの頼みで君と一緒にリカルドを空港に送りに来ていた。さすが有名モデルと言うだけあって、ここまで来るのに何回もファンの女の子からサインや写真を頼まれて大変だった。

 『う〜ん、さすがこっちでも俺は有名なんだね!』

 満足気に答えるとリカルドは君の方へ近付いた。

 『じゃあね、夏海。今度はパリにおいで』

 『ありがとう。リックも元気でね』

 いつの間にか“リック”と呼ばせているのか……そう思っていた時だった。


 「……っ!」


 のんびり構えていた俺の目の前で起こったのは、別れの挨拶をしたリカルドが君にキスをした事だった。それは頬ではなくて、お互いの唇。

 傍から見ると、それは恋人同士のしばらくの別れみたいな雰囲気として捉えてしまうには十分過ぎていた。

 リカルドが離れた後、君は笑いながら彼の胸元を叩くと

 『もう! こんな事したらダメじゃない〜』

 『パリでは当たり前だよ? こんなの友人同士でもする挨拶代わりだし』

 そう言っていたリカルドの視線は、君ではなくて俺の方に向けられていた。そして、その視線は俺の嫌いな挑発的なもの……。

 そして、リカルドは俺の方へやって来ると手を差し出してきて

 『じゃあ、また来年一緒に仕事しようね』

 『ああ』

 リカルドの挨拶に、俺は握手と素っ気無い返事をした。そして、通り過ぎる際にリカルドは君に聞こえないくらいの小さな声で

 『誰かに取られても知らないよ?』

 そう言うと、そのまま振り返る事無く去って行った。


 「さっき、リック何て言ってたの?」

 「ん〜? 俺にも聞こえなかった」

 空港から帰って来て俺は君に勧められるまま君の家で過ごしていた。暁生さんと真琴さんは夜まで帰ってこないから、それまでは居ておこうとソファに座って君と話をする。

 君にキスをしたあの日からまともに話をしたのは初めてじゃないだろうか。しかも君の方から、こうして家に呼んでは話しかけてくる。それでも俺の頭の中には、さっきの光景がずっと浮かんだままだった。


 「ねぇ、夏海」

 「ん〜? 何?」

 声を掛けた俺に、君は何気ない返事をしながらジュースを持ってきて俺の向かいに座る。

 「さっき、リカルドとキスしてどうだった?」

 少し意地悪だったかなと思いながらも、俺はそのまま君の返答を待つようじっと見ていた。そんな俺に対して、君は驚きの表情を見せながらもすぐに笑みに変わる。

 「キス? あれは勝手にリカルドからしてきた事だし、それにあれはパリではよくある友情のキスだって……」

 「パリでそんなのあると思う?」

 君の答えに間髪入れず俺が再び質問を投げると、君は少し迷いながらも小さく頷く。そんな君を見て俺は座っていたソファから立ち上がると、君のいる方へと近付く。

 「じゃあ、あの時のキスもそれでいい?」

 「えっ?」

 そう聞き返した君はすぐにあの時の事を思い出したのか、少し表情を暗くさせた。

 愚かだね、君は本当に愚かだ。だから、そこへ俺がつけこむんだよ?

 「それで……いい?」

 確実に縮まる君との距離。そして、ソファに当たって逃げ場の無い君はただ俺の方を不安そうな目で見つめたその時

 「琉依……!」

 何かを悟った君が咄嗟に口を開くが、俺はそのまま君が出した言葉ごと唇で塞いだ。必死になって俺の胸を押しているが、その手も呆気なく俺の腕によって掴まれてしまい無駄な物になる。

 「……どうして……」

 お互いの唇が離れてすぐに君が言った言葉は、以前とは違う物だった。それでも何とか今の状況を掴もうとしているのが分かる。

 けれど俺はそんな君を見ては再び腕を掴むと


 「友達の挨拶代わりだろ?」


 妖しげな笑みを見せてそのまま君に再びキスをする。友達としての挨拶代わりのキスは、君から抵抗を奪ってしまい俺に応えるものとなった。



 友情のキス……なんて最悪な言い訳だったのだろう。




 こんにちは、山口です。

 ここまで読んで頂き本当にありがとうございます!

 今回で一旦リカルドも引っ込みますが、また現代編で戻って参ります。

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