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森と向こうの扉  作者: 03


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32/33

トラウマ

霧の森。鳥居の前。

先ほど烏天狗を一時的に止めた勢いで美咲を結界から救出した五人だったが、緊張はまったく緩まない。

その瞬間――

「ギギギ……」

轟く、結界を裂く音。

森の霧がざわめき、鳥居の奥に黒い影がうごめく。

健太が叫ぶ。

「鬼だ!結界を破ってる!」

鬼はゆっくりと、しかし確実に結界の裂け目を広げる。

その姿は雪に反射する赤い角、丸い体躯、威圧感が漂う。

圭は反射的にクマ撃退スプレーを取り出す。

「これでもくらえ!」

噴射。白い霧が鬼に向かう――

鬼は低く笑い、ゆったりとした動きで圭たちに迫る。

全く効かない。

スプレーの残量を確認すると――空っぽだった。

「……空か!」圭は唇を噛む。

健太が美咲の腕を引き、後退する。

迅が横を守り、翔太は後方を警戒。

森の中、出口を目指して必死に逃げるが――

前方に烏天狗。

赤い目が光り、羽音が耳を刺す。

圭が叫ぶ。

「後ろは鬼!前は天狗!どうする!?」

恐怖で震える美咲に咄嗟のひらめきが走る。

圭の手元の空スプレーに目をつけた。

「……これで……!」

美咲は空のスプレーを取り、噴射のフリをして“シュッ”という音を真似る。

「シューッ!」

烏天狗は一瞬、警戒して羽を止める。

赤い目が瞬き、機械的な動きが鈍る。

その瞬間、健太が前に踏み出す。

結界の裂け目をくぐり、霧の森を駆け抜ける。

翔太も迅も続き、美咲も腕をしっかり握られながら走る。

森の出口が見えた。

「もう少し……もう少しで……!」

そして――

五人は出口に飛び出す。

雪解けの明るい光が目に飛び込み、全員が息を切らせながら立ち止まる。

美咲は小さく笑いながら言う。

「……スプレー、缶だけでも役に立った……」

圭は苦笑しながらも頷く。

「……音だけでも隙が作れるとは思わなかった。よっぽど効いたんだな」

翔太は空を見上げ、深呼吸する。

「助かった……ほんと、危なかった」

健太は左手の痣を見つめる。

光はまだ弱く残っている。

五人は互いに息を整え、次に備える。

森の奥からは、まだ鬼の唸り声が遠くに聞こえるが、全員が無事に生還した。

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