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森と向こうの扉  作者: 03


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共鳴

霧。

冷たい。

足元が見えない。

美咲はその場に座り込んでいる。

怖い。

怖い。

怖い。

鬼の声が頭の奥に染み込んで離れない。

「門を押せば終わる」

違う。

違う。

でも――

恐怖が濃くなる。

霧が黒く染まり始める。

心臓が痛い。

息が吸えない。

視界の端で、赤い鳥居が歪む。

「……やだ……」

涙が落ちる。

その時。

左手が熱くなる。

痣。

じん、と灼けるような感覚。

美咲は震える手を見下ろす。

淡い光。

小さな灯り。

でも消えない。

むしろ強くなる。

鬼が低く唸る。

「……なんだ?」

霧が揺れる。

光は一本の糸になり、どこか遠くへ伸びる。

美咲の意識が引き寄せられる。

世界が、反転する。



ICU

心電図の電子音。

健太は横たわっている。

病室には

翔太

そして 白石隆司。

重い空気。

隆司は疲れ切った顔で言う。

「封印の揺れが増している。もう猶予はない」

迅が机を叩く。

「じゃあどうするんだよ!」

その時。

健太の指が動く。

ゆっくり目が開く。

「……ここ……」

翔太が近づく。

「病院だ。分かるか?」

健太は頷くが、額を押さえる。

「森……霧……赤い門……」

記憶が欠けている。

「誰かに……触られた……でも顔が……」

隆司が身を乗り出す。

「無理に思い出すな」

その瞬間。

健太の左手。

痣が光る。

赤白い閃光。

モニターが乱れる。

迅が叫ぶ。

「まただ!」

健太が息を詰める。

「……美咲……!」

そして。

意識が落ちる。

精神世界

光の空間。

上下も距離もない。

美咲と健太が向かい合う。

「……お兄ちゃん?」

「美咲?」

二人の手の痣が同じ光を放つ。

間に、光の糸。

美咲の声は震えている。

「鬼が……封印を壊させようとしてる……怖いのを流してくるの」

健太の顔が強張る。

「俺も印をつけられたんだと思う」

二人の痣が強く脈打つ。

健太が気づく。

「これ、恐怖じゃない」

美咲が涙をこぼす。

「……?」

「俺たち、つながってる」

鬼は恐怖で門を押させる。

でも。

今、この空間は恐怖ではない。

不安はある。

でも、孤独ではない。

健太が言う。

「美咲、門に近づくな。怖くても。

 俺が外から支える」

美咲は小さく頷く。

「……うん」

空間が揺れる。

鬼の声。

「共鳴か……排除する」

光が弾ける。

世界が崩れる。


ICU

健太は倒れている。

だが痣はまだ光っている。

迅たちは息を呑む。

隆司の目が見開かれる。

「……共鳴印」

圭が振り向く。

「何ですか、それ」

隆司が震える声で言う。

「古文書にあった。

 封印に関わった者が二人いる場合、

 恐怖とは逆の力で均衡を固定する現象」

翔太が呟く。

「つまり?」

「鬼は恐怖で封印を解く。

 二人は共鳴で押し返せる」

迅の目に火が灯る。

「じゃあやれるじゃん」

その時。

病室の扉が勢いよく開く。

「警察です!」

複数の刑事。

一人が隆司を見る。

「白石隆司さん。

 文化財保管庫への不法侵入、データ改ざんの疑いで任意同行願います」

迅が怒鳴る。

「今それどころじゃねぇ!」

隆司は静かに手を差し出す。

抵抗しない。

手錠が鳴る。

去り際。

隆司は振り返る。

「鬼は誰の命令も受けない。

 だが封印の管理者は烏天狗だ」

迅たちを見る。

「烏天狗は真名で縛られている。

 命令は『封印を守れ』」

圭が言う。

「つまり鬼は直接操れない」

隆司が頷く。

目が強い。

「美咲を救えるのは、お前たちだけだ」

迅の拳が震える。

「絶対取り戻す」

隆司は微かに笑う。

「信じている」

連行され静まり返る病室。

その時。

健太がゆっくり目を開ける。

意識ははっきりしている。

「……聞いてた」

迅が近づく。

「健太!」

健太は手を見つめる。

光る痣。

「俺、向こうとつながれる。美咲と話した」

「美咲が連れてかれたんだろ?」

圭が冷静に言う。

「意図的に起こせるか?」

健太が息を吐く。

「やる」

翔太が頷く。

迅が言う。

「じゃあ作戦立てるぞ」

四人。

初めて“攻める側”に回る。

鬼は恐怖。

彼らは共鳴。

戦いは、次の段階へ進む。

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