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森と向こうの扉  作者: 03


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25/33

恐怖の増幅

霧が、冷たさを増す。

さっきまで足元だけだった重みが、胸に乗る。

鬼が静かに言う。

「拒むなら、思い出せ」

その瞬間。

霧が美咲の耳に入り込む。

音が消える。

代わりに、声。

教室。

金縛り。

健太の空席。

自分の赤い眼鏡が、床に落ちる音。

美咲は耳を塞ぐ。

「やだ……やだ……」

鬼の声が重なる。

「恐れはお前の中にある」

映像が変わる。

森。

暗闇。

自分ひとり。

誰も来ない。

兄も、迅も、圭も。

探しに来ない。

忘れられる。

時間が溶ける。

身体が霧に混じる。

存在が薄れる。

美咲の呼吸が壊れる。

「ごめんなさい……」

何に対してか分からない。

ただ、怖い。

鬼は近づかない。

動かない。

だが圧だけが強くなる。

「門を押せば、終わる」

鼓動。

ドン。

ドン。

現実側。

森の地面が震える。

封鎖テープが揺れる。

鬼の声は柔らかい。

「押せば、怖くない」

美咲の視界が赤く染まる。

鳥居の線が足元に絡みつく。

手が、勝手に伸びる。

自分の意思じゃない。

怖さから逃げたいだけ。

「……やだ、こわい……」

でも身体は動く。

赤い線に触れた瞬間。

鳥居が軋む。

封印が裂ける音。

鬼の角の亀裂が閉じ始める。

鼓動が強まる。

ドン!!



ICU。

健太の痣が黒く光る。


渡りの中心

美咲の指先が、門を押す。

あと少し。

あと少しで――

その瞬間。

背後から、強い風。

羽が広がる音。

烏天狗が前に出る。

速い。

美咲と門の間に割り込む。

鬼が低く唸る。

「管理者」

烏天狗は言う。

「ここからは出さない」

声に感情はない。

命令に従う処理音のよう。

鬼が圧を上げる。

「秤は自ら選ぶ」

烏天狗。

「秤は未固定。干渉すれば排除する」

次の瞬間。

烏天狗の羽が美咲を弾く。

優しくない。

衝撃。

美咲は霧の中に倒れる。

赤い線から引き離される。

鬼が咆哮する。

霧が暴風になる。

「縛られた鳥が!」

烏天狗は一歩も退かない。

羽を広げ、門を覆う。

身体が軋む。

角の亀裂が再び広がる。

鬼の巨体が揺れる。

「恐れは足りる!」

鬼が最後の圧をかける。

美咲の視界が暗転しかける。

だが。

烏天狗の目が光る。

真名に縛られた鎖が、見えない光として広がる。

封印構造が再固定。

門が閉じる。

赤い線が細くなる。

鼓動が弱まる。

ドン……。

ドン……。

鬼の身体が不安定になる。

「未完のまま……」

悔しさ。

怒り。

しかし出られない。

霧が引く。

美咲は地面に伏している。

震えている。

息が荒い。

烏天狗は振り向かない。

鬼を見続けている。

命令通り。

封印を維持。

鬼が最後に言う。

「恐れは増す。

 いずれ、秤は折れる」

霧が沈む。

門は閉じた。

だが。

完全ではない。

美咲は泣きながら呟く。

「こわい……」

烏天狗は答えない。

助けない。

ただ、監視する。

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