23/33
現実側の亀裂
札幌市内。
森に近いマンション。
住民が管理会社に通報。
「壁が揺れる」
映像。
棚のコップが震える。
だが地震計は反応しない。
SNSで動画が拡散。
#森の鼓動
トレンド入り。
市は再び否定。
「地盤変動は確認されていません」
だが封鎖区域の地面に亀裂が入る。
幅数センチ。
円形。
まるで内側から押されたように。
向こう側。
美咲は一歩前に出る。
足が重い。
だが止まらない。
「均衡ってなに」
鬼の目が揺れる。
「恐れが消えれば、
境界は曖昧になる」
「曖昧になると?」
「人は入る」
美咲は言う。
「入ったらだめなの?」
鬼は沈黙する。
初めて。
答えられない。
烏天狗がわずかに目を伏せる。
鬼は低く言う。
「……守る者がいなくなる」
美咲は理解する。
鬼は“破壊者”ではない。
役割の化石。
命令の残響。
「じゃあ、守る方法を変えればいい」
鬼の鼓動が乱れる。
ドン。
ドン。
間隔が崩れる。
「秤が、逆に傾く」
美咲の足元の霧が晴れ始める。
鳥居の赤が薄くなる。
鬼が苦しそうに唸る。
「門が……」




