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三夜目
三夜目。
迅たちは決めていた。
今夜で終わらせる。
日没直後。
四人は石の円へ。
霧は最初から濃い。
呼吸は荒い。
森が生き物のようだ。
圭が呟く。
「三夜目」
そのとき。
奥から、走る音。
誰かがこちらへ来る。
迅は身構える。
霧を突き破って現れたのは――
隆司。
息を切らし、顔色が白い。
「君たち……!」
驚きと焦り。
「ここにいるな、危険だ!」
その背後。
森の奥。
黒い影が、ゆっくりと動く。
高い。
翼のようなものが、枝をかすめる。
だが完全には見えない。
霧の中。
声が重なる。
「……迅」
「……お父さん」
二つの呼び声。
迅は凍る。
隆司が振り返る。
その瞬間。
霧が裂けた。
一瞬だけ。
月明かりの中に、影が浮かぶ。
人型。
だが異様に長い腕。
肩から広がる黒。
そして――
鋭い眼。
赤くはない。
だが光を反射しない、深い闇。
それは完全に姿を見せない。
半身だけ。
枝の上。
次の瞬間。
消える。
風が吹く。
霧が散る。
森が、静かになる。
隆司は膝をつく。
「……三夜目」
迅は確信する。
いる。
健太を攫った“何か”は、森の奥にいる。
そして今。
姿を見せ始めた。




