なかなか訪れない春
俺の名前は黒瀬雅也。高校二年生顔は平凡より少し上、運動神経もそこそこ、そして学力は堂々の学年一位。まあ、文句なしの天才だろう。異世界系でよくあるステータス風に言うなら
顔ー75
運動神経ー80
知力ー99
こんなところだろう。
学校ではみんなに慕われているし、男友達も多い。でもそんな俺なのだが…
「はあ、なーんで俺には彼女ができねえんだ。」
今日も机にうつ伏せになり、ため息をつきながらそんなことを言っていた。
さっきも言った通り、俺の能力は総合的に見てもかなり魅力的で素晴らしいはずなのに一向に彼女だけはできない。
中等部の時の俺は勉強も運動も顔も本当に下の下だった。そして友達もいない。
しかしこのままでは人生一度の高校生活が最高にむなしく終わってしまうと思い、中三の春から猛烈に勉強し、運動もし、顔も整え準備万端の体制での高等部進学だったのだが、早々に俺は孤立していた。男子、女子ともに俺の友達になってくれる人はいなかった。
ましてや女子なんて俺の顔を見るだけでそっぽを向き、まるでなにもみなかったようなそぶりをする。
中等部のときだってこんなそぶりはしなかった。
しかしある時から男子たちが俺に対して急にフレンドリーになった。
それはうちの学校のマドンナ、桜木花さんに彼氏ができたという情報が入ってからだった。
「おう黒瀬、何だ今日も辛気臭い顔しやがって。なんかあったのか。」
こいつは楠谷正道。俺の最初の友達で親友だ。
「ああ、楠谷。いやなに、なぜ女はこんな甘~い蜜がすぐそばにあってしかも誰も周りにいないのに取りに行こうとしないのか考えていたところだ。」
「ハハハ。甘い蜜ねえ、確かにお前の能力は素晴らしいものだが、やっぱ女子は顔と金なのだよ雅也君。
君の能力がいくらほかの男より勝っていたって、君にはほれ、これがないからなあ。」
楠谷は俺親指と人差し指で金のジェスチャーをしながらいやらしい顔で言った。
「なんだ楠谷、別にてめえも金持ちじゃねえだろ。」
「少なくともお前の家よりかはあるぜ。」
楠谷はまたいやらしい顔とジェスチャーをしながら俺に言った。
確かに俺の家は貧乏だ。しかし俺はそれで不幸せと感じたことはない。学校に行ける、朝飯、昼飯、夜飯。どれも質素なものだがそれで不自由はなかった。
「というかなあ、お前まず女子が金目当てで男を狙ってるとか考えるのが良くないぞ。」
俺は少し説教気味に言った。
「おやお二人さん、どうしたの?」
「おはよう海斗。」
「ああおはよう雅也。」
こいつは結城海斗、俺の幼馴染で中等部のころからの友達だったが高等部に入るまではあまり学校に来ていなかった。
「どうしたの、なんかテンション低いけど。」
「ああ、こいつな自分がモテないからこんなテンション低いんだぜ。」
楠谷は笑いながら言った。
「へえ、そんなことで。僕からしてみればうらやましいけどな。」
「ああお前、中等部のころ女子にモテすぎて学校に来なくなったんだもんな。」
「なんだお前それ、俺たちへの嫌味か?」
楠谷は少しキレ気味に言った。
「いやいや全くそんなつもりないよ。でも確かに雅也がモテないのはおかしいよね。君、顔も運動神経も学力もかなりいいはずだもんね。それに性格もいいほうだと思うし。」
「いやいやそんなの一つしか理由はないだろ。これだよ海斗。」
楠谷はまたいやらしいポーズをしながら言った。
「だからなあ楠谷そうやって…」
キーンコーンカーンコーン
俺がそう言いかけたとHRのチャイムが鳴った
「全員着席、出欠確認をとります。」
「一番、荒川」
「はい。」
そうやってだんだんと俺の順番が迫ってくると、
「おい黒瀬、今日は気をつけろよ。」
雅也が小声でにやけながら言った。
「分かってるよ。」
「13番、黒瀬」
「はい。」
俺が元気に手を挙げた瞬間、ポヨン、その手が右隣の女子の胸に当たってしまった。
「ご、ごめんなさい。決してワザとではないんです。」
俺は小声で隣の女子に謝った。
だが女子は黙って無視するだけだった。
「あ~あ、またやっちゃったねえ。」
後ろの席の楠谷が俺ににやにやしながら言った。
「うるせえ、だからわざとじゃないんだって。」
「お前ほんと変態だなあ。」
実は俺はこれで席替えをしてから一週間、毎日連続で隣の女子の胸を触ってしまっている。
「おっかしいな、今日は当たらないように少し離れていたのに。」
俺はこれがずっと続いていため何度も対策をねっていた、離れて座ったり、手を低く挙げてみたり、いっそのこと手を上げないでやろうともしたが、それは教師に怒られてしまった。
本当は俺もこんなことしたくない。もちろん女子に申し訳ないし、それ以上に触ってしまった後の俺への女子からの視線は耐えられるものじゃない。
「はあ、もうなんでこううまくいかないのか。」
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その日、俺はいつも通り授業を終え、昼飯を食べようとしていた。
「今日はカツカレーと焼きそばパンがあるらしいぜ」
「え!マジで」
カツカレーと焼きそばパン、両方俺の大好きな食べ物だ。
「今日の購買は大当たりだなあ。」
俺が意気揚々と購買に行くと
「ちょっと私が先よ、」
「いや私が、」
女子たちで喧嘩が起こっていた。
「女子たちってみんなこんなにカツカレーと焼きそばパン好きだったっけ。」
「まあでも人気メニューではあるよな。」
「というかなんであいつら両方とも二つずつ買ってんだ?」
「確かに。まあ成長期なんだろ。」
「いやふつうどっちかって言うとダイエット優先しそうだけどな。」
「ノンノンノンだぜ黒瀬君。」
楠谷は首を横に振りながら言った。
「女子たちにとってあそこの成長は命なんだぜ。」
「あそこってどこだよ」
「ここだよ」
楠谷は手で半月を描くようにして言った
「おまえなあ」
俺と海斗はあきれながら言った
「てかこんままじゃ全部なくなっちまうんじゃね」
「やべ、そうじゃん」
俺らは急いで買いに向かった。
「どっちもないじゃん。」
「マジか、あいつらどんだけあそこの成長に命懸けなんだよ。」
楠谷は女子のほうを見ながら言った。
「はあ、まあ仕方ない俺らはコンビニ行ってなんか買おうぜ。」
「そうだな」
食堂を出ようとすると女子たちがなぜか俺のほうを鋭い目つきで見ているのが分かった。
「おい、何だお前また俺らがいないすきにまたなんかしでかしたのか」
「いや知らねえよ」
俺は本当に何もやっていなかったので訳が分からなかった。
「もしかして、」
海斗が言った
「なんだよ、海斗」
「あの子たちみんなもしかして黒瀬君と一緒に食べたくて二個ずつ持ってたんじゃない。」
「いやんなわけ。」
そう俺が女子たちのほうを見るとみんななぜが顔を真っ赤にして焼きそばパンとカツカレーを驚くほどのスピードで食べていた。
「あいつら、やっぱあそこの成長に命かけてるよな」
楠谷がひき気味にも感心しながら言った。
「お、おう」
俺たちはそのままコンビニに行くことにした。
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