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お洒落な鳥型魔族の登場

『シュコー・・・シュコー・・・シュコー』

 頭に変なのをかぶっている・・・いや、顔か?

 変な音をさせる魔族が目の前に現れたのだ。

 口元は大きな鳥のようにとがっていて、目はガラスのように私を映した。

 まるでなめした皮を被っているような濃い色。

 鳥にしては翼をもたない中途半端な魔族らしい。

 なにより、とりあえずシュコシュコうるさい。

『シュコー?・・・シュコー!・・・シュコー??』

 何が言いたいのか、フロックコート姿の鳥魔族は、白い手袋をした手をバタバタして意思の疎通を図ろうとしてきた。


 正直気持ち悪い。


「・・・あんた、この城はじめて?」

 相手の方が私より全然大きいから、見上げても嘴の先しか見えない。

『!』

 うなずくようなしぐさだ。だが言葉は発せないようで、やはり出来の悪い鳥形なのだろう。可哀想に、田舎者にしてはいい服を着ているが、きっとこれは魔王城に来るための一張羅に違いない。

「ツアーから外れたの? あんた一人? もとの場所に戻れる?」

 質問には手ぶり身振りで答える鳥もどき。

 とりあえず迷子のようだ。

 困ったな。こっちは全力で逃げる気満々なのに、変なの拾っちゃったな。

「しょうがないわね、人の多い場所まで連れてってあげるわよ。まったく、こんな場所まで入ってきちゃだめよ。ここは使用人がたくさん通るんだからね」

 うん、うんと頷く鳥もどき。

「ほら、ついて来て」

 鳥もどきは私のあとを大人しくついてくる。

「あんた、もう大広間みた? 最近魔王が頑張って掃除したのよ。カーテンだって、魔王が一針ずつ丁寧に縫ったのよ。でもそのせいで部屋が編みぐるみだらけになったのは困ったわ。あんた、編みぐるみ好き? 欲しいのあったら、言ったらもらえるわよ」

 歩きながら話していくと、鳥もどきは始めてこの城に来たのは間違いないようだ。編みぐるみの話に驚いていた。

 なお編みぐるみは、生花が育ちにくい魔王場内で花の代わりとして所狭しと置いてある。見た目がいかついわりに、中はたいそうファンシーなのだ。ちゃんと花の形をとっているので、遠くからだと大きい花にしか見えないのがみそだ。

 尚大広間には壮大な赤いカーテンと、黒いレース(特殊な大蜘蛛の糸)があるが、カーテンをはじめ、父はレース編みも得意だ。

「ほんとうは色々そろえたいんだけどね、人間からのしめつけ酷いのよ。最近じゃ夕飯のパンすら、黒パンが並ぶ日が多いんだから。あ~あ。お金持ちになりたいわ」

 黒パンは固くて日持ちする分、味はよくない。

 しかし給料日前などはどうしても黒パンになるのだ。

 使用人は白パンを食べているというのに。

「あんたも堅実に働きなさいね、魔王みたいになっちゃだめよ。魔族は堅実が一番なんだから」

 子どもは作りすぎるなよ~っていうと、なぜかむせていた。



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