フリフリのエプロンは正義・・・か?
前回は失敗したが、次こそ目的を達成してやる。
そう思い立って、牢屋から出された翌早朝、私は盗んだ兵士の制服を着て外に出た。
ふん、伊達に巡回路を把握してないわよ。
ふふん、と気分よく歩いていると、見慣れない馬車の列が城に入ろうとしているのが遠くから見えた。
ちっ!
いつもと違う行事があったらしい。報告には聞いていないから、急遽決まったのかもしれない。
城門に様々な立場の魔族が集まり、一台一台丁寧に迎え入れていく。
魔族とは思えないきらびやかな馬車だ。
地方貴族の挨拶日程とかぶってしまったかしら。
田舎者は数日予定がずれ込むことも珍しくない。
魔王城は常にお金がないから、時々地方の人を呼んで魔王城ツアーを開催するのだ。そういう時は、常にない威厳(笑)を出すため、警備にも余念がない。
ここはまずいと振り向いた瞬間、
「姫様、さすがに今日はやめときましょ。これから警備が更に強くなりますから、面倒ですよ?」
トレスが何食わぬ顔で真後ろに立っていて、素早く縄にかけられた。
「ちぃっ!」
「女の子の言動じゃないです」
うるさいわね!
こっちは腹が減ってるのよ!
くそっ、こんなことなら朝食を済ませておけばよかったわ。
トレスは目立たないようにと、私の自室に押し込み、これでもかと縄で椅子とぐるぐる巻きにしやがったあげく、笑顔で去っていった。
しばらくして何故か父が部屋を訪ねて来て、縛られている私を見てため息をついた。
「ただでさえ忙しいのだから、手をかけさせないでくれ」
失礼すぎる!
「もがもがもがっ!」
口も封じられているため文句もいえない私を放置して、父はそのまま出ていった。
出ていくことは構わないけれど、フリフリエプロン外してから行きなさいよ。お客さんびっくりするわよ?
ツアー開催中は、ある意味で警備が厳重だが、ある意味で堂々と抜け出せるチャンスでもある。
適当な兵士を殴って服をはぎとり、ついでに槍もいただくと、何食わぬ顔で城内を歩く。
ツアー客が来たときは兵士のフリをして壁側に立ち真面目な顔をしていればいい。万が一身内にバレたところで頭を抱えられて終わりだ。怒られることもない。
あとは全力で裏門に走るのだ。
この様子なら、客に紛れて逃げられる!
しめた!
そう思った少しあと、私は奇妙な客と出会ってしまった。




