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加代と伶香のお仕事

6月25日。私たちは目覚めた。もともと私たちはルームシェアをしていて親しくなったが、同居して早10年。だがスーパーの仕事は嫌いではなく、広く浅い付き合いは私たちの性に合っていた。幼い頃の思い出に[科学忍者隊ガッチャマン]があり、私たちはずっとあの女性に憧れていた。小学校の遠足で持参したのは彼女の勇姿を描いた水筒。私たちは[白鳥のジュン]になりたかったが、今やゲール公国にお仕えする身。私たちの夏服は白のセーラーと紺のミニだが、あまりにも短すぎるため丈を5センチ長めにしてもらった。私たちは[名古屋の白鳥のジュン]として異世界に報道され、庶民の注目を集めた。魔王さまのお名前がケンとジョーなのも心強い。彼らはまだ30歳とお若いがしっかりしている。私たちは[科学忍者隊]という称号を与えられた。KとNをあしらった特製イニシャルが私たちのコスチュームの左胸に燦然と輝いた。職場に若い女の子が入れば可愛い後輩ができる。私がリーダー。伶香がサブリーダーに命じられた。事務員のフローレンスは20歳だが不思議と馬が合い、私たちをリスペクトしてくれた。おかげで仕事が楽しいし、私たちは急速に若返った。事務所では夏服に着替えるし、ガルシアとマルケスがいるからだ。彼らはフローレンスの幼馴染だが、名古屋に赴任して間もない。私たちは彼らにカカシになりきるレッスンを受けた。科学忍者隊は永年無料でガルシアたちのレッスンを受けられるし、20歳の男の子たちの前で私たちは恥じらいながらも下着姿をさらけ出した。だが先生方は優しくてソレには触れないでおいてくれた。彼らからは私たちへのリスペクトが如実に伝わり、私たちは感激した。私たちはただ[白鳥のジュン]になりたいだけなのに。世界線を超えれば私たちは生身の人間から精神体に変わる。精神体は精神に重きを置いた肉体との融合体だが[気持ちの若さや羞恥の強さや溢れんばかりの生気]がカギを握る。「だから年齢なんて関係ないわ」「そうなんだ」伶香はまだ半信半疑だが、私はいけるとみた。「白鳥のジュンになりきれば怖いものなんてないわ」「まあね」私たちは白鳥のジュンになりきればいい。だって異世界での私たちは白鳥のジュンなんだから。先生方とのレッスンが私たちを強気にさせたし、まるで思春期に戻されたかのように感じられた。異世界では[年増ほど若返る]法則があり、三十路よりもむしろ40代が若返る傾向が強い。気持ちの若さと羞恥と生気さえ失わなければ私たちはもっと若返るはず。私たちはヨガのエクササイズを欠かさず、部屋でもカカシになりきる訓練を欠かさなかった。[白鳥のジュンになる]という信念が私たちを突き動かした。休日にはブックオフに行き、ミニを試着するなどした。アマゾンで若い女の子が身にまとう下着を欲しいものリストに入れ、私たちは日々若返りつつあった。毎日仕事は充実してるし、事務員を育て上げる悦び。先生方にレッスンを受ける悦び。そして可愛い後輩ができる悦び。私たちは一心に願った。どうか科学忍者隊の未来を担う可愛い後輩が2人できますように。私たちは事務所でのレッスンを終えると[時の間]に向かった。魔王さまの肖像画の前で片ひざをつき、私はケン。伶香はジョーに完全なる従属を誓った。私たちは彼らの前で片ひざをついたまま近況報告を始めた。「今日のレッスンはひときわ興奮しましたわ」「私も今日のレッスンはひときわ性的な興奮を覚えましたわ」それが終わるや私たちは羞恥と生気に満ち溢れた。後日。ついに可愛い後輩ができた。石岡須美と松尾夕紀は28歳で友人同士。須美たちはサービス業経験者だから仕事の飲み込みが早く、しかも彼氏と別れたばかり。生活も楽じゃない。私たちは科学忍者隊への入隊を勧めた。はじめは半信半疑だったが可愛い後輩たちは最低時給2500円を保証されて大喜び。しかもダブルワークが可能だし自由出勤。2人には参戦の義務がないが、須美たちは彼氏が欲しくなり7月11日に参戦予定。須美はガルバン。夕紀はヒメネスとやる。ガルバンたちは40歳で幼馴染。須美はカナミ。夕紀はキサに訓練されるがカナミたちは16歳で幼馴染。「須美は夏服が似合うわね」「嬉しいですわ加代さん」「夕紀は夏服が映えるわね」「伶香さんも似合いますわ」私たちは魔王さまから須美たちを育て上げる使命を与えられ、悦びに打ち震えた。本来ならば私たちが白鳥のジュンとして異世界へ参戦すべきなのに。だが彼らは私たちにそこまで求めなかった。「何だか複雑ね」「でも夕紀たちの方が断然強いからね」私たちは先生方のレッスンを受けた。前列に須美と夕紀。後列に私たち。だがガルシアたちは私たちを大切に扱ってくれた。[人を育てられる人材]は異世界で重宝されるが、日本はこうした人材ほど粗末に扱われ、正社員に登用されることもなかった。だから日本は凋落したのだ。

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