花苗と繭子の日常2
6月24日。私たちは登校したが、選択授業で郁美と一緒に。彼女は150センチと大柄だが色白でスタイルがいい。だがバストサイズが76と釣り合わず、郁美は胸にコンプレックスがあった。「お母さんは175センチでバストサイズが86あるの」「86!?」「凄いわね」だが美人母娘のサイズ感ならバロンと充分やれそう。だが私たちは市村母娘をムリに誘わない方針を堅持。郁美たちは幸せそうだし、こちらから下手に掻き回すのはよろしくない。話題はハンナに移った。事務員はなかなか変わってくれないが、最近は愛知県警のメルマガにご不満な様子。「何が問題なの?」「変質者に骨がないんですって」いやソレどんな変質者なのよ。「ハンナは名古屋の変質者をみんな宮崎勤だと思い込んでるわ」「いやソレいつの時代よ」「アレ昭和の終わりから平成初期でしょ?」「35年以上前じゃない」事務員は最近ようやく動画を見ることを覚えたが、なぜか怪談や心霊系の動画が多い。「まぁ夏だからね」「ハンナって霊感あるの?」「たぶんないわ」先週のうだる梅雨が落ち着き、私たちは安堵した。あまりにも展開が早すぎてまだ塩分チャージを取れていない。甘酒と梅干しも必須だが、梅干しは酢の物と相性が悪い。「アジの南蛮漬けと合わないよね」「梅干しと酢の物は合わせない方がいいわ」猛暑は慣れると楽かも。しんどい時とそうでない時のギャップが激しい。昼休みに私たちは話し合いを重ねた。「お母さんたちは決着点を晩秋から冬だとしてるよね」「まぁ妥当な見方じゃない?」私たちは9月をヤマだとみた。きっとこのあたりまでしのげれば私たちは逆転できるわ。早ければ10月あたりからジリジリ差が開いていく。だからやっぱり決着点は晩秋から冬になりそう。「でもさ、もしザックたちに来春まで粘られたら?」春服のピンクのミニは夏服と丈が同じ。「どうかな?果たしてマテウスたちがそこまで持つかしら?」長期戦に持ち込まれたら私たちは3月4と月に大苦戦を強いられそう。何しろミニの丈が急に10センチも短くされる。「その前にバロンが力尽きるよ」「だといいけどね」このあたりはやったことがないからわからないが、私たちに小難しいことなんてわかりはしない。結局お母さんたちを超える見通しなどできなかったし、勝てる見込みがなければそもそも参戦なんてしない。私たちはお母さんたちが合理的な見通しを立てたんだと信じて疑わなかった。2年前だって彼らに変なことされてないし、私たちは異世界に拘束されはしなかった。中には仮投降し交戦国に下った子も少なくないが、私たちはなぜかそうならなかった。だから今回も大丈夫。名古屋はうだる梅雨が落ち着き、向こうは猛暑の見込み。私たちに不利な情報は全く流れてこなかった。だから夏さえしのげればあとはどうにでも処理できる。私たちは4戦しかしないから必ず9月以降に巻き返す。尻上がりに調子を上げ、力関係が徐々に入れ替わる。やはり晩秋がカギになりそう。2月末までにリードを広げておけば来春までもつれても何とかなりそうね。帰宅した私たちは事務員に行き、白のセーラーと赤のミニに着替えた。私はビル。繭子はマックにカカシになりきるレッスンを受けた。まずは右足1本で立ち、背筋と両手を水平にピンと伸ばす。あとは左足をやじろべえみたいな感じに曲げ、股をグッと開くのだ。下着姿はモロ見えだが、先生方はそれに触れず私たちに甘かった。「いい感じだね花苗」「ウフフ」「繭子もいい感じだね」「エヘヘ」後半は左足。先生方も入れ替わり、私はマック。繭子はビルにレッスンを受けた。左右両足均等に鍛えないとマジカルキックが安定せずバロンにいとも簡単に捕まりやすくされちゃう。レッスンが終わるや私たちは[時の間]に行き、魔王さまの前で片ひざをついた。私がラモスさま。繭子がロペスさまに完全なる従属を高らかに誓い合った。私たちは彼らの前で片ひざをついたまま近況報告を始め、性の悩みや先生方への想いを赤裸々に吐露した。私たちは羞恥と生気に満ち溢れ、雑務に戻った。今夜は運送屋さんが来なかったが、念願のレッスンが受けられたので大満足。帰宅した私たちはヨガのエクササイズを始めた。チャンネル名は[ゲイシャガール]。オープニングテーマは[プロゴルファー猿]。2人の若者が黒のレオタード姿で黙々とヨガに励む。エンディングテーマは[ドカベン]。いきなりどよーんと暗い。彼らの後ろ姿がアップされ、背中に哀愁が漂う。動画の再生回数が200回。チャンネル登録者数が私たち込みで20人。出し抜けに心霊系の動画がアップされるあたりにこの人たちの苦悩が垣間見えた。私たちはザックたちを思い出しながら床に就いた。もちろんエッチな夢を期待したが、あんまり見られない。だが一月以内にバロンに再会できるし、焦ることはない。私たちはお母さんたち以上に甘あい展開を期待した。