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柚香と浅美の日常2

6月23日。花苗と繭子は登校した。私たちは部屋でリモートワークに励むもなかなか集中できなかった。淡い記憶は2年かけて実にほどよく熟成され、もはや聖化された感すらある。ハンナたちには[2年越しの恋のために立ち上がったけなげな美人母娘たち]と持ち上げられ、異世界での純聖騎士団は義軍とみなされた。なぜか私たちは[お姫さまたちの誘惑からバロンを守る清冽なる魔法戦士]とみなされたのだ。更には魔王さまからもイベント会場での仕事ぶりを褒められて私たちは舞い上がった。彼らは参戦者の増加よりもむしろそこに至るまでのプロセスを重視した。そのため早くも梅雨バテしていた私たちは参戦しないわけにはいかない。まだ3週間弱あるが、夏服にも袖を通した。いつしか[快楽に溺れた私たちの痴態]から[崇高な使命に燃える私たち]にすり替えられ、より高みへと祀り上げられた。だが私たちにそんな意識は微塵もなく、いつしか2年前に逆戻りしていた。でも辛い思い出は脇に押しやられ、甘あい記憶にすり替えられていったのだ。よくも悪くも記憶とはそんなものであり、私たちは夫以外に男を知らずに生きてきた。ましてや花苗たちはザックたちが初めての人であり、私たちには彼らしかあり得なかった。宮崎勤と出逢った女の子たちが彼のことを[すっごく透明感のある不思議な人]と成人後に語ったあの感覚に近い。たぶん同じではないだろうが、記憶とは基本的にウソつきであり当てにならない。私たちは2年前の空気感に支配されていたが、全く違和感を覚えなかった。母親組がそうなんだから娘たちはもっと楽観的。かと言って4戦全勝できるとは考えず[ひとつか2つ勝ち越し]と予想した。私たちはもうちょい悲観的だが[5分かひとつ勝ち越し]と予想した。つまりは誰も夏に負け越すなんて考えなかった。すでに梅雨バテしている私たちは42歳のアルノたちがマトモに夏を戦えるとは考えられなかったのだ。ましてやカノン公国も今年は猛暑だと聞いている。リアルと異世界は夏の天気がシンクロする年があったが、この予報も私たちを強気にさせた。私たちは尻上がりに調子を上げていくが、バロンは必ずバテてくる。9月あたりにその差がはっきり開くはず。だとすれば正味2ヶ月でこの戦いは終わるかもしれない。私たちの中でそうした楽観が芽生えたが、リアリストの浅美ですら[甘い見方]と一蹴しない。一昨年は7月が酷暑だったが、私たちは7月を1勝1分けで乗り切った。やってやれなくはない。「今年は読みにくい天気だけどね」「向こうが暑くなれば私たちに有利ね」名古屋ほどではないが、カノン公国の6月は例年よりも暑いという。前回の花苗たちは12歳くらいの働きをしてくれた。だから今回は14歳くらいの働きが期待できるわ。サイズアップした娘たちはすっごく頼もしい。「早くザックたちに見せたいわね」「そうね。マテウスたち繭子たちに悩殺されちゃうかも」私たちは前回と違う展開を夢見たし、近年はバロンを尻に敷く魔法戦士が増えたというが、それすら決して不可能じゃない。事務員によれば[もともと素質のある美人母娘がジャジャ馬母娘として育て上げられる]事例が増えているそうだ。「じゃあ私たちそうなるのかな?」「かもしれないわね」ただしその場合はかかあ天下にはならず、お互いがその都度主導権を譲り合う流れになっていく。「じゃあそれ以外は?」「従順な妻型ね」実はこちらも彼らが常に主導権を握りはせず、必ず妻たちに主導権を譲り渡すシーンがある程度確保された。そうしないとお互いがしんどいからだ。そのため必ず妻たちに主導権を譲り渡すことで絶妙なバランスが保たれる。「どっちに転んでも不幸にされはしないわ」「そうね」もちろん実際にはさまざまな夫婦のあるべき形があり、この2つに必ずしも収れんされはしなかった。だが私たちは他の選択肢を全く考慮しなかったし、基本的には私たち有利で戦いが終わると信じ込んだ。その時期は晩秋がふさわしく、多少長引いても4ヶ月半余りだからいけるはず。「秋は私たちのコスチュームの露出度が下がるからね」「虫さんも減るし、気温も徐々に下がってくるわ」もちろん冬に入ってもいいし、冬服は紺のセーラーと白のミニ。丈は夏服よりも10センチ長めだから秋服よりも5センチ伸びる。「更にやりやすくなるわね」「この時期はやりやすそう」となればもはや私たちの楽観は止まらなかった。春になれば白のセーラーとピンクのミニ。丈は夏服と同じにされるが、参戦して7ヶ月半以上が経過している。「さすがにこの頃にはもう決着ついてるよね?」「たぶんね」戦いは終わり、私たちは家庭におさまる。歪な関係にはなりそうもなく、いい感じで終わりそう。私たちはカカシになりきる訓練を始めたが、なぜかミニでないと気分が出ない。股をグッと開き、下着姿がモロ見えしないとなぜか気がおさまらない。

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