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第5話 ドS会長とデート!?~どう責任取るんだ、あぁ!?~

 埼玉の特徴に気温がある。

 熊谷市は日本で一番熱いと言われており、最高では40度を超える暑さになる。

 そして距離が離れてるとはいえこのベルーナドームのある所沢市も灼熱なのだ。

 先日の戦利品であるプロ野球観戦チケットをもらい僕はこの球場前で月島さんと待ち合わせしているのだがなかなか姿を表さない。

 下手にこっちからメッセージや電話をすればイラつかせる事になるし彼女が一番楽しみにしてる訳で来ないと言うことは無い、まあいつか来るだろう位に考えていたら改札から"重装備"の彼女に声を掛けられた。

「よう、待たせたな!」

 キャップ、自分の名前が入っているユニフォーム、トートバッグも西武ライオンズのグッズであるのだが、バッグの中身も応援グッズで詰まっているのが見えて彼女がいかに"西武愛"があるのかがひと目でわかった。

 ひと目でわかったのはそれだけでは無い、機嫌が良いのがわかる。

 開場前のスタジアムの周りを歩いて飲食店を見ている時も新作グッズを見ている時、僕に話しかける時も笑顔でいつもこうなら平和なのに、やっぱり美人だなあと思っていると開場のアナウンスが鳴る。


 バックネット裏に着いた。

 僕達がもらった席は通路側に面した方とその隣で、どうせ何か買ってこいとか言われるだろうと通路に面している席に僕は座った。

 横にいる彼女へ先程開場前に買った飲食物を渡すと「気が利くな!」と満面の笑みで感謝を述べられた。

 そのお礼なのかわからないが、持ってきていたバッグから予備のレプリカユニフォームを取り出し僕へ着るよう言われる。

 そしてもう1つ、昔ある選手に偶然会いサインを貰ったと言う青いグローブを見せてくれた。

 このグローブは大切にしており観戦時には必ず持参するそうで、劣化防止の為にあれこれして誰にも触らせないようにしているらしい。

 事実新品同様に綺麗で「触ったらどうなるかわかってるよな?」と脅しをかけるほど大事な物らしく、彼女の夢はファールボールでもいいからこのグローブで試合観戦中飛んでくるボールをキャッチすることらしいが未だその夢は叶っていないそうだ。

 そういえば水谷さんはどこだろう、月島さんに彼女の事を伝えると少し待ってろと言われ何やら犬笛のような物を取り出すとそれを吹いた。

 笛の音は聞こえなかったが何かがこちらに近付いてくるのがわかる……そしてこちらまで来るとそれはザッと急ブレーキをかけ止まった……水谷さんだ。

 あの音聞こえてたとかここから3塁側って結構離れてるなとか思うところはたくさんあるのだが、彼女の会長への愛と言えば納得できた。

 水谷さんは前話していた通りお兄さんと二人で来ているようだが、お兄さんは少しシャイらしくこちらへ来てくれなかった。

 しばらくして試合が始まりそうになるので水谷さんは軽く挨拶すると席に戻っていく。


 試合が始まると月島さんは真剣に応援しており、選手の応援歌もスラスラ唄っている。

 綺麗な顔をしているのに声も綺麗でそんな夢中になっている姿を見ると今日来てよかったと思え僕も見よう見まねで応援した。

 試合はエース同士の対決で一点を争う展開、気が付けば互いに点数が入らないまま九回裏へ。

 先頭打者が塁に出ると次の打者が送りバントで二塁へ、後続はゴロでアウトになったがツーアウト三塁の大チャンス。

 横で応援するのも忘れ月島さんは両手を合わせ祈っている、是非とも勝ってほしい……その瞬間であった。

 打者が打ったボールがバックネットを超えこちらへ飛んでくる、周りのお客さんも少しパニックになっており月島さんも例外ではなく珍しくオロオロしていた。

 僕も焦っていたが、ふと上を見ると打球が月島さんの方へ飛んできている、このままでは彼女にぶつかる!

 考えるより先に身体が動いてしまう、彼女が持ってきていたグローブを左手につけてボールが当たる寸前それをキャッチした。

 月島さんは身を屈めていたが、キャッチしたボールを見せて大丈夫だよと伝えると俯き気味で表情は見えないが拳をにぎって震わせており一目で怒っているのがわかる。

 その後胸ぐらを捕まれ前後に揺らされ、

「私の長年の夢がー!どうしてくれんだこんなチャンス滅多にねーんだぞ!どう責任取るんだ、あぁ!?

 あと何勝手に私のグローブ使ってんだごるぁ!!」

 と救ってあげたのに文句を言われる。

 揺らされている間に球場から大歓声が上がる、どうやらヒットを打ちサヨナラ勝ちしたそうでそれを胸ぐらを掴まれながら報告するとグラウンドの方を見て立ち上がり喜んでいる。

 そしてまた胸ぐらを掴まれ「ちゃんと見てなきゃダメだろスッポン!」と笑顔のまま揺らしてきた。


 試合は見れて楽しかったが最後の事件で全て持っていかれたような気がしたし、帰りの電車もすごく混んで大変だった。

 ファールボールは貰えたが、いつか自分で手にするからと月島さんは僕に譲ってくれた。

 自宅の最寄り駅から降りて帰り道が途中まで一緒なので月島さんと帰っていると前にいる彼女が楽しかったな!と声を掛けてくる。

 その楽しそうな感じを見ていると色々あったが彼女がケガしなかったのは良かったのかなと思えた。

 その後不意に立ち止まり小声で「あと……」と発言すると、こちらを振り返り笑顔で言う。

「守ってくれてありがと。

 あん時はイラッときて当たっちまったが……ごめんな。

 次見に行く時は私がキャッチしてお前を守ってやるよ、約束な!」

 日も沈み街灯に照らされたその姿を見て可愛いと言う感想以外出てこなかった。

 また僕と一緒に行ってくれるんだ……

 わかったと返事すると球場で色々食べていたのに小腹が空いたからどっか食いに行こうぜと半ば強制的に腕を掴まれ引っ張られる。


 こうして僕達は初デート?を終えた……

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